G.S.
今回、小難しい話が多いです。
世界観の説明になるので、
あまり深く考えずハーブティーでも飲みながらどうぞ。
鳴神は優太を椅子に座らせ、自分も隣の椅子に座り、向かい合う。
「君は、G.S.を知っているかい?」
「詳しくはわからないけど……」
鳴神は説明を始める。
世界人口が六億人に減ってしまった頃。
国の代表達はこの世界を捨てて、宇宙へと旅立ってしまった。
当時、反政府組織として勢力を拡大していたネーベンブーラーというテロ組織は、
その危機に対し、自分達がリーダーとなることでピンチを脱することを決めた。
そして壊滅していたアフリカ大陸を除く、ヨーロッパ、アメリカ、オセアニア、アジアの四大陸を
結合し形成されたのが今の連邦である。
つまり、今この世界には国は四つしかない。
元々国だった単位は『街』という単位になり、ビザなども必要としなくなった。
「元々、沢山の国があったの?」
「196もの国があったと言われているよ」
「そんなに……!」
「日本も元々は一つの国で、しかも隣の島に住んでいたんだ」
「あの汚染地帯に?」
「ウン、今は元々違う国だったところに腰を下ろしているんだ」
そしてG.S.は元々、連邦が生まれる前に存在していた対タレンティッド組織であった。
能力を得て好き放題に暴れていたタレンティッドを倒すため、
ネーベンブーラーによって組織された少数軍だった。
タレンティッド達が地球から脱出し連邦が出来たことでG.S.は解散し、連邦軍に統合された。
それから数年経った現在、日本街で反連邦組織として出来たのが、『G.S.』。
「なんでわざわざ同じ名前にしたんですか?」
「ほとんどが元々G.S.だったメンバーで出来ているからねー」
忘れられないんだよ、色々とね。
鳴神は優太ではなく、遠くの方を見ていた。
「鳴神先生もG.S.なんですか?」
「一緒に活動することは少ないけれど、一応そうなるね」
鳴神は胸ポケットから棒付きのキャンディーを取り出すと、袋を破いて口に咥える。
鳴神は優太に一本渡そうとするが、優太は遠慮した。
「現在、G.S.の目的は『Aspの保護』だ」
「保護!」
優太は驚いて、鳴神先生の方に体を乗り出す。
「と言っても、きちんと話が通じる子限定だけどね」
「そう、ですよね」
豪は『収容できる施設はない』と言っていた。
話が通じないAsp達を保護することはできない、という事なんだろう。
「暫くは殺さざるを得ない時があるだろう」
「逃がす、というのはダメなんですか?」
「連邦軍がさせてくれないだろうね」
連邦軍、と優太がつぶやくと、鳴神はフゥ、と溜息を吐いた。
「豪はね、なるべく素早く殺したかったんだよ」
あの時の情景がまた浮かぶ。
体内に火を送り込み、表には見えない様に殺害していた。
「君にそういう所をなるべく見せたくなかったんだろうね」
(僕に嫌なところを見せない様に、あんなことを)
「それに連邦に捕らえられた場合、思う存分研究されて殺される」
「そんな……」
「だからアレが正解だったんだよ」
鳴神はキャンディーを歯で噛んで割る。
カリッカリッ、音が響く。
鳴神の遣る瀬無い感情が伝わって、優太は顔を俯かせることしか出来なかった。
段々ダークな雰囲気が漂ってきてると思います。
もう少しだけ歯がゆいかもしれませんが、続けて読んでくださるとうれしいです。
次回投稿予定日:7/1 朝7時(いつもより一日早め投稿です!)