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3-3 裏社会の魔王、生徒会に入る




 その日の放課後。


 オーマは生徒会室の前まで来ていた。


「……」


 彼は『生徒会』のクラスプレートをしばし見つめた後、ノックしてドアを開ける。

 中では生徒会の役員である生徒たちが忙しく働いていた。


 資料の束を抱える者。

 どこかに電話をかける者。

 パソコンに何かを入力している者。


 みんな何かしら手を動かしていたので、最初は入ってきたオーマに誰も気がつかなかったほどだ。


「職員室行って確認してきま……わっ!?」


 ちょうど廊下に出ようとした生徒がいて、彼がようやくドアを開けたまま突っ立っているオーマの存在に気がついた。


 驚いた彼の声で、生徒会の中の動きは一時的にピタッと止まる。


「な、何だお前……一年? が、何の用だ?」


 先程オーマに驚いた二年生の先輩が怒ったような口調で尋ねてきた。


「その、俺は……」


 オーマは用件を伝えようとするが、上手く言葉が出てこなかった。


「……」


 その様子を見て、その二年生は不機嫌そうな顔をする。


 いかにも邪魔と言いたげな表情で彼がオーマを追い返そうとした時――生徒会室の中から「あ~」という声が上がった。


「オーマ君だ~。いらっしゃ~い」


 声の主は生徒会長机にいたツクモだった。


 部屋の一番奥にいた彼女は、こちらに向けてヒラヒラ~と手を振っている。


「会長……お知り合い、ですか?」

「うん、そう。ブランギ君、入れてあげて~」

「はい……」


 ツクモがそう言うと二年生――ブランギは胡散臭そうな目でオーマを見ながら、彼に道を譲った。


 生徒会室に入った彼を、上級生たちは好奇の視線でジロジロ見る。


 一年の割にガタイがよいのもそうだが、何よりツクモと親しげなことが様々な興味を彼らに抱かせたのだ。


 それに多少の居心地悪さを覚えるも、オーマは黙って生徒会室の奥まで歩を進める。


「それで、どうかしたの~?」


 相変わらずゆったりと、人を急かさない口調でツクモはオーマに尋ねる。


「はい。実は……」


 そのやさしい声に安心感を覚えながら、オーマは口を開いた。


「ん~?」

「……俺も、生徒会に入りたいんですが」




 彼のひと言は波紋のように生徒会室に広がり、役員たちは総じて息を呑んだ。


 唯一、会長のツクモだけはいつもと変わらぬ調子で。


「あら~ここのお仕事は大変よ?」

「大丈夫です」

「そう? なら……」


 軽いやり取りで、そのまま彼女が頷こうとした時。


「ちょちょちょっと待ってください会長!」


 呆然から脱したブランギが声を上げ、慌てて彼女を止めた。


「何をサラッと許可しようとしてるんですか!? こんな突然現れたうすらデカいだけの一年を生徒会に入れる気ですか!?」


「大きいっていいことよぅ。それにみんな忙しい忙しいって言ってたじゃない? オーマ君は力仕事で頼りになりそうだし、ねぇ?」


「ウス。任せてください」

「ほら、オーマ君もこう言ってるし」

「そうじゃなくてですねぇ!?」


 ブランギはバンバンと机を叩いて抗議する。


「我が生徒会はこの学校の顔なんです! そこに名を連ねるのは校内でもトップクラスの生徒でなければなりません!」


「でも校則には役員選挙のほかに、確か会長には臨時役員を十人まで指名できる権利があったはずよ?」


「うっ……それは」


 校則を持ち出され、ブランギは口ごもる。


「し、しかし! 俺たちはコイツのことを何も知りません。せめて何か実績がないと」

「そうは言っても、オーマ君は転入生だしね~」


 ツクモはオーマのことを見上げる。


「オーマ君は前の学校で何かやってたことあるぅ?」

「いえ」


 前も何もオーマは学校に通うことすら初めてである。

 当然、学業や校内活動に関する賞や実績など持っているはずもない。


「ほらやっぱり! やはりこんな馬の骨を生徒会に入れるわけには」


 途端に勝ち誇るブランギだったが――不意にオーマに顔をグッと近づけられ、「うっ!」とたじろぐ。


「先輩、お願いします。どうしたら認めていただけますか?」

「うっぐっ」


 丁寧だが妙な圧のあるオーマの真顔に、ブランギはさらに何歩も後退する。


「じゃ、じゃああれだ! 模型部の部室を占拠してる不良を立ち退かせてこい!」


 そして彼は、咄嗟に思いついたことをそのまま口にした。


「分かりました」


 その提示された条件に、オーマはふたつ返事で頷いた。





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