穴に入ったら逃げれる。
ドムっと聞こえた。何時もそうだった。
顔に物が当たると、そんなふうに聞こえる。
気づいたときには、戻っていた。水槽の音(エア
ポンプ)が、チロチロと言葉を発する。
「戻っちゃった。」落胆。蝉は泣き続け、水道の水を流す音が上から聞こえる。やることはやったが、その次、そのまた次、またまた、終わらない道を歩く。
昨日はあまり寝付けず、変な夢を観た。とあるきっかけ、始まる事件、仲間と協力。とても楽しかった。緊張感が存在した。願望が込められていて、観るに耐えなかった。蝉と水は黙り、部屋の外から音が聞こえるようになる。明日のことを考えると、目が冴える。頭か。
「行く時間無くなっちゃったね。」
「別に有る。」
小さい頃から、異なる世界に憧れていた。ような。幼稚園児の時、理由は忘れたが、きつく先生に起こられ、教室から追い出された。謝っても謝っても、入れてもらえないので、階段に座る。どこかへ行きたかった。その場に居なくなりたかった。ドラえもんに来てもらってどこでもドアで家に入って必要なものを持って・・・・・・・・
その先は覚えてない。だが、そのときの感情、気持ちは今も抱えている。だからあいつに憧れた。
無口でクールで涼しくて寒くて。
出発する時間が欲しい。いつもみたいに出発すれば、何処からともなく元気が湧く。
「時間は創ればいいじゃん。」
返す言葉も無い。
あのコロコロは何を思っていたのだろうか。車を潰し、街灯を薙ぎ倒し、建物をもペッシャッンコにして楽しいのだろうか。特に轢かれても、何ともなかった。目的は何だったか。
昼は味方、夜は敵になるそいつは、俺を決して、寿命が無くなるまで、受け入れてくれない。
「そんな事はないよぉ! 僕、君、は人間でしょ!なんだって出来る。まだ歩き足りないんだよ、きっと!」
こいつは、具体的なことは言わない。言ったとしても、的はずれだ。
「なんだってしたらダメでしょ。」
「でもしたいんでしょ?」
やること有るから。