Echo
少しくらいお話です。
すっきり緑茶でも飲んで、軽く読んでいただけますように。
ショッピングモールを一緒に出ても、何も話すことが出来なかった。
優太にAspが死んだ姿を見せない様に、黙は優太の後ろにピッタリ付いている。
豪も、その一歩後ろを付いてくる。
モールの柱や壁に張り付いた氷は溶け始めて、水滴が水たまりを作っていた。
優太の心もモールの中と同じように冷たく湿っていた。
生安部は皆で教室に集まって、解散するまでが部活動となっている。
教室に辿り着いて、黙が優太を椅子に座らせようとするのを拒否した。
それから教室に入ってきたばかりの豪の眼前まで行くと、
豪のシャツを両手で掴み握った。
「ホケツくん、」
「なんで、殺したんですか」
シャツを握る手は震えていた。
「殺すしか、なかった」
「なんで、」
「Aspを収容できる施設はないから」
黙は静かに背後まで来ると、優太の両手を、大きな掌で包み込んだ。
「優太君、僕達は人を殺す力を持ってる……」
「でも、話せばあの人だって」
「仲間にでもなってくれると思ったか?」
豪は優太に冷たい声で返す。
「でも、殺す必要はないです」
「そりゃ、気絶させることも可能だろうさ」
豪は、優太の両手首を掴む。
「でも、気絶させても、」
豪が何かを言おうとしたその時、教室の扉が開く。
「ゴー、モックン、ユータくん、無事だったかい」
「鳴神先生……」
優太は掴んでいた豪のシャツを離す。
「話は聞いたよ、既にニュースにもなってる」
「……あの人はどうなったんですか?」
優太は震える声で問う。
鳴神は優太の近くまで来ると、屈んで答える。
「既に対処はさせてもらったよ」
「対処?」
優太が恐る恐る聞くと、鳴神は淡々と答え続ける。
「Aspの死体だよ、あのままだともちろん君達に容疑が掛かるだろう」
死体、という単語に、黙は慌てて鳴神を諫めようとするが、
鳴神は二コリ、と笑って続けていく。
「ボクはG.S.と繋がってるから、そちらに処理は任せておいたよ」
「ガス?」
「反連邦組織のこと、まだ小さな組織だけどね」
ニュースで聞かないかい?
優太は、鳴神の言葉に頷く。
豪と黙が困った顔をしているのに気づいて、
鳴神は先に帰ることを促した。
「なんだよ、鳴神のヤツ」
「優太君は辛いのを忘れられる……」
「それでいろんな情報教えていってるわけ?」
「それもある……」
他に理由でもあんの?と豪が黙に聞くと、黙はフフっと笑った。
「……多分、昔の豪にそっくりなんじゃないかな」
「えーそうか?」
黙は不満そうな豪の声に、またフフっと笑った。
たまにゲーム実況を聞きながら書いています。
暗い描写を書いている途中、面白い事を言っていると脳内がパニックを起こします。
次回投稿予定日:6/30 朝7時