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【第109話:敵の敵】

 ダンジョンの床にあいた大きな穴から吹き上がる風は、その勢いを徐々に強めていた。


「いったい今度は何だって言うんだ……」


 オレは風の吹きあがる穴とユイナの間に移動すると、魔剣を構え、何が起こっても対応できるように身構える。

 メイシーも収納していた魔球ドンナーを取り出し、オレの斜め後ろから経過を見守っていた。


「探知に引っかかったよ! たぶん二体くる!」


 すると、ユイナが探知の技能を使ってくれていたようで、そう教えてくれた。


「数が少ないのはありがたいが、この風はいったい……」


「高位の魔法を使う魔物か。あるいは……人やな」


 そう告げるメイシーの言葉に、オレは更に警戒を一段階引き上げる。

 魔物でこれほどの魔法を使うとなれば、少なくともBランク上位になるだろうし、人でこれほどの魔法となれば、第三位階の魔法を扱える奴という事になるだろう。


 どちらにしても強敵だという事に間違いはない。


 そう思ったのだが、それはどうやら杞憂に終わったようだ。


「あれ? 碧~、この気配……?」


「あぁ、そのようだ。でも、進。どうやら警戒させてしまっているようだぞ。凄い魔力の高鳴りを感じる」


 そんな会話が風の音に混じって聞こえてきたのだ。


 この声は聞き覚えがある。

 たしか先日、冒険者ギルドで会った……そうだ。ユイナと同じ召喚者で、追放された二人組。


「え? 新藤くんと、佐々木くん?」


 ユイナがそう呟いたと同時に、穴から風と一緒に飛び出す二つの影。

 やはり間違いない。召喚者のシンドウとササキだった。


「やぁ! 新垣さん、警戒させちゃったみたいで悪いね~」


「……争うつもりはない。すまないな」


 二人がそう言って話しかけてきた時には、あれだけ吹き荒れていた風はすっかり止んでいた。

 前にユイナに聞いたが、確か風属性の第三位階の魔法で、風に乗って空を飛んで移動できるのだとか。


 それにしても、この狭い洞窟内でそんな大魔法を平然と使うという事は、第三位階の魔法であっても、完全に制御しきっている証拠でもる。

 やはり、かなりの実力者のようだ。


「争うつもりは無いというのは、信じてもいいんだな?」


 オレは魔剣を鞘に収めながら、念のためにもう一度確認する。

 まぁ裏切るつもりなら嘘を吐くだろうから、あまり意味のない質問かもしれないが。


 だけど、何気なく尋ねたその問いに、


「もちろんさ♪ と言うかさぁ……ちょっと脱出するまで協力しない?」


 シンドウは予想外の提案を寄こしてきた。


「おい……進」


「いや、怒るなよ碧~。だってさぁ、もう二日目だぜ? 食料はまだたっぷりあるけど、まずはお日様拝みたいじゃん?」


「……確かに、ちょっと手詰まりだけど……」


 どうやら彼ら二人は、オレ達よりも先にこの迷宮のおかしな状況に出くわしてしまっていたようだ。


「んん? なんやなんや? 自分ら二人も、この迷宮の変な現象に巻き込まれて、階段探してるって感じか~?」


「お? かわいいドワーフのお姉さん、よくわかってるね。って事は、そっちももしかして絶賛迷子?」


「まぁうちらは、さっき階段が無くなるっちゅう現象に出くわした所で、まだ迷子もなにもないけどな~」


「……迷子って言うと道に迷ってるみたいに聞こえるだろ。階段が消えてしまっているから上階に戻れないだけだ」


 あれ? もしかして……変異種倒したのは不味かったのか?

 変異種を上手く使えば、階段が無くても上の階に行けたんじゃ……?


