表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/115

【第56話:第一級冒険者】

 ドワーフは男性と女性で随分とその容姿が変わる。

 男女とも共通して言えるのはその背の小ささだが、男のドワーフが髭面に筋肉隆々のずんぐりといった容姿に対し、女のドワーフは比較的細身で少し幼児体形だ。

 その上、寿命も人よりかなり長く200歳前後なのもあって、一見少女のように見えても、実は80歳などという事もあると言う。


 そして、今目の前にいる少女に見えるドワーフもその例にもれず、見た目からその年齢を判断するのは難しかった。


「ふぅ。うちは『メイシー』。これでも一応1級冒険者で……ドワーフの戦士や」


 笑顔で差し出された右手を、オレも笑顔で握り返し、


「オレは……オレは……」


 言葉に窮した……。


「オレは?」


 俯くオレを下から覗き込んで精神ダメージを追加するメイシー。


「す、すまない。オレは素性が明かせないんだ。すまないが『仮面の冒険者』と呼んでくれ……」


「なんやそれ? ははっ! おもろいな! よろしゅうな! 仮面のにいやん!」


「に、にいやんって言うのはちょっと……」


「はははっ、そんなちいちゃい事気にしなや。それより、さっき助けた冒険者のところにつれてくわ」


 オレの抗議の声は軽く流され、メイシーは歩き出したのだった。


 ~


 その後、偵察を受け持っていた冒険者たちに無事に合流すると、オレは皆に回復魔法をかけてまわる。


「へぇ~。第一位階の水属性の回復魔法やのに、えらい回復力やな。毒までは消せてないようやけど、進行は止まったようやし」


 残念ながらオレは解毒魔法は使えないのだが、回復魔法だけでもかなり症状が軽くなったようで、問題なく歩ける程度には回復したようだ。


「助かったよ。あんたの噂は色々聞いていたが、まさか一緒に依頼を受けれるなんて光栄だ」


「本当に助かりました。さっきまで毒で痺れていた足も動くようになったし、何とか歩けそうです」


 皆からの礼を受け取ったあと、オレはメイシーにもう一度礼を言っておく。


「だから、気にせんでええって。それより、うちも暇やし合流するとこまでは付き合うわ」


「それはありがたいが、良いのか?」


 1級冒険者がついてきてくれるなら、凄く助かる。

 オレ一人だけなら、遅れをとるような事はないだろうが、皆を守りながらだと少々不安だ。


「かまへん、かまへん。しかし、アンデッドの変異種かぁ。ほんま中々見つからんなぁ」


 その最後の言葉がひっかかり、オレはメイシーに尋ねてみる。


「見つからんって、何かを探しているのか?」


「あぁ、なんかうちそっくりの彷徨える鎧(リビングアーマー)が現れたらしいてな。うち、ムカつくから探してんねん。見つけたら、それはもうぎったんぎったんに……」


 途中から自分の世界に入って暗い笑みを浮かべている姿に、言っていいものか迷うが、心当たりがあり過ぎて、話さないわけにはいかないだろう。


「あぁ……メイシー? その、リビングアーマーなんだがな。オレが既に討伐したぞ?」


「へ? 今、なんて?」


 手をわきわきしながら固まるメイシー。


「だから、オレともう一人の相棒とで、数日前に今メイシーが言っていたようなリビングアーマーを討伐したって言ったんだ」


 オレの話がようやく理解できたのか、メイシーはしばらく沈黙してから、気の抜けたように座り込んだ。


「ははは、そうか。仮面のにいやんが倒したんかいな。凄い偶然やなぁ。ちょっと、うちの手で倒せんかったのは残念やけど、でもまぁ、ありがとな~」


「まぁ、たまたま出会ってしまったからな。放っておくわけにもいかなかったから、倒したまでだ」


「それにしても仮面のにいやん、見た目と違って凄い強いんやなぁ。ギルドに上がってた情報やと魔物ランクB以上とかやったのに」


「まぁ、一応オレも一級冒険者って事になっているからな」


 あまり冒険者のランクを口にするのは本意ではないが、実力をわかってもらう上では手っ取り早いので、そう伝える。


「おぉぉ! そうなんや! うち、自分以外で初めて1級冒険者とあったわ! これも何かの縁や、よろしゅうな!」


「あぁ、よろしく」


 差し出してきた右手に自分の右手を重ねて握手を交わすと、ふらつきつつも立ち上がった冒険者たちに向き直る。


「それじゃぁ、一度合流しよう」


 そう言って、歩き出したのだった。


 ~


 少し集合地点から離れていたのと、まだ本調子で無い冒険者たちを引きつれていたため、少し時間がかかったが、オレたちは無事に合流をはたしていた。


「それでこのちっちゃい奴は何なんだ?」


 そして案の定突っかかってきたラックスだったが、突然足元に叩きつけられた鉄球に腰を抜かして沈黙する。


「うちは1級冒険者のメイシーや。ちょっとそっちの仮面のにいやんの事が気になるから、手伝ったるわ」


 そして「よろしゅうな~」と、言って手をあげる。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。協力は嬉しいが報酬が出せるかどうかはわからないぞ? それに、悪いが先にギルドカードを確認させてくれないか?」


