第1札 開幕!
「本当に済まねえええええ!!」
見るからにみすぼらしい男が道端で土下座している。
人は見掛けで判断するものではない、とは言うが。
其の男はみすぼらしい上に
耳に赤鉛筆を挟んでいる。
公営ギャンブルの場所で見られる光景である。
げしっ
少年が男を蹴倒す。
面影から親子である事が察せられるが忌々しそうだ。
保護者が必要そうな年頃で親を蹴倒す等相当な事が窺える。
「ほうw? 貴様は中々の様だな?」
親を蹴倒した少年と同年代な様でいて
高貴そうな少年が面白がっている。
「貴様、名は何という?」
「名乗る時は自分から! だろう?」
高貴な少年が問うのにも怯まない
みすぼらしい男の、子ども。
やはりみすぼらしい少年なのだが。
姿は貧乏たらしくも
瞳は理知と情熱で光っている。
「くはははw!
オレは神威覇征抖だ! 覚えておけ!」
高貴な少年は偉そうなものの鷹揚に応える。
貧乏たらしい少年は。
「俺は宙宇基陣!!
……カムイって……
「神」の「威」光とか書いたりしないだろうな?」
名乗りつつ訝し気に問う。
神威は何処迄も傲慢に。
「其うだとも!!
オレは或る意味
創世の神を名乗っても間違いではないのだw!」
「……はあ?」
陣は首を捻る。
流石に神を名乗る少年等
現実的な話とは思えまい。
だが神威は構わず顎を決る。
すると。
側に控えていた黒服の男が
トランクケースを開く。 中身は。
「……カードゲーム?」
と、陣は見て取った。
カードの束がびっしり詰まっていたのだ。
一枚の大きさはトランプ位。
因みに「トランプ」というのは正しい名称ではなく
札、の複数形、「カーズ」なのだが。
「トランプ」は正しくは「切り札」という意味だ。
神威は鷹揚に頷く。
「其うとも。 知っているか?
A米利件国では莫大な金が動く大会が有る!
其処の下らない男程度の借金等
問題に成らない賞金がな!」
神威は言って陣の親を目で示す。
「……俺に借金をどうにかしろと……?」
陣は探る様に神威を見る。
だが神威は面白そうに。
「いやw? バカな男と等縁を切るのが利口だぞ?」
「未成年だとクソ親でも縁を切れねえんだよ!」
陣は心底鬱陶しそうに言う!
が、神威は。
「勘違いするな?
貧乏人にはバカな裁判官しか関われないが
金が有れば有能な弁護士に相談してどうとでも出来るぞ?」
「……え?」
陣は呆ける。
「彼奴は親の役割を果たしていない。
縁等切って当然だろうw?
けど只の子どもは無力だから離れられないのだ!」
其の神威の言葉に。
陣は続ける。
「俺がカードゲームの大会で勝てれば?
未成年だけど自立出来る、というのか?!」
神威は満足そうに。
「其ういう事だw」
「待って下せえええええ!」
陣の親が絶叫した。
「あっしはどう成るんで?!」
神威も陣の親には侮蔑の眼差しを向け。
「ゴミ溜めに放り込んでおけ」
言うと黒服の男達が二人、
陣の親の其れぞれ片腕を押さえ。
直ぐ後ろの一軒家の。
玄関を今一人の黒服の男が開け。
陣の親を押さえた二人が連行する。
くたびれた家屋ではあったが。
表札には「宙宇基」とある。
「ほう? 此れを「ゆうき」と読むのか」
「……ああ」
神威は偉そうではあるが
陣の事は意識はしている様だ。
程無く宙宇基家の前に黒塗りの自動車が到着し。
「乗れ」
神威が言う。
すると黒服の一人が助手席の扉を開ける。
「……」
陣は一瞬躊躇するものの。
助手席に乗り込む。
神威は後部座席で両脇を黒服で固め。
車は発進する。
車が走ってから。
神威は口を開く。
「ふっw!
死をも覚悟した心境か?
見知らぬ者の車に乗る等
褒められた事ではないがなw!」
しかし陣は開き直ったかの様で。
「どうせ彼のままで居たって
先は無かったろう?」
「まあなw!」
神威も痛快そうだ。
「けど具体的にどうすりゃ良いんだ?」
「段取りは調えてやろうw!
貴様に見込みが有れば、だけどなw?」
陣の問いに神威は答え。
「……
俺が神威とカードゲームをして勝て!
って事か?」
と陣は結論するが。
「はははははw! 自惚れるな!!
負けて等やる気は無いし
其んな無理を言う気も無い!!
有能な所を見せろと言うのだ!!」
神威は目が笑っていなかった。
陣も真剣に返事をする。
「俺は試されているんだよな?
ルールを覚えて
ゲーム中に何か目立てれば及第点……
なのか?」
「当然だろうw!
並の相手には勝てなければ
大会等出られたものではないw!」
其んな事を神威は言うものの。
「此んな事をして神威に何のメリットが有るんだ?」
陣は疑問を呈する。
すると。
神威は傲慢に応える。
「カードゲームは所詮娯楽だろうw?
売るにはスター選手が要るのさw!」
神威は何処迄も傲岸不遜であった。