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【第57話:その実力】

「次はそっちの群れを倒す! 各自散開後、合図を待て! …………かかれ!」


 サッカイ小隊長の指示に従い、7匹のゾンビが徘徊する場へと突入する。

 手の中のいつもと違う握りに多少の違和感を感じながらも、駆け抜けながら振り抜いた魔法剣の一閃で1体のゾンビを靄へと変える。


 そのまま勢いを殺さず、急制動をかけて飛びのくと、鉄球が前方のゾンビの上半身を吹き飛ばした。


 既に5つ目の群れにもなると、メイシーとの息もあってきたようだ。


 オレは飛びのいた先にいたゾンビの頭に突きを叩き込んで動きを止めると、そのまま上に振り抜き、剣を返して袈裟切りに斬り裂いた。


 靄となって消えゆくゾンビを尻目に後方に回転しながら飛びのくと、別のゾンビを十字に切り分ける。


 その時、ちょうど追い付いてきたメイシーがぐるりと鉄球を回すと、残りのゾンビの上半身が吹き飛び、3匹纏めて葬ったのだった。


「どやぁ! うちが4匹やぁ~」


 メイシーが嬉しそうにどや顔でこっちを見てくるので、軽く両手をあげて参ったとこたえておく。

 さっき流したら何回も言ってきたからな……。


「なぁ、サッカイ小隊長さんよぉ。俺たちもう帰っていいんじゃねぇか?」


「はははは。さすが1級冒険者だよな」


 苦笑いを浮かべるサッカイ小隊長の気持ちもわかる。

 今のところ、全てのゾンビをオレとメイシーの二人だけで倒してしまっているからだ。


「……すまない。オレは別に勝負しているつもりはないんだが……」


 かと言って手を抜くのも違う気がするので、オレはオレの出来る事をしていただけなのだが、その結果、オレとメイシーだけで全てのゾンビを倒してしまっていた。


「いや、謝らないで大丈夫です。余裕をもって討伐出来ている事は良い事だから。それに、次からがたぶん本番だからね」


 サッカイ小隊長の視線の先には、ゾンビとは明らかに違う個体が数体確認できた。


「グールか」


「あぁ、それにグールの変異種も確認されているからね。だから、君たちも油断しないで気持ちを引き締めて欲しい」


 振り返って少し気の緩みかけた他の衛兵や冒険者たちに、あらためて警戒を促すのだった。


 ~


「んで、なにを引き締めて欲しいって?」


「ははは……いや、さすがにここまでとは思わなかった……」


 グールが少し混ざったぐらいでオレとメイシーの無双は止まらなかった。

 さきほどまでのゾンビの群れの時と何もかわらない光景が、そこには展開されていた。


 普通はグールが一匹いるだけで、かなりの強敵とされるところ、今回のこのアンデッドのコロニーでは多くのグールが発生しており、普通ならかなりの覚悟をもって挑むべき討伐だったのだが、さすがに1級冒険者が2名も揃うと敵ではなかったようだ。


 そして、更にグールの存在する3つの群れを討伐し、残すは変異種がいる群れのみとなっていた。


「いや、だがな。お前ら、気を抜くなよ。次はグールの変異種を含む群れな上に、他にもグールや大型のゾンビもいるようだ」


 サッカイ小隊長が前方の最後のアンドッドの群れを指さし、気を引き締める。

 そこには確かに黒く染まったグールが一匹混ざっており、四足歩行の何らかの動物を模倣した大型のゾンビや、通常種のグールが数匹確認出来た。

 その上、ゾンビもこれまでの群れと比べてかなりの数が徘徊しており、別格の規模だ。

 今までのようにオレとメイシーの二人だけで、一瞬で倒し切るのは難しいだろう。


「あれが変異種って奴か……俺初めて見たよ」


「特殊な能力持ってたりするんだよな? あんたら二人が頼りだから頼むぜ」


「あたしもあんな禍々しい魔物を見たのは初めてだわ」


 冒険者が変異種の姿を見て、口々に不安そうにそう呟く。


 オレは何か安心させるような言葉でも言ってやりたかったのだが、変異種はその強さの幅がとても大きく、また、特殊な能力を持っている事が多いため、何か言ったところで気休めにしかならず、口を開くのが躊躇われた。


 しかしそんな中、メイシーが口を開いた。


「自分ら、戦いを生業にしている戦士やろ? 情けない事ほざいてんと、気合いいれぇや。そもそも、グールの変異種程度なら、うちと仮面のにいやんいたら、まず負けへんから任せときぃ!」


 そう言って自慢の鎧をガシャンと叩いて、皆の不安を吹き飛ばした。


 ちなみに、さっき戦闘の合間に聞いたのだが、驚いた事に魔球(本人がそう呼んでいた)以外は全て自分で作ったのだそうだ。

 この世界に住むドワーフやエルフ、獣人族といった者たちは、独自で集落や小さな国家をつくっており、この国ではあまり見かけないのだが、ドワーフに関しては話に聞く通りに鍛冶や魔道具を作るのが得意な者が多いようで、メイシーも昔、故郷で祖父から叩き込まれたと懐かしそうに語っていた。

 あんた何歳なんだと聞いたラックス(勇者)が腹に良いのを貰って蹲っていた一幕があったが、そこは触れないでおこう……。


「とりあえずオレが先陣を切って斬り込んでいく。中心にいる上位種を中心に狙っていくから、メイシーは雑魚の殲滅と打ち漏らした上位種を頼む」


 さっきサッカイ小隊長とも話し合って、取り決めた事を最後にもう一度確認する。


「了解や! それで変異種が特殊な能力を使った時は、状況に応じて参戦やったな?」


「あぁ、特殊能力がオレの戦い方と相性の悪いものだった場合は、メイシーの方がメインで戦って貰う可能性もあるから、そのつもりでいてくれ」


 こちらに向けて親指を立ててグイっとポーズを決めるメイシーに、少し頼もしさを感じる。

 先日、大きな戦いを経験したと言ってもオレはまだまだ経験不足なため、こういう時に余裕をもって対応してくれる者がいるのは、正直凄くありがたかった。


「仮面の冒険者殿。こちらも準備は完了している。いつでも始めてくれ」


 サッカイ小隊長に頷いて返事を返すと、オレは皆を一瞥してから声をあげた。


「それでは、これより最終目標のグールの変異種およびそのコロニーの殲滅を開始する!」


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