第2札 ルール設定
宙宇基陣は神威覇征抖の車に乗り。
何処かの邸宅にやって来た。
神威の車、とは言っても。
神威自身は運転出来そうな年齢ではない。
SPとでもいう様な
黒服の男が運転している。
車のドアは他の黒服の男が開け。
玄関迄の通りには
両脇にメイド達が列を成し。
皆頭を下げている。
「……
本気で此んな所在るんだな?」
覚悟を決めて来た陣とて
何とも言い様が無い、という風情だ。
「気にするな。
其んな事よりも、だ」
神威は老執事に目を向け。
「客間を用意しろ」
と命じる。
其して客間。
やはり神威は堂々と上座?に座り。
陣は対面だ。
神威は厳かに口を開く。
「カードは取り敢えずくれてやるw!
デッキ三つ分は選んでおけw!
トレーディングカードと言えば
奪い合いも有るからなw!」
神威が言うと
黒服の男が陣の横でトランクケースを開く。
其して神威は続ける。
「説明はしてやるが。
何度も同じ事を言わせるなよw?」
「ああ。
此処からもう試験は始まっているんだろう?」
陣は怯まない。
明らかに神威と立場は違えども。
「デッキってのは……
山札はプレイヤーが其れぞれ持つって事、だよな?
奪い合いってのも其ういう事だろう?」
「其うだw!
洞察力は有るのだなw!」
陣の問い、というか確認に
神威は満足そうだ。
「先ず。
デッキは一つ六十九枚だw!
標準ルールなら、だなw!」
「……ふうん?」
「此のカードゲームは
モンスターを召喚して戦わせる、
という設定だw!」
「ああ……
召喚魔法……とかいう
創作物有るよな」
「ああw
召喚モンスターは最初に出して決定、
変えられないという仕組だw!」
「ふうん?
其れ、珍しくないか?」
「ああw!
オレが作ったからなw!」
「……
は?」
神威の言葉に
流石に陣も呆けてしまった。
が。
直ぐに持ち直し。
「創世の神とやらは
其ういう事か……大仰だな」
「ふっw!
上流階級じゃあ
大仰も茶番劇もせねば成らぬ事だw!」
やはり神威は堂々と言ってのける。
「上流って……!
人は皆平等じゃあないのか?」
陣はつい突っ込むが。
「本気で其う思っているのかw?」
「中身の無い建前だなw!(失笑)」
「だろうw?」
切り返されて撃沈であった。
神威は説明を続ける。
「数字は記号で表す。
線分の数が即ち数量だ」
世間ではどれだけ通じるであろうか。
学校の授業で聞ける事だが。
「線分」とは、真っ直ぐで
両端が決まった線である。
一般では
真っ直ぐならば「直線」と言ってしまうであろうが。
「直線」は両端に限りが無い線を言う。
「……って事は。
○はゼロ、何だか斜めな十字は2……
なんだな?」
陣はカードを確かめつつ問う。 と。
「其うだw!
良い調子だぞw?」
神威は本当に面白そうに言う。
「カードは。
縦表示と横表示が有るw!
横表示が召喚モンスター、戦術を表し、
縦表示が行動を表すw!」
「戦術?」
「其うw!
モンスターを動かすには
方針を決めて、実際に動かす。
と、
二枚のカードで表す訳だw!」
「ふむ?」
陣は軽く相槌を打つだけだが。
神威は其れで通じたとばかりに
どんどん話を続ける。
「縦表示ならば左上と成る図形、
其れが属性とウエイトを表すw!」
「ウエイト?」
「召喚魔法という設定だからな。
重い程使い辛いという訳だw!」
「成る程。
数字は大きければ良いって訳じゃあないんだな」
「属性は。
アリストテレスが言い出した「四元素」だなw!」
「言い出したって……!(笑)
アレか? ファンタジーなんかで定番の!」
「土、火、風、水だな。
カードの裏に暗示する図形が有るがw!
土、火、風が「三竦み」の関係性で
水は水同士で対抗する」
「……うん」
「縦表示ならば右下に成る四つ固まった図形。
其れがカードの効力だな!
横表示ならばモンスターの能力値。 其して。
初期体力を表す!」
「ん?
体力が四つなのか?」
「其うだw!
