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【第115話:突入】

 魔法陣を前に皆で頷きあい、タイミングを合わせて一斉に飛び乗った。


 すると、五人同時にのってもかなり余裕のある大きな魔法陣が、徐々に輝きを増していき、やがて目を覆うほどの強さになっていった。


「いよいよか……っ!? 魔力が……」


 魔法陣が輝きだし、いよいよかと思った瞬間だった。

 大した量では無いが、自分の中から無理やり魔力を抜き取られるような、不快な感覚に襲われた。


「これ……ボクたち自身の魔力を使って起動してるみたい……」


「なんや、この魔力を吸われる感覚気持ち悪いわ……」


 若干の不快な感覚に皆顔を歪めながらも、油断しないように注意を払っていると、一瞬身体が浮くような感覚がした次の瞬間には、目の前の景色は変わっていた。


「ここが……」


 転移したそこは、古びた神殿のような建物が奥に見える大きな広場だった。

 その広場に敵の姿を求めて視線を中央に向けたのだが……、


「きゃぁぁぁ!?」


 そこにあったのは強い魔物の姿ではなく、おびただしい数の死体が散乱した光景だった。


「ば、馬鹿な。僕たちの前にあいつらが……」


「先を越されていたようだが、全滅したのか?」


 ササキとシンドウの会話を聞いて、ようやく気付いた。

 オレたちを襲撃してきた者たちと同じ、黒装束を纏っていたであろう衣服の残骸が散乱していることに。


 逆に言えば、一瞬気付くことが出来ないほど、悲惨な状況だったのだ。


「こいつら、聖王国暗部の奴らか……」


 この迷宮にも向かっているとは思っていたが、まさかオレたちよりも先に辿り着いているとは思いもしなかった。

 こちらはユイナを含めて三人が光魔法を使う事ができ、それはもう圧倒的な速度で迷宮を攻略してここまで辿り着いたのだから。


「どうやってオレたちより早く……」


 しかし、あまりの予想外な状況に固まるオレたちに向かって檄が飛んだ。


「トリスっち! 他の皆も! 驚く気持ちはわかるけど、まずは周囲の警戒や! 状況が把握できるまでは絶対に油断はなしやで!」


 まったく、ここぞという時にはいつもメイシーに教えられる。

 こんな状況だからこそしっかりしなければ。


「あ、あぁ! すまない! メイシー!」


「そうだね! 僕としたことが……碧! とりあえず防御魔法を展開しておこう!」


「わかった!」


 オレは魔剣を引き抜き構えると、まだ立ち直りきれていないユイナの元へと駆け寄った。


「あ、えっとえっと……」


「大丈夫か? ユイナ? 慌てなくていい。落ち着くんだ」


「トリスくん……う、うん。そうだね。覚悟は決めていたつもりでも、実際にこういう光景を見ちゃうと……」


「平和な世界から来たんだ。仕方ないさ。大丈夫か?」


「う、うん。もうだいぶん落ち着いてきたから大丈夫。それより今は、周りの警戒だったね」


「そうだな。まずはこの状況がどういう事なのか把握しなければ」


 そう言って周りを見回してみたが、生きている者、動く者の姿は全く見当たらなかった。

 絶対にこの凄惨な光景を作り出した奴がいるはずなのだが……。


 二人で周りを警戒していると、今にも倒れそうななユイナが、さらに表情を青ざめながら話しかけてきた。


「トリスくん、な、何だか凄く嫌な気を感じる……」


「嫌な気? 魔力ではなく?」


「あ、魔力……なのかな? わかんないけど、とにかくあの神殿の方から、凄く嫌なものを感じるの……」


 ユイナが指をさした神殿に注意を向けた瞬間だった。

 その神殿から、今度は何かの爆発音のような音が響いてきた。


「きゃぁ!?」


「なっ!? いったいなんやねん!」


 これは明らかに戦闘音だ!

 まだ誰かが迷宮の主と戦っているのだろうか。


 皆驚き、警戒しつつ見守っていると、その音は更に激しさを増していき、そして……そいつは現れた。


「おいおい。いったいアレは何なんだよ……。この世界に来て色んな魔物と戦って来たけど、ちょっと格が違う感じがするぞ!」


 二足歩行の歪な姿の黒い魔物。

 大きな翼を持ち、背中からは突起物が何本も生え、とてもまともな生物でないのは確かだ。


 いや、そういう問題じゃない。

 オレたち三人にはもうその正体はわかっていた。


「碧! あいつが相当ヤバイぞ! おまけに鑑定も通らない!」


「わかってるよ進! それより魔力の質が!」


 ササキとシンドウトが動揺している姿を始めてみたが、それも仕方ないだろう。

 だって二人は(・・・)アレと遭遇するのは初めてなのだから……。


 そう。そこにいたのは……。


「ど、どうしてこんな所に魔族が!?」


 一瞬、暗部がなっていた劣化魔族のような存在かとも思ったが、何度も戦ったからこそわかる。


 アレはまがい物なんかじゃない。

 正真正銘、本物の魔族だ!!


「ま、魔族だって!? そ、そうか。それで召喚者特有の魔力を感じるのか!?」


「先に話を聞いていなければパニックを起こしていたかもしれない……魔族とはここまでのものなのか」


 しかし、問題なのは魔族が現れた事ではない。


 暗部の者たちの死体がこれほど散乱しているのだ。

 聖王国の管理する召喚者がここにいてもおかしい話ではないし、迷宮の主が強敵なら、召喚者が傷つき、サイゴウの時のように暴走して理性を失って完全な魔族化することだってあり得る話だ。


 だけど……。


「な、なぁ……。魔族は初めてやないし、戦う心の準備もあったんやけど……。なんで……なんで、その魔族があんなにボロボロにされてるねん!!」


 メイシーが叫んだように、あの驚異的な強さを誇る魔族が、よく見れば既に満身創痍の状態のように見えるのだ。

 瘴気修復も行っているようだが、それでも回復が追い付いていない。


「め、メイシーさん! あれを!?」


 ユイナの指さしたのは神殿……いや、神殿の横に現れた見覚えのあるモノだった。


 何も無いはずのそこに見えたのは、空間に入った大きな亀裂だった。


**************************************

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・まず一つ目

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・続いて二つ目

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こちらは既に主要サイトで予約も始まっておりますので、宜しくお願いいたします<(_ _)>


・そして三つ目

今日5/25で、こげ丸がラノベ作家になって一周年です! めでたい♪

活動報告を久しぶりに書いたので、良かったら読んで下さいませ!


※最近呪いの魔剣が更新できておりませんが、こちらの作品は完結まで頑張って

書き続けますので、どうかこれからもご愛読よろしくお願いいたします。

**************************************

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