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Dea occisio ーFlamma florumー  作者: つつみ
Ara Rinnirea Kin(癒都白塔)
99/125

『Sub velo turpem』

天使同様、贋者のリンニレースの表情はピッタリと貼り付けられたかの様な微笑みだった。

「………………。」

吊り上げた唇を一つも動かさないリンニレースの笑みは、却って不気味にすら見えた。天使の正体を知った復讐者が、彼女を強く睨む。



「無辜の人間を………巫山戯(ふざけ)た事をするなんて…」

ぽつりと呟いた彼が黒剣を取り出す。

「……………。」リンニレースがすぅ、と右手を上げ一行の方を指差すと、彼女に侍る天使達が杖を鋭い光の槍に変えて襲い掛かって来た。


「!!」向かって来た天使達を相手にユイルが素早く立ち回り、復讐者達を庇う様に立ち塞がって素早い一撃を喰らわせる。

ユイルの一挙一投足が天使の急所を見事に掴み、彼等の()を粉砕する。




「言い忘れてた事が!!あるんですけど、っ、此の天使達は!()があって、其処を何とかすれば倒せます、っ!!!!」

咄嗟の行動の中でユイルが話した内容は、天使の弱点。

合流する迄の間で天使達と戦う内に、レミエとユイルの二人が気付いた事だった。


「成程、ちゃんと核を狙えば少ない力でも倒せたのですね…オディム」

「よっしゃ!!」

エインの言葉に合わせてオディムが爆炎瓶を天使達へ投げ付ける。

派手な音と共に天使達に被弾し、胸の中の核がはっきりと露出される。

「…、やっぱり。ペールアの炎の力を元に作ったのならちゃんと当てればダメージを与えられるのではないかと……」

そして露出した核部分を正確に撃ち抜き、天使達を討伐する。






「おい!!サフィーも投げろって!!!」

「えっ、あっ、は…はい!!」

オディムからせっつかれてサフィーも手持ちの爆炎瓶を投げ付けた。

オディムより投擲精度がある筈も無いので幾つかは外してしまったものの、サフィーが投げた瓶は複数の天使を巻き込んで被弾した。

「おっりゃーっ」

同時に被弾し核を露出させた天使達の核を、今度はエムオルが叩き割る。

「ふっふーん、エムだけ指をくわえて、見てるだけなんてさせないんだからね」

ドヤァァァ!!とドヤ顔らしき表情を浮かべているであろうエムオルに構わず、「競うつもりならそんな事してる暇は無いですよ」とエインは天使の核を撃ち抜き続けていた。









































「復讐者さん」

ユイルやエイン達がリンニレースに侍っていた天使達を相手に取っている所、レミエが復讐者の近くに駆け寄った。

「私と戦いましょう、復讐者さん」

彼女は杖をぐっと強く握り締めて、そして自らの意思で姿を変える。

彼女(贋リンニレース)の傍に居る残りの天使は私が何とかします。天使達の気が逸れている間に貴方が彼女を相手にして下さい。ーー私が元の姿に戻る迄の間だけ、お願いします」

そう告げると同時に、復讐者の手に"小さな刃の様な何か"を握らせる。

「?」

()()は己の身に降り掛かる急激な変化を無効化出来る護りです。…急だったので、一回しか無効化出来ませんが………」

レミエは申し訳無さげに眉を下げた。

「…。いや、有り難う、残りの天使は任せる」

「はい。…どうか、どうか私が元の姿に戻る迄、耐えて下さい」

互いの武運を祈った後、其々の目的の為に行動を移した。












































ーー復讐者が贋のリンニレースの元へ向かう前にレミエが牽制の水球を彼女へ向けて撃ち出す。

「ーー……、」びくっ、と身を竦ませ僅かに後ろへ退いた彼女の動きに反応する様に、天使はレミエ目掛けて飛び掛って来る。

(来た!!)

