人類の残響
初めての投稿です、よろしくお願いします。
二日おきくらいの頻度で投稿します。
脳内使用領域拡大装置、それにより生まれたタレンティッドという能力者達。
富豪や権力を持った人達はタレンティッドとなり、第二地球へと姿を消した。
地球に残った人類は最大人口の十分の一にも満たない、残り六億人に落ち込んだ。
そこから二十五年程経って。
今は、やっと八億人。
(つまんないなぁ)
社会の授業は長ったらしい言葉ばかりで、九歳になったばかりの優太にとっては退屈でしかなかった。
窓を覗くと、外では中等科の学生達がサッカーをしている。
(先輩達は楽しそうなのになぁ)
「こら、鈴木君!」
「わぁ!」
いつの間にか机の前に立っていた社会の望月先生は、
白髪交じりの顎ヒゲをワサワサと撫でて、教卓の方へと戻っていく。
「では、鈴木君に一つ説明してもらおうか」
「は、はい、なんでしょうか」
「Aspについて、教えてもらえるかね?」
「えーと、それは……」
優太が答えられずシドロモドロしているのを、いい気味だとでも言いたげな望月のニヤけ顔。
悔しいけど、なんて言えばいいんだろう。わかっているけど、難しい。
「それは……」
「先生!」
突然、隣の席である美空が立ち上がる。
「Aspとは、チョウノウリョクを持った人のことですよね」
そう一言助け舟を出され、優太は続けることが出来る。
「脳内使用領域拡大装置によって生まれた、自然を操ることが出来るっていう」
「その通り、まぁ子供にしてはよく知っている方だねぇ」
どもっている姿を見かねて美空は助けてくれたのだろう。
恥ずかしい所を見せてしまった、と優太は顔を赤くした。
「しかし、今はそのリミッターなんてものは存在しておらん」
じゃあなんでアスプがいるの?
なんで昔なのに死んじゃってないの?
子供たちの問いがワァワァと溢れ出すのを、望月は聞いてられないと苦い顔をして黙らせる。
「Aspはリミッターが壊れたことで生まれた、いわば副作用なのだよ、
ウヨウヨと次から次に生まれてくる、厄介な化け物だ」
授業終了のチャイムが鳴る。
それと同時に、望月は低い声で生徒に向かって
「連邦からも言われているが、もし能力が出てしまったらすぐに先生に伝えるように」
と吐き捨てて出ていってしまった。
「いつも望月先生ってキゲン悪いよねー」
美空は優太の方に困ったように話しかける。
「ありがとう、慌てちゃってたから助かったよ」
「いいのいいの、ほら部活、行かないの?」
そう言われて、優太は弾かれたように椅子から立ち上がり、授業用タブレットをカバンに突っ込むと、
ありがとう!と大声で美空に告げて走り去っていった。
「……Aspは化け物、かぁ」
美空は去っていく優太の背中を見送りながら、誰にも聞こえない声でそう呟いた。
結構緩やかにストーリー展開していくと思います。
ココアでも飲みながら、軽く読んでいただけると嬉しいです。
次回投稿予定日:6/14 朝7時