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幕間 5




 一方その頃。オーマが去ったあとの事務所でロズウェルドは頭を抱えていた。


(マズい……どうすれば……)


 彼が頭を抱えているのは商売の邪魔をされたから――だけが理由ではなかった。




 問題は例のドラゴンエナジーだ。


 実はこの違法ドリンクは外国製であり、それを彼は独自の販路で密輸して売り捌いていたのである。

 これは完全に彼の独断であり、竜王会本家の許可を取っていなかった。


 全ては竜王会の幹部に取り立てられるため、絶対的な成果を挙げようとしてやったことだったが……何もかもが裏目に出てしまった。


 このある種暴走ともいえる愚行にロズウェルド自身が走った原因は、抗争していた四天会の消極さにもあった。

 竜王会との戦争を不経済と考えていたサラリサは、迎撃以外の抗争を部下に禁じていた。


 そのためロズウェルドファミリーと激突するのは、精々サラマンダー家の一派のみで、実はこれまで本格的な戦いになったことがないのである。


 だがしかし、四天会のそうした内情などロズウェルドは知る由もない。

 それどころか噂よりずっと消極的な四天会を過小評価させてしまい、彼をここまで危険な綱渡りに走らせてしまったのだ。


 けれど実態はあまりにも違った……大将がひとり出張ってきただけでこの有り様である。


「……ッ」


 四天会と本格的な戦争に発展するとなれば、本来なら本家に援軍を要請すべき案件。


 しかし、それではドラエナの件が本家に露見してしまうだろう。

 そうなれば彼の一家は終わりだ。

 だがドラエナの売買を辞めれば、今期の売り上げはガクンと落ちる。

 急にそんなことになれば本家に説明を求められ……辿る運命は同じ。


 つまり、現状の彼はどうしようもなく詰んでいるのであった。




 ありもしない解決策を探して呻き続けるロズウェルド――そんな彼に、ふと声をかける者があった。


「おい、ロズウェルド」

「……」


 その横柄な言葉遣いで、ロズウェルドはすぐ相手が誰か分かった。

 奥の部屋で接待中だったはずの「客」だ。


「あんまり勝手にうろちょろされると困るんですがね」

「そう言うなよロズウェルド。あんな大騒ぎしてたんだ。気になって見に来ちゃうのが人情だろ?」


(だから余計に危ないことが起きてるって分からんもんかね……)


 そう思ったがロズウェルドは言わないでおいた。


 なにしろその客は客でも大事な商売上のパートナーなのだ。

 ドラエナはその中毒性でリピーターを作って稼ぐ商売だ。

 だが魔法のほとんどが規制された現代では、違法な魔力増幅剤の需要は乏しい。


 要するに肝心の「最初の一回」を使わせるのが難しい商品なのだ。

 欲しがるのは魔法の悪用を考える犯罪者。

 あるいは伝統的な模擬戦の代表選手になりたいと思うエリート。


 ロズウェルドファミリーがドラエナで大儲けできたのは、「彼」が後者の販路を拡大してくれたお陰なのである。


「なんか、どうもマズいことになってるみたいじゃないか」

「……ええ、その通りで」


 どこから話を聞いていたのか……もしかしたら先程の交渉時にこちらの部屋を覗いていたのかもしれない。


「とにかく、今日はもうお帰りください。俺たちは今後の対応を考えないといけませんので……」

「僕にいい考えがある」

「はい?」


 急に何をと思ってロズウェルドが顔を上げると、相手はニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべていた。


「あの男の弱点を教えてやるよ」




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