コントロールと地球再生
ジー、ピッ、ピッピッ、ジーッ。
もう5時?
春は薄目を開けながらスマホを探す。
まだ2時過ぎじゃん!!
スマホを乱暴に布団に置くと、また目を閉じる。
アラームじゃなかったら、何の音だったんだろう。
―脳内挿入完了。これより、A―1コントロール開始。
ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
春は、ゆっくりと瞼を開けると上半身をまっすぐ起こした。そのままベッドを出るとぎこちない歩き方でリビングのドアを開けた。そのまま、まっすぐベランダの前まで来るとカーテンを触り、勢いよく開けた。ベランダに出ると強風で春の髪は乱れ、春も少しよろめくが、それの方向に身体を向ける。
まるで「さあ、どうぞ。私の身体をお使いください。」
と言っているように。春は両手を天に捧げた。
「お、お姉ちゃん?」
「お姉ちゃん!」「お姉ちゃーーーん!!!」
夏は叫ぶ事しか出来なかった。窓の向こうに光る巨大な物体に向かって、姉が抗う事なく吸い込まれていく光景を。
夏は恐怖で震えながら、声が出なくなっても尚、姉を呼び続けていた。
ピーーーーーーーーーーーーーーーー。ジー、ピッ、ピッ
―A―3コントロール解除。
ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
頭が重い。あと身体中が痛い!ヒリヒリする!18年間生きてきて1番痛い!!
痛みと恐怖から思考が停止していた。怖くて目も開けられない。
「ハルちゃん。」「大丈夫だよ。僕達もハルちゃんと同じだから。分かってるんだよね?そう。その時が来たんだ、それだけなんだよ。」
春は優しく置かれた彼の手を痛みに耐えながら、握り返した。
小さい頃から何度も見た世界。最初は夢か現実か分からなかった。でも、ある時気づいた。それは私の脳に直接入って来るメッセージだった。
―近い未来、地球は青から黒に変わる。少しづつ、異常が出てくる。人々がその危険に気づいた時にはもう、遅すぎる。我々が見つけたDNAを持つ君達が集められた時。それが地球を再生出来る最後のチャンスだ。
私は受け入れた。メッセージを。
ゆっくりと瞼を開けると、メッセージで見たままの彼らの姿があった。
「夏、怖い思いさせてごめんね。お姉ちゃん大丈夫だから。きっと戻って来るから。お母さんの事、頼んだよ…」
もう一度、瞼を閉じて笑顔の二人を思い出す。
絶対忘れないように。