第7札 未だだ!
神威覇征抖と宙宇基陣のカードゲームバトルは
第七ターン迄が過ぎた。
現在の状態は。
神威の召喚モンスターゼノンのみが
土2火2風4水4とダメージを受けていた。
其れでも倒れていない、とも言えるが。
一方的であった。
数字だけを見れば。
しかし陣は
第六、第七ターンを越えて
精神を消耗している様であった。
陣の召喚モンスター
鉄拳爬虫人類キーパ 属性:土4 技:正拳逆突き
命中 火4≧水3 威力 土5/風3
遠尾爬虫人類ティラン 属性:火4 技:テイルウィップ
命中 風3≧水4 威力 火5/土3
キーパの戦術カード
‐ 属性:土1 技:三戦
命中 火0≧水0 威力 土6/風0
ティランの戦術カード
闇に眼光るヤマネコ 属性:火2 技:ダークスラッシュ
命中 風2≧水2 威力 火3/土2
神威の召喚モンスター
全知全能の神ゼノン 属性:水7 技:アブソリュートスマッシュ
命中 火6≧風6 威力 水6/土6
ゼノンの戦術カード
‐ 属性:水1 技:無我の境地
命中 風0≧土0 威力 火0/水6
「「第八ターンドロウ!」」
二人は手札から行動カードを
先ずは裏返しで場に出す。
場にカードを出し終わってから。
「何故基本ルールでは
山札69枚、手札9枚だか分かるかw?」
神威がニヤリと笑みつつ問うてくる。
神威は兎角偉そうだが
カードを出し終えてからなのは
ゲームに影響しない様にという配慮である。
実は気遣いのヒトなのか。
其れとも
気遣い無しで唯偉そうなのは
何時か淘汰されるであろう
唯の馬鹿者なのか。
対して陣は。
「モンスターを三体召喚可能で。
三体が充分戦える枚数……だろ?」
難無く且つ素っ気なく答える。
神威は面白そうで。
「くっくっくw!
やはりキサマは希少な存在だw!
即答出来る奴等中々居ないのだぞw?」
「其うかい」
やはり陣はつれない返事だが。
カードが出揃ったので表返しながら。
神威は言う。
「キサマは召喚モンスターと戦術カードのみで
大体オレの手を読んだなw?
だがw!
相手の手を読むのは
キサマの専売特許ではないw!」
と、表返した神威の行動カードは。
ゼノンの行動カード
エアドラゴン 属性:風5 技:トルネイドブラスト
命中 風6>火3 威力 土5/水4
カードを表返しつつ神威は続ける。
「キサマは成るべく満遍なく
山札を組んでいるよなw?
だから最初は
ゼノンが動かない内にと
召喚モンスターとは違う属性のカードを消費したw!
割合的には
山札に残るのが
同じ属性のカードだからなw!
しかしw!
ゼノンが動き出してから
同じ属性を多用し
二重行動迄やり出したw!
焦ったからだなw?」
「手を読むなんて程でもない。
普通だろ其んなの」
陣は。
素っ気ないというよりは
最早疲労して
力無いという方が正確か。
対して神威は
益々威丈高に咆える。
「普通ではないから言っているのだw!
キサマ異常さを自覚するが良いw!」
しかし陣はやはり気が抜けた様に。
「失礼だなおい」
と行動カードを表返す。
陣は。
キーパのカードは縦表示、
ティランのカードは横表示にしていた。
詰まり。
縦表示は通常行動、
横表示は戦術変更で。
通常行動は縦表示のカードを其のまま行動に使い。
戦術変更は今戦術カードだったものを
行動カードとして使う。
キーパの行動カード
鉄甲虫カタゾウムシ 属性:土1 技:強化外骨格
命中 火1≧水1 威力 風1/土3
ティランの変更戦術カード
‐ 属性:火1 技:燃え上がる熱意
命中 風0≧水0 威力 火6/土0
「カタゾウムシって、
沖縄に居る硬い虫だよな?」
陣がカードの生き物に付いて訊くと。
「何故キサマは其んな事を知っているのだw!」
と神威は応える。
此れは実は言外に肯定しているのだが。
分かってくれるヒトは其うは居ないであろう。
「兎に角。
キーパが先攻、
ティランが次に攻撃だな」
其の判定は。
キーパの攻撃 属性:土
命中 火8≧水8 威力 風10/土19
ティランの攻撃 属性:火
風11≧水10 威力 火17/土10
「両方成功!
「ダークスラッシュ」がやっと当たったよ!
ネコ科猛獣の狩りって
成功率三割だっけ?
かなり失敗するって言うものな!
って!
「強化外骨格」って技かよ?(笑)」
陣もつい笑ってしまい。
「ふっw!
センス有るだろうw?」
神威もニヤリと笑む。
「カタゾウムシは細菌と共生する事で
硬さを手に入れるのだw!
