カゼ
最近飲み物のレパートリーがなくなってしまい、ここに書くことが無くなってきてしまいました。
自ら縛りを付けてしまって首を絞めたパターンです、お恥ずかしい。
「ゲンさん……」
「おにいちゃあああん!」
コウの叫びが下水道にこだまする。
泣き崩れたコウと優太の元へ緑髪は足を進めた。
「ッ!来るな!」
「ありゃまぁ、そりゃあ嫌われるよねぇ」
苦笑を見せて頭を掻いた男は、それから、
「君もAspなんだね、コウちゃん」
とニコリと笑う。
「やめろ!」
男とコウの間に割り行って、優太は拳を作る。
「怖い顔しないでよ、取って食ったりは、」
「だまれ!コウに触れたら殺してやる!」
話を聞かない優太に呆れた、と溜息を吐いてから、男はしゃがむ。
男とまっすぐ視線があった優太は恐怖から一歩下がりかける、
が、コウを守りたい一心でジリ、と一歩足を前に出した。
「ボクはね、連邦軍Asp専門の殺し屋なんだ」
でもね、と男は続けた。
「連邦から依頼がない限り、君のコウちゃんは殺さないから安心してね」
それだけ言って、男は立ち上がると傍を去っていく。
「連邦、殺し屋……」
男の言葉をゆっくり繰り返す優太の手をコウがギュッと握る。
スーツが闇へ消えていく最中、
「ボクは『カゼ』、仲良くしてね」
と通り風の様に飄々と伝えた。
「それで、カゼは行っちまったってわけか」
下水道に豪と黙が辿り着いた時には、子供たちが皆で泣きながらお互いが抱き合っていた。
「ゲンさんは多分、もう……」
優太はそこまで言うと、涙をこぼす。
悔しい、悔しくてたまらなかった。
黙は、優太の背中を優しく撫で続けながら思い出す。
「ゲンさん……知ってるよ」
「そうなんですか、黙さん」
あったことはないけど、と黙は付け足した。
「大気のAspで、連邦軍と何回もやり合ってた」
「なるほどな、手が付けらんねえから『化け物に化け物をぶつけた』わけだ」
優太は緑髪の男のニヤリとした顔が浮かんできて、忘れようとかぶりを振る。
「なんでAsp同士で争わなきゃいけないんですか……」
「ユータ」
コウは優太の腕を掴むと、袖で涙を吹いた。
優太はカゼの顔を思い出して、小さな拳をフルフルと震わせた。
「コウ、僕の元に来ないの?」
「ううん、ダメだよ」
コウは子供たちの面倒を見るために、保護を受けないといった。
優太からすると、ここにAspであるコウを置いていくのは危険でしかないとわかっている。
更に、先のカゼがコウの能力を見た以上、連邦の標的にされるのも時間の問題ではないだろうか。
優太は何度もG.S.の保護を受けることを勧めたが、それでも彼女は聞かなかった。
「優太、行くぜ」
「豪先輩……でも……」
「……大丈夫」
豪と黙の二人に手を引かれ、下水道を後にする。
優太は心配で何度も振り返ったが、コウは優太に小さく手を振り「またね」と見送った。
「コウちゃんが連邦から狙われることは暫くないと思う」
「黙先輩?」
「連邦は『人類の脅威となりえるAsp』を対象にアイツを仕向けるから……」
後日、優太はカゼについての話を二人から聞くこととなる。
カゼは、Aspの力が目覚めてすぐに連邦に自ら足を向けたそうだ。
そこからAsp専門の殺し屋として、連邦から好きに扱われてきたらしい。
彼自身もAspでありながら、同じAspを手にかけてきた。
彼の内心は分からない、が幾度となく豪たちはカゼと戦闘を繰り広げている。
「同じもの同士なのに……」
「同じもの同士だからこそ、アイツは動いてるんじゃねえかな」
豪はそういって、ギリリ、と拳を握った。
ゲンさんは正直すごく好きな筋骨隆々おじさんのイメージだったのですが、
元からの設定に従って小説のステージから降りて頂きました。
スラムのお兄ちゃんとして、建築作業を手伝いながら子供たちの世話をしていました。
次回投稿予定日:6/8 朝7時