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Dea occisio ーFlamma florumー  作者: つつみ
Ara Rinnirea Kin(癒都白塔)
96/125

『'Et' sanitas? Pauper?』

ーー回廊。先程の意識の水底より浮上し復讐者は染み付く違和感を拭う為に(かつ)て癒都の主であった女神から、女神全体への思考を張り巡らせる。

















リンニレース。

















彼女達の間で盛り上がった時、付けられた名が持った意味は「繊細なる癒し女(いやしめ)

但し彼女は名に込められた其の尊称を卑し(いやしめ)を彷彿させる、と云う理由からあまり呼ばれたがらなかったという。



ーー…復讐者が知る限りの彼女は。

物分りのある者ながら棲み分けもせずに公式と並べ、直ぐ気を病み、「はゎ」「ひぃ」「きゃー♡」「ふふふ」なんてふわふわとした言葉を取り出す良くも悪くもぼんやりした人だと感じていた。


只其れだけなら割とどうでも良いのだが、問題があったのはそういう事だけで無かったからだった。親しい仲間と一緒に本人に見える所で本人の悪口を叩き合いふふふー♡としたり、露骨に攻撃的な顔を見せたり、気に病んだ振りして徹底的に攻撃してきた、という所なのである。


詰まる所彼女(■■)とは弱者の振りをして無害な奴の首すら斬り落とす、そういう部類の人間だった。

そして有り付けるものならば貪欲に有り付いた。









卑し女、と見ればまあそういう本性本質が当て嵌まらなくも無いし皮肉でもあるな、とぼんやり思った。

寧ろ彼女達全体に言えそうな事で、其の強欲さは清々しくも思える()()()()()でもあった。


()()()()()ーー彼女達は人間らしい生き物なのだ。

あらゆる負債、あらゆる汚辱、其れ等を見事に煮詰めて泥よりも悍ましい激臭を放つ、毒よりも凄まじい性質。

話題の対象を変えるが、シーフォーンだけで世界を侵蝕出来る程の性質だった。よりによって同等、もしかしたら其れ以上のデインソピアまでもが女神として、そして二人程では無くともアンクォアやリンニレース等も彼女達と並んだ。



…そして、異例の存在、ペールア。

















彼女に至っては例外中の例外であったのだ。

本来なら「シーフォーンの追従者」で留まっていた筈の、紅蓮の魔女ペールア。

何らかの要素が発露した事で内包されていた性質がもっと悪化し、露見した。









何故、単なる追従者でしか無かった筈の彼女が女神へ昇華してしまったのだろうか。


蝶や蛾の羽化の様に、夜闇に濡れて、本質を歪められていた。

夜明け頃に魔女は女神へ変わり果ててしまった。最早翅は紅蓮の炎、髪も燃ゆる赤波。

慕うべき愛する女達を殺された積年の恨みが彼女を突き動かす力、

ーー(シーフォーン)の為なら投げ出した命を、恨みの為に消費する。



きっと奴はより良からぬ事を考えているだろう。邂逅時に彼女から発せられた禍々しさが物語っている。









































(もしも…………)

今歩く此の回廊の中で、思い返した天使達の存在。もしもペールアの意思が入り込んでの上であるとするなら、恐らくペールアはあらゆる生死を掌握せんと企てているだろう。

其れも冗談なんかでは無く、全くの本気で。




全て敬愛するシーフォーンの為に、である。






命が行き着き、尽きるのは誰にでもある事だ。

エイン共々ニイスにより不可逆の加護を受け不老と長命になった身ではあるが、死ぬ時は死ぬ。

女神もまた殺されれば死ぬし、自殺すれば基本的に蘇る事は無い。

……ペールアの薄暗い欲情が垣間見えた気がした。


あの魔女、既存の命を搾り取ろうとしているのだろう。


































ーー兎も角彼女の望んでいる事を実現させてはいけない。

其の最もたる一歩が白塔と焔の花、そして花の護り手として創り出された贋者達であるとするのならば、

騎兵や天使、教団であるとするのならば、

止めなければならない。全て破壊してでも第五の女神の計画を頓挫させなければならない。

此の先にリンニレースの贋者が居るーー

星の乙女(■■■■)も、デインソピアも、アンクォアも、ペールアによって創り出された贋者は全員再殺した。残る贋者はリンニレースのみだ。



そして女神ペールアと、…最悪の場合彼女の手により再び蘇ったシーフォーンとも、戦わねばならない。


熱愛と暴走の女神が蘇る前に、ペールアを殺せ。

例え偽物であっても立ち塞がるのならば何度でも殺す。

リンニレース、

アンクォア、

デインソピア。

彼女達の狂えるソフィアはもう世界の許容で済まされやしない。元々世を揺蕩っていた、澄んだる(ぜん)を愚かにも魔性の毒(あいよくのさが)で濁らせ穢した代償は大きい。

多くに孕み過ぎた欲を、胎の中で愛するだけの彼女達を、世界は許しはしなくなったのだから。

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