 そう思い至り、一瞬冷や汗をかいたのだが、それもまた杞憂だったようだ。


「もしかしてだが……蟻の魔物の変異種の後をつけてたのか?」


「最初はそうしてたんだけど、奴らここより上の階には穴を掘らないんだよね~」


「これは推測だが、奴ら下層に誘ってるように思える」


 詳しく話を聞いてみると、明らかに誘うように、何度も目の前で下層に誘うような穴をあけて登場したそうだ。


「俺達が飛べなかったら、こうやって戻る事も出来なかっただろうしね~」


「う……確かに、手詰まりの状態で他の階に行ける穴が出来たら、ボクなら誘いにのっちゃいそう……」


 こればかりはオレもユイナの事は言えないな。

 彼らが現れなかったら、オレもこの穴から飛び降りて、下層に移動しようと提案していたかもしれない。


「それで、どうする? こっちとしては脱出を優先したいし、それに敵の敵は味方って感じでもあるでしょ?」


「俺達は、既に聖王国の奴らと迷宮内で一戦交えている」


「えぇぇ!? もう本田くんたちが迷宮に!?」


 ホンダというのは、この二人が襲った召喚者の中でリーダー格の男か。

 ソラルの街で暗躍していたヤシロは別格な気がするが、それでもあのユウマよりも高い実力者となると、相当厄介そうだ。


「いや。あれからこっちの掴んだ情報だと……」


「進! それ以上話すのは、協力体制を結ぶことになってからにしよう」


「ま、それもそうか。という訳で、新垣さん、どうする?」


「う……と、トリスくん、メイシーさん、どうしよう……?」


 突然話を振られて、どうすれば良いかわからないユイナが、オレとメイシーに縋ってきたが、確実にオレたちの知らない情報を持っていそうだし、この際一時的にでも協力体制をとってもいいのではないかと思い始めていた。


「ん~? その協力っちゅうのは、どこまでや?」


「そうだね。まずは脱出に向けて、お互い出来る範囲で協力すること」


「出来る範囲でね~。中々正直やんか。それで?」


「あとは、差支えない範囲で情報交換といかない? 俺達って追われる身だし、二人だけだから、情報が偏っててさぁ。返り討ちにした追手から聞き出すぐらいしかできなくて」


 そう言ってニヤリと笑うシンドウ。

 ユイナと違って、きっとその追手に対しても手ぬるい対応はしていないのだろう。

 やっぱりこいつは油断できないが、言っている事は本当の事に思えた。


「へぇ~。ユイナっちと違って甘ちゃんじゃないっちゅうわけか」


「だね~。しかし、新垣さんみたいな甘い子が生き残っているなんて、そっちの二人は相当優秀なんだろうね~」


「うぅ……言い返したいけど、二人が褒められて嬉しいような複雑な……」


「いや。ユイナっち、そこは怒らんと……」


「ははは。新垣さんたち面白いね! それで、どうかな? あとは聖王国の奴らに襲撃されたら返り討ちぐらいは協力してって感じでどう?」


「ん~? トリスっち、どうする? うちはこんな状況やし、お互いメリットのある話やから、受けてみるのも手やと思うけど……」


 と、そこで言葉を切り「こういうのはリーダーが決めなあかんで」とオレに振ってきた。


「そうだな……」


 この二人は信用は出来ないが、お互いにメリットのあるうちは裏切らない相手に思える。

 聖王国の奴らと敵対しているのも間違いない。


 それに……今は少しでも情報が欲しいし、この状況を切り抜けられる可能性があがるのなら、少しでも上げておきたい。


「そうだな。あとで揉めないようにもう少し詰めたいが……脱出までよろしく頼む」


 と言って、オレは右手を差し出した。


「良し! そう来なくっちゃ!」


 こうしてオレ達は、シンドウ、ササキの二人の召喚者と、迷宮を脱出するまで手を組むことになったのだった。


******************************

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ちゃんと発売されますので、もう暫くお待ちくださいませ<(_ _")>

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[良い点] いつも更新ありがとうございます。ストーリーが洗練されていてとても面白いです。
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