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8-1 魔王、カチ込みに向かう




 いろいろと波乱の週末を終え、再び学校が始まった。

 教室では相変わらず浮いた存在のオーマだが、生徒会にはだいぶ馴染んできた。


 さて、普段から忙しい生徒会ではあるが、今週はいよいよ開催が近づいた『観覧祭』に向けての準備に益々慌ただしくしていた。


「オーマ、ちょっと買い出し行ってこい」

「はい」

「あ、あたしも行くー」


「ブランギ先輩、いいですか?」

「あーあー、サボりよりいい。しっかりコキ使ってこい」


 ブランギは追い払うようにルシールの動向を許可する。

 彼もだいぶ彼女の扱いが雑になってきた。


「あ、オーマ君」


 オーマが買い出しに向かおうとした時、ツクモに呼び止められる。


「悪いんだけど~外に出るついでに、クラ高の外観写真を撮ってきてもらえる~?」

「写真ですか?」


「パンフレットの表紙に使う予定なの~」

「分かりました。どんなの撮ってくれば?」


「どうせモノクロに加工するから、それっぽいの何枚か撮ってきてくれればいいよ~」


 ツクモはカメラをオーマに渡し、ポンと彼の肩を叩いて。


「お願いするね~」


 と言って、彼女はオーマたちを見送った。




「カイチョーとオーマって、最近やけに仲いいよねー」

「……!」


 買い出しの帰り、唐突にルシールに指摘されてオーマは軽く肩を揺らした。


「そうか?」

「そーでしょ」


 軽く否定してみるが、ルシールはジトッとオーマの横顔を見る。


「この前買い物に行った時に何かあったの?」


 あの日はルシールも尾行していたが、途中でサラリサに捕まって途中から彼らの行方を追えていなかったのだ。


「いや、なんかってほどのことはなかったが……」

「むぅ~」


 煮え切らないオーマの態度にルシールは頬を膨らませる。


「……俺ぁ写真撮ってくから、先戻っとけ」

「えー、あたしもつき合うってば」

「そうか」


 オーマはルシールと一緒に校内を歩き、パンフレットによさそうな写真を撮れるポイントを探す。


「こうか……ん、違うな」

「オーマ、こっち側から撮ってみたら?」

「ん……どうだ?」

「いいんじゃない?」

「そうだな……いや、あっちで校門と一緒に校舎を撮ってみるか」


 こういうのはパパッと撮ってしまえばすぐ終わるものだ。

 だがやはり撮るからにはいい物をと拘ってしまうのが人情。

 ふたりは高校の敷地内を歩き回り、あちこちで写真を撮り続ける。


「あ、オーマ! 試しにあたしのことも撮ってみない?」

「でも、パンフレット用の写真だぞ?」

「いーじゃんいーじゃん。ほら、校舎と女子高生を合わせて撮ったら、案外サマになるかもしれないでしょ?」


 そうだろうか? そうかもしれない。


「分かった」

「やったぁ」


 オーマは頷き、ルシールは喝采を挙げる。


「じゃじゃ、撮って撮って」


 ルシールは喜んでポーズを取り、オーマは何度もシャッターを切る。

 彼に写真を撮ってもらうのが楽しいらしく、彼女はずっと言い笑顔だった。


「どうどう? かわいく撮れた?」

「ああ」


 パンフレットに使えるかはともかく、悪くない写真は撮れたような気がする。


 校舎の写真も十枚以上撮ったし、そろそろ生徒会室に戻ろうか――と彼が考えた時だった。


 とある男子生徒の姿が彼の視界に入る。

 あれは確か、この前の授業で危うく魔法を暴走させかけたワールだ。


「ん? どしたのオーマ?」

「いや、ちょっと気になることがあってな」


 オーマは生徒会室に戻るのをやめ、ワールの方へと近づいていく。


「……!」


 彼の接近に気づき、ワールは一瞬顔を強ばらせた。

 それは別におかしくない。オーマを見ると大概の生徒はビクッとなる。


「よう。体はもう大丈夫か?」

「あ、う、うん……すっかりよくなったよ。あの時はあ、ありがとう」


 だがそれにしてもワールはやけに落ち着きのない態度だった。

 ずっとソワソワとして、飲みかけのジュースの缶を自分の太ももにグリグリと押しつけている。


「少し訊きたいことがあるんだけどよ」

「な、何?」

「この前の授業……」

「え!?」


 この前の授業と聞いただけで、ワールはかなり動揺した。


「……あん時はどっか調子が悪かったのか? お前、あんなヘマする奴じゃないだろ」


 魔法の授業は班制だ。

 オーマとワールはずっと同じ班だから、当然彼の魔法の腕前は知っていた。


「別に、そんな」

「単に腹イタだったってんならいい。ただ……」


「べっ、別にいいだろ! 偶々調子が悪かったんだよ!」


 ワールはオーマの言葉を遮るように叫んだ。


「ちょっと、何その態度? オーマはアンタの心配してるだけじゃん」


 その言葉遣いがカチンと来たのか、ルシールが横から口を出す。


「それとも何か後ろめたいことでもあるわけ?」

「ちっ違う! 話がそれだけならぼぼ僕はもう行くから!」


 ワールは殊更強く否定し、残りのジュースを飲み干すと空き缶をゴミ箱に捨て、逃げるように去っていった。


「何アイツ?」

「……」


 オーマはワールが去ったあと、彼が置いていったジュースの空き缶に目を留める。


 よく見るとその缶にはラベルがなかった。

 飲む前にワールがラベルを剥がしたという可能性もあり得るが、そんなことをわざわざする理由が分からない。


 どうにも気になり、オーマはゴミ箱からその缶を拾い上げる。


「えっ! オーマ何してるの?」


 いきなり空き缶を拾い上げた彼を見て、ルシールはビックリした声を上げた。


 彼女の反応に構わず、オーマは空き缶の飲み口に鼻を近づけて臭いを嗅ぐ――と。


「こいつぁ……」

「?」




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