まあ四つ共が体力と言っては語弊が有るかw!
土は持久力、火は瞬発力。
風は気力、水は精神力と言った方が良いなw!
何れにしろ
戦い続けられる力、だなw!」
此処で初めて
陣は疑問を挟む。
「初めから○な所が有るヤツは……」
「召喚モンスターとしては
使えないカードという事だw!」
神威は即座、
というより食い気味に答えてしまうが!
「オレが作ったゲームには
デッキに入れるカードの枚数制限は無い!!
が!!
良く考えないと自分が困る事に成る!
という訳だw!」
「あー!
枚数制限はプレイヤー任せだものな!(笑)
困るってのは……
手札にモンスターとして使えるカードが無かったら
最初から負けに成っちゃうのか?(笑)」
「其ういう事だw!
其して!
戦術カードと行動カードだがw!
ウエイトの合計値が
モンスターの能力値以下迄使える!」
「戦術カードと行動カードの属性が
違ったらどうするんだ?」
神威はニヤッと笑う。
陣の質問が的確だと思った様だ。
「低い方の能力値以下ならば使えるw!
使えない場合は行動が無しだが
回避と防御だけは出来るw!」
「……ふむ!」
「其して行動の成功判定と威力判定だがw!
現在の体力、戦術カード、
自分と相手の行動カードの合計値を!
自分の行動カードの式に従って判定するw!」
「自分と相手の?」
「うむw!
カウンターを表す為だw!」
「成る程な!
相手の力も利用して
自分を有利にも出来る訳だ?」
陣は僅かに言葉に含みを持たせ。
神威はニヤリと笑う。
嗅ぎ取った、とばかりに。
「其うともw!
単純に数字の大きさを比べるだけのバトルは
薄っぺらい!! と、思わないかw?」
「分かり易い、という利点も有るんじゃあないか?」
陣は。
本気で納得はしていない、という表情だが。
なので神威は二ヤアっと嗤い。
「本当に其うかw?
巷のカードゲームは
詳しくない者が見ていて理解出来るのかw?」
結局は陣も。
「……訳が分からないな!」
と認めざるを得ない。
「其うともw!
カード毎の特殊効果は文章で書いてあるしなw!
カード以外の小道具も使う!
だから!!
オレは
カードの数値だけで完結するゲームを作ったのだっ!!」
陣は苦笑いするしかない。
「だなあw?
トランプは色々なルールで使えるけど
大体のカードゲームは他には使い様が無いしなw!
やっぱりシンプルなのは強みだよなあw!」
神威はニヤニヤしつつ続ける。
「さて此処からが重要だぞw?
1ターンは
プレイヤーが行動カードを出し合って始める訳だがw!
モンスターのウエイトと行動カードのウエイトの
合計が少ない方が先に行動する!
のは勿論だが!!
合計値が少ない方が!
手札に其の差! 以下!! のカードが有れば!!
ターン内にもう一行動出来る!!
というルールが有る!!」
「……やっぱり
数字が大きければ良いって訳じゃあないんだな」
改めて陣は確認する。
「まあw!
弱いモンスターを使えば山札が減るのが早まり、
山札が無くなれば負け、なのだがなw!
其れから!
戦術カードを変更するには、だがw!
行動カードを横表示で出せば良いw!」
「急に方針を変えても
一寸前の影響が残るって感じか」
「其うだw!
ああ、後は。
ゲーム開始時には
山札から手札を九枚引く!
……説明は其れ位かw?」
神威はニヤニヤと締め括る。
が。
陣が続ける。
「いや。
手札が随分多くないか?」
神威は続けられて寧ろ面白そうだ。
「ああw!
モンスターカード、戦術カードを合わせて
九枚だからなw!」
其う答えられて陣は。
「じゃあ。
攻撃目標は選べるのか?」
と質問し。
神威は更にニヤニヤして。
「いやw?
回避が少なかった方、
其して並び順が左の方が優先だなw!」
と返す。
此処だけ聞いた者には
会話がトんだと感じるであろうが。
二人は「分かっている!」という風であった。
其して神威は告げる。
「部屋は用意してやろうw!
勝負は明日だw!
じっくり!
休むが良いw!」
陣は其う言われても
闘志に燃える目をしていた。