吹き荒れる地
今住んでいる場所は不動産情報に『虫が出ます』と書かれるくらい虫が出ます。
駅まで数分の道のりに、5か所近く虫柱ができるくらいには虫が出ます。
本日はピーチティでも飲みながら、どうぞ。
「案内ごくろーさん、ユータくん」
緑髪の男はニヤニヤと笑っている。
スーツをキッチリと着込んだ姿は、スラム街には全く似合わない様相である。
「どういうことだい、優太君」
「ぼ、僕にもサッパリ……」
優太は徐に立ち上がり手元でコッソリとケータイを起動すると、
豪と黙に連絡チャットを飛ばす。
『スラム、マンホール下』
そこだけ一旦送って、詳しい詳細を続けて送ろうとしたら、
ビュウッ、と鉄砲風が吹き荒れて手元のケータイが弾かれてしまった。
「なッ」
「救助連絡は終えたかい?ユータくん」
「どうやら優太君は利用されたらしいね」
既に立ち上がって緑髪と対峙していたゲンは、ジリジリと男に近づいていく。
子供たちは後ろへ下がり下水道の壁に沿って並んでいる。
「そのとーり、君の後を着いていったら、探し物が丁度あったんだよ」
ありがとうねーユータくん、と楽しそうに笑うと、
緑髪は手を広げコチラへと向けた。
「さてさて、チャッチャと終わらせますか」
緑髪が全身に力を入れた、その瞬間、すさまじい強風が吹き荒れる。
ゲンと優太は強風に晒されて後ろに押される。
ゲンも両手を出そうとしているが、風に押されて身動き一つ出来なくなっている。
「きゃあああ!」
途端、強風に晒された子供たちも吹き飛ばされていく。
スッ転び、グルグルと転げていく子供たちに、ゲンはマチ!ソーヤ!コウ!
と飛ばされた子供たちの名前を呼んだ。
床を掴んで止まろうとしているが、全く抵抗できず滑り指が擦れていく。
掌から血を流す子供たちを見て、ゲンは苦しそうに何度も子供の名前を叫ぶ。
「もう、ギブアップかい?」
更に風は強くなり、優太も吹き飛ばされる。
「うわぁあ!」
「優太君!」
ゲンが優太の手を握るが、その反動でゲンまで吹き飛ばされてしまう。
気付けば、先ほど見た下水が落ちていく奈落の傍まで飛ばされてしまっている。
楽しそうに笑いながら、緑髪の男は近づいてくる。
一歩近づく度に、風が強くなっていく。
子供たちは、壁に接着されているパイプにつかまり、何とか事なきを得ているようだが。
「子供たちを守らないと……!」
ゲンと優太は床から離れられず、大穴は足元まで来ている。
段々と身体はズレて、既に足元は宙ぶらりんになってしまった。
まずい、このままでは奈落へと落ちてしまう。
「やめてえええええ!」
大穴に腰元まで来たその時、コウの声が下水道に響く。
パイプに捕まっていたコウが、片手を広げ、手元をビカッと光らせる。
緑髪は目をやられたのか、グワァと叫び手で押さえた。
刹那、風が止む。
「うおおおおおお!!」
ゲンは、颯爽と立ち上がり緑髪の身体に突進すると両手を掴んだ。
二人の力は拮抗しあう。
その間に優太は倒れている子供たちを立ち上がらせると二人の端を抜け、
先程の広い場所へと避難させた。
「コウ!」
「ユータァ、ひっ、うぐっ」
一人残って泣いているコウの手を引っ張り、拮抗する二人の横を通ろうとした瞬間。
力で押し合って両手が離れた一瞬の隙を緑髪は逃さなかった。
掌から細く素早い風を作り、発する。
鎌鼬となった風はゲンの首を切り裂いた。
「ッぁあああ!」
痛みで首を手で覆ったゲンを、緑髪は逃さない。
立て続けに鎌鼬を作り出し、腕を、足を、腰を、全身を切り刻んだ。
「ゲンさん!」
「来ちゃだめだ!」
大穴まで追い詰められた時には、ゲンは血塗れであった。
息も絶え絶えに膝をついて動けなくなったゲンを、
緑髪は胸を蹴飛ばして奈落へと落した。
「ゲンさん!」
「コウを、頼む……」
落ちていく瞬間、ゲンはそれだけを伝えて消えていった。
戦闘シーンであんまりかっこいい描写書けないのが悲しいです。
もっとバンとかドンとかやりたいです。
小説に画像を入れられるらしい、ということを旦那から聞きましたので、
途中から落書きでも入れられたらいいな、と思います。
次回投稿予定日:7/6 朝7時