『Rugiet ーRosー』
エインよりも早く、天使が力を行使し展開する。
『愛で満たしてあげよう』
両手を広げると同時に、頭上に巨大な光輪が現れる。
射光が十字となって刺し穿つ為の愛の光を形成した。
『神の愛で導いてあげよう!熾天博愛!!』
其の言葉に呼応する様に輝く十字はエイン達の心臓を狙う。
「くそっ…サフィー!!爆炎瓶!!!」
「!!オディムっ!!!」オディムの掛け声に合わせてサフィーは自分の持っている爆炎瓶をオディムに投げ渡す。
「いっけえええええ!!!!!」咄嗟に瓶の安全式を解除して天使へ投げ付ける。ドカアアアン!!と大きな爆音が響き渡り天使に確実に命中した。
…だが。
「ああっ!!」
『物騒なプレゼントだね…君達の様な子供には似合わないよ。さあ、受け取って』
直撃させた筈の爆炎瓶の内二つは天使の手に取られてしまい、そしてお洒落なラッピングを施した寄贈箱に変えられてしまう。
そして其の箱をオディムとサフィーの二人目掛けて投げ返す。
「げっ」ゆったりとした軌道を経て二人の所へ投げ落ちてくる爆炎瓶だったものを、サフィーが咄嗟に叩き斬る。
「何してるんですか!!」
サフィーの声にはっと携えた短剣を取ると、何時でも来いと言わんばかりの戦闘態勢を取った。
「それで!!!箱は!!?」
「箱はーーえっ?」
叩き落とした寄贈箱の中身が見えた時、二人はぽかんと呆気に取られてしまった。ーー箱の中身はあの爆炎瓶でも他の危険物でも無く、どう見ても唯のプレゼントらしかった。
ーー…少年が喜びそうな模型、少女が喜びそうな少女向けの化粧品。
「……………………」二人は呆然とするも、あの胡散臭そうでやばそうな天使が投げ付けてきた物だ、迂闊に手に取るべきでは無いと警戒する。
「ふたりとも、しっ。おにーさんの側にいてあげてね」
二人の様子を見かねてエムオルが勇み出て、そして天使に向かって飛び掛かる。
『君にも愛に溢れた素敵なプレゼントを…』
そうエムオルに向かって言うと、片手から先程のものと同じ寄贈箱を作り出しエムオルへふわりと投げ飛ばす。
「そんなもの!!」ーー復讐者を殺しておいて、馬鹿な事を。エムオルは多節棍で其れを叩き落とす。
エムオルの連撃は天使を何度も打ちのめすが、天使はまるでびくともしない。
「えやああああああああ!!!!」
エムオルは其れでも叩く、叩く、叩きのめす。
『…………………………………くっ』
エムオルの連撃が作り出す圧に耐え切れず、天使は身体を軽く曲げる。手に持っていた杖の様な物でエムオルを払い除けたが、彼に張られていたであろう薄い膜の様な何かに小さく罅が入っていた。
「!!!!」
エインが其の罅に気が付き、天使目掛けて銃を撃つ。
撃ち放った二発の銃弾が、天使の身体を直撃した。