レミエは素早く後ろへ移り、今度は天使達へ向けて水球を撃つ。

『ーー。』そんなもの、と言わんばかりに天使達は杖で水球をパァンと弾いた。

「……掛かりましたね」

レミエの不敵な微笑みが三体の天使達へ向けられた。

















『!?』

パン、と弾けた水球から桜の花弁の様に小さな刃が複数現れ、天使達の顔面に傷を付けた。

『くっ…』零に近しい距離から放たれる複数の刃に、流石の天使達も対処しきれず顔面に喰らう。

失明までは狙えなかったものの、其の色の白い顔にすっと複数の赤い線が入れられた。



「残念。手を緩ませはしなさそうでしたから、物理的に何とか出来ればと思いましたが…」

レミエの言葉に天使達はにこりと微笑みを崩さず、皆同じ言葉をズレの一つも無く語る。

『俺達は天使。リナを守る為に存在しているんだ。君の攻撃なんかで目を失ってなるものか』

穏やかな声音、優美な微笑み。震える心を宥める筈の其の振る舞いは此の場に於いては単に気味が悪いとしか言えない。

其れ等が却って天使達の不気味さを引き立てていた。




「……………。」



奥の方で贋者のリンニレースが薄っすらと微笑んでいる。









































「掃討、終わりました。加勢しに行きましょうか」

一方、エイン達は大多数の天使達の掃討を終え、復讐者の加勢へ向かおうと動いていた。

「…。そうですね、きっと復讐者さんだけだと……」

ユイルが全ての言葉を言い切ろうとする前に、ーー突然、床から白い触手の様なものが複数生える。


「!!?」

其の場に居た一行全員が、突然の出来事に驚く。

そして其の触手の様なものはーー



「!!くっ」

「うわあぁっ!!?」

ーーいきなりエイン達へ向かって振り落とされる。エインとユイルは直ぐに回避し、オディムも慌てながらもギリギリで避けた。

「あっ!おい!!う、上!!!」

「えっ!?」



「!!?」

…然し大きな音と共にエイン達を囲んだ触手らしきものはサフィーとエムオルを絡め取ってしまった。

「きゃああっ!!」

「う……うわあーっ」

絡め取られた二人は、高く高く、上の方へ引き上げられる。

「二人共っっ!!!!」

ユイルが手を伸ばしても届く訳が無く、空かさずエインが狙撃する。…然し触手の様なものはエインの狙撃など痛くも痒くも無さそうな様子で、全く動きを止めてはくれない。









































「いやぁ!!離して!!!」

サフィーもエムオルも必死に抵抗をするが、白い触手の様なものはびくともしない。

「あっ…ああー、これがウワサの、しょくしゅプレイというやつかーっ」

場にそぐわない事を言ってはいるが、エムオルもどうやら心中穏やかではないらしい。其の小さな身体を必死に動かしながらサフィー同様必死の抵抗をするが、矢張り触手の様なものは全く動きを変えない。

…すると、触手の様なものは突然二人の上半身と下半身を別の触手同士でがっしりと掴み、

















ギチギチギチィ………!!

















二人の身体を逆の方向へ引き始めた。

















「うあああああああっ!!!」

「ああ、あああ、いた、いた…い」

ギチギチ、と締め付けられる音と身体を引き伸ばされる感覚と痛みが二人を苦しめる。

「痛……い…………!!」

まるで戯れで始められた綱引きの様に身体を引っ張られ、力が篭もる度ギチギチと締め付けが強くなる。

「あ…ぁあ……!!ああぁ…………!!!!」

ミシミシと骨が軋む音がサフィーとエムオルを更に苦しめてゆく。

ゆっくりと少しずつ、引っ張られてゆく中でサフィーの衣服が少し破けた。

「い…いや………ぁ、痛……やめ、て…………!!」

あまりの苦痛にサフィーの赤紫の瞳は涙が滲み、一筋が伝う。

玩具を壊そうとする子供の気紛れの様に、ブチリと其の身が引き千切られようとしていた。











































「ーーっ!!」

エインとユイル以外に形勢の変化に逸早く気付いたのはレミエ其の人だった。

彼女がさっと上を見上げるとサフィーとエムオルが触手の様なものによって今にも引き千切られようとしているではないか!!

(復讐者さん…ごめんなさいっ!)

ーー…復讐者が相手をしている贋者のリンニレースの事も気になるが、一番にあの二人を助けるべきだ、と彼女は判断し颯爽飛び込んでいった。

(早く……早く助けなければ)

ーー其の瞳に、焦りと小さな可能性を宿しながら。

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