 先に偵察役だった冒険者たちから事情を聞いていたサッカイ小隊長だったが、騒ぎに気付いてこちらにやってきたようだ。


「ん? あんたは~?」


「ソラルの街で衛兵の小隊長を務めているもので、今はこの討伐部隊を指揮しているサッカイだ」


「あぁ、それはサッカイはん、悪かったな。ほら、これがうちのギルドカードや」


 メイシーがそう言って手をあげると、鉄球が消えて、代わりに突然その手の中にギルドカードが現れた。

 やはり魔法鞄を持っているようだ。


「た、確かに、1級冒険者のようだな。協力して貰えるならこちらとしては非常に助かるが、さっきも言ったように報酬が出るかどうかはわからないんだが、それでも良いのか?」


 もちろん冒険者ギルドに口添えはするがと、申し訳なさそうに続けるサッカイ小隊長に、メイシーは笑みを返す。


「かまへん。そっちの仮面のにいやんが、うちが探してた魔物を倒してくれたさかい、うち、今気分ええねん! まぁ、貰えるなら貰っとくけどな?」


「そ、そうか。それなら是非とも協力をお願いしたい」


 結局、メイシーも討伐に加わる事になり、偵察役だった冒険者たちの回復を待って討伐に臨む事になった。

 少し予定より遅れてはいるが、かなりの戦力向上が出来たので、恐らく十分取り返す事が出来るだろう。


 そして半刻後、いよいよ討伐作戦が開始されたのだった。


**********************

更新が遅れてしまい申し訳ありません。


風邪をひいてダウンしかかっていたため、

拗らせる前に少し休養を取っておりました(汗


今週はもしかするともう1回お休みさせて頂く

かもしれませんが、来週からは通常通りに

週3回更新に戻る予定ですので、引き続き

ご愛読よろしくお願いします<(_ _")>

**********************


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作品の評価は、上の『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』から★★★★★と表示されている所をクリックする事で簡単に出来ます!
応援にもなりますので、この作品を読んで妥当と思われる★を選び、評価頂けると嬉しいです!

また、面白いと思って頂けましたら、ぜひブックマークもお願いします!


新連載!
『オレだけクォータービューで戦場を支配する
~あらゆるユニットを召喚して異世界を救うキャンペーンのクリアを目指します~』


異世界にふりかかる理不尽をチートで蹴散らす本格バトルファンタジー! 今ここに始動する!


ドラゴンノベルス様より、書籍版 第一巻 2/4(金)発売!
322110000539.jpg
※画像をクリックで詳細ページが開きます

MFブックス様より、書籍版 第一巻 好評発売中!
b75shabp9u5nbfoz3gyd7egp52f_fdr_ci_hs_92
※画像をクリックで詳細ページが開きます

MFブックス様より、書籍版 第二巻 好評発売中!
b75shabp9u5nbfoz3gyd7egp52f_fdr_ci_hs_92
※画像をクリックで詳細ページが開きます

MFコミックス様より、コミック第一巻 好評発売中!
322007000171.jpg
※画像をクリックで詳細ページが開きます

MFコミックス様より、コミック第二巻 好評発売中!
322007000171.jpg
※画像をクリックで詳細ページが開きます

『呪いの魔剣で高負荷トレーニング!? ~知られちゃいけない仮面の冒険者~』
8o9b581i4b7hm42ph5wph6qohlqu_xql_tg_15o_
※画像クリックでなろう内の目次ページが開きます
『突然、カバディカバディと言いながら近づいてくる彼女が、いつも僕の平穏な高校生活を脅かしてくる』
平穏を求める高校生と、とある事情を持つ美少女クラスメイトの恋物語(ラブコメ)

『異世界おさんぽ放浪記 ~フェンリルと崇められているけど、その子『チワワ』ですよ?~』
主人公の少年とチワワの掛け合いの楽しい、でも、しっかり戦闘もある”ほのぼのチート”作品です!

『魔王を以て魔王を制す ~ギフト『魔王』を持つ勇者~』
多くの魔王が現れた世界でギフト『魔王』を以て魔王を蹂躙する勇者の物語!

『槍使いのドラゴンテイマー シリーズ』
少年漫画のようなバトルファンタジー!


小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー  cont_access.php?citi_cont_id=583294420&s
― 新着の感想 ―
[良い点] なかなか面白いです。 いつになったら魔剣の真の力が出てくるのか……と思いつつ楽しんでいます。 [気になる点] メイシ―の言葉は、大阪弁? もし、そうだったらと言うことで書いておきます。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