Echo
大学生の頃に考えていたキャラたちをいっぱい出せてうれしいです。
もっと沢山キャラを出していきます、よろしくお願いします。
コウが目を覚ました時には、既に病院へと搬送された後だった。
個室の病室にはコウと優太の二人だけが居り、広い空間が寂しく感じられた。
「ユータ……」
「まだ顔色良くないよ、安静にね」
コウは握られていた手をしっかりと握り返す。
お互い無事でよかった、と内心ほっとしていた。
「腕は?」
「えっ、ああ、全然大丈夫だったよ」
痛かったけどね、と優太は笑う。
優太の着ている長袖には、いくつも擦り傷が出来てしまっていた。
左の腕辺りは傷があったことを表すように黒く染まっている。
コウはもう一度手をしっかりと握る。
優太は静かに握り返した。
ガララ、と扉が開く。
二人が振り返ると、白衣を着た眼鏡の男が入室してきた。
「起きたんだね、良かったよ」
医師に見える男はコウの傍まで近づくと、ずり落ちた眼鏡を指で戻した。
「すまないけどキミ、席を外してくれないかい?」
「……わかりました、そろそろ帰るね」
名残惜しいが従うしかない、と優太は立ち上がる。
「ユータ」
「ん、どうしたのコウ?」
去ろうとする優太にコウは話しかけた。
「こんなふかふかのベッドで寝るのは初めてだ、優太に会えたおかげだな」
「ふふ、なんだよそれ」
「ありがとう」
次の日、優太の元に連絡が届いた。
『コウが死亡した』と。
学校の一時間目を休んだ優太は、鳴神と共に部室の椅子に座っている。
「すまないね、ユータくん」
「いえ」
散々泣いた後の優太は、目を赤く腫らしていた。
「これはG.S.の落ち度だ」
鳴神の話はこうだった。
あの病院は連邦の息が掛かっていない個人経営の病院であった。
しかし、医師の一人に連邦のスパイが紛れ込んでいたのだという。
それがあの眼鏡の医師だった。
コウの元へ着いた医師は、コウに『連邦へ身柄を送る』ことを勧めた。
が、コウは拒否して『それなら死ぬ方が良い』と伝えたそうだ。
「それでコウは殺されたんですか」
「あの医師は、最後に彼女の願いを叶えた、と看護師に言って行方を眩ませたそうだ」
おそらくは連邦に戻ったんだろうね、と鳴神は言ってため息を吐いた。
「わかりました、ありがとうございます」
優太は授業に戻ると言って席を立った。
「ユータくん」
「悔しいですけど、ここで凹んでちゃ生安部失格ですから」
優太は振り向くと腫れた目で笑う。
鳴神は優太に手を振って見送った後に、棒付きキャンディを舐めながら、優太の成長を噛み締めた。
「コンコン」
扉をノックしながらコンコンと口に出すのを聞いて、鳴神は無視をする。
「失礼する」
金髪のセミロングを後ろで束ねた女性が部室のドアを開ける。
「……やっぱり君か」
「病院の件はすまんかったね」
右目を長い前髪を隠した金髪の女は優太が座っていた席に腰を下ろすと、
隣に座る鳴神の方へ膝を向ける。
「シャロン」
シャロンと呼ばれた女は机に頬杖を付く。
「ナルカミ、顔を見るのは久しぶりだ」
シャロンは鳴神の方を向かずに、胸ポケットから鍵を取り出した。
「キミの欲しがってたものをココにおいてる」
「ふぅん、見つかったんだね」
ああ、とシャロンは得意げな顔をした。
「ナルカミよ、これは連邦への下克上だぞ」
鳴神はシャロンから鍵を受け取ると、はやる気持ちを抑えつつ部室を後にした。
「G.S.は猪突猛進なやつばかりだな」
シャロンは一言呟くとフフ、と笑うのだった。
コウは犠牲になったのだ、犠牲の犠牲にな……。
次回投稿予定日:7/14 朝7時