其れ処か細菌が生きていけない温度だと
幼虫も生きていけないのだなw!」
「おいおい!(笑)
蘊蓄合戦で張り合う気かよ!(笑)」
神威が語り出したのには
陣も呆れてしまう。
其れは其うと
攻撃は成功した、のだが。
「キーパの攻撃はダメージ1未満なので
ターン内のみ有効!
ターン後は残りません!
ティランの攻撃はターン後も
火ダメージ1が残留します!」
と、主審たる老執事が告げる通りだ。
「質問なんだけどさ」
陣は物怖じせずに訊く。
「例えば0.5のダメージの攻撃で……
今回はちょっぴり多いけどな!(笑)
此の後ターン内に
同じ属性で1.5以上のダメージを与えたら
どう成るんだ?」
此れには。
「其うしたら。
1.5ダメージのカードと0.5ダメージのカードを合わせて
二枚残留ダメージに出来るともw?」
神威が鷹揚に答える。
残留ダメージはカード一枚に付き
ダメージ1だ。
其して混乱するかも知れないが
土ダメージは相手の火能力値を減らし
火ダメージは風能力値を減らし
風ダメージは土能力値を減らし
水ダメージは水能力値を減らす。
いや。
ダメージを受けても
使える技は変わらないので
能力値と言うより耐久値と言った方が良いか。
「其れから」
陣は未だ質問を続ける。
「戦術変更したモンスターは
二重行動出来るのか?」
「ああw!
ウェイトの計算が合うならなw?」
やはり神威が
余裕を以て答える。
二重行動とは。
ターン開始時に
モンスターカードと行動カードのウェイトを合計し、
少なかった者が多かった者との差分以下だけ
ターン内に行動カードを出せる、というルールだ。
「其っかー……!」
陣は椅子に深く腰掛け
背もたれに寄り掛かる。
ふー……っ
と、深く息を吐き。
「良し!
此処だな!」
陣の目がギラリと光る!
「キーパ! ティラン!
共に二重行動!!」
と場に出すカードは。
共に縦表示!
キーパの二重行動カード
樹上のテン 属性:土3 技:うねり寄る牙
命中 風3≧火2 威力 土4/水3
ティランの二重行動カード
鎧獣アルマージ 属性:土2 技:肉弾攻撃
命中 火2≧風1 威力 土4/水2
判定は。
キーパの攻撃 属性:土
命中 風12≧火8 威力 土20/水10
ティランの攻撃 属性:土
命中 火16≧風10 威力 土12/水10
「キーパだったら当たらないと
もう実証済みだが!
ティランの肉弾攻撃! 成功だ!」
陣も此処ばかりは会心の笑みを浮かべる。
「1より少々上の土ダメージ!
残留確定です!」
老執事は補足する。
「其して!
キーパの攻撃!
技名は「うねり寄る牙」だが!
キーパだったら
中国武術「象形拳」の「蛇拳」みたいな攻撃!
って所か?(笑)
テンは体が細長くて四肢が短いものな?(笑)」
陣は興が乗ってきた様だ。
「キーパの攻撃も成功だ!」
ゼノンの瞬間土ダメージ
5.7263157842105
此れは・から・迄の間、詰まり2から5迄を
以降繰り返しますよという意味の
循環小数だが。
瞬間ダメージとは詰まり
ターン内のダメージという事。
此れがターン終了するとどう成るか。
問題は。
1に満たなかったカタゾウムシのカードなのだが。
「くはっw!」
此の結果を見て神威は
息を漏らす様に笑う。
「中々の攻撃だったなw!
だが!
届かなかったなw!」
しかし陣は狼狽えはせず。
「所でカード一枚で2ダメージに成った攻撃だけどさ?
まさか1.5ダメージより扱いが悪く成ったりはしないよな?」
「ああw!
其れでカタゾウムシのカードも
残留ダメージに昇格だともw?」
流石に神威も冷静ではなかった。
取り繕いはしたが。
ともあれ
残留ダメージは土5だと確定した。
「だが此れで
次はゼノンの攻撃……w!」
と、神威が言い掛けると。
「いや」
陣は少々行儀悪くも
神威の言を遮り。
ばしっ
手札最後の一枚を
ゲーム卓に叩き付ける。
「未だだ!」
「……
……なっ……
何だとっ?!」
流石に
神威も唖然としてしまう。
「ウェイトが少ない者は
差分以下の行動カードを出せるんだよな?
だったら!
未だキーパは
ウェイト4以下のカードを出せる!
……間違っているか?」
陣は挑む様に
神威を見詰める!
神威は。
「くっ……はっ……!
ぐっ……!
……
間違ってはいないっ!!」
呻く様に言う。
陣は。
不敵に笑い。
「ふっ!(笑)
正直だなあおい!(笑)」
「此のオレが下らない嘘等吐くかっっ!!」
神威は此の期に及んでも
覇気を放つ!
陣は愈々以て
行動カードを開示する!
「キーパの!
三重行動!!
行くぞっ!!」
其のカードは!
キーパの三重行動カード
鉄拳爬虫人類キーパ 属性:土4 技:正拳逆突き
命中 火4≧水3 威力 土5/風3
判定はっ!!