『Memoria spumam』
復讐者達がレミエとユイルを助ける為に塔を登ってゆく最中、辺りを漂っている奇妙な球の様なものについて関心を向ける。
「復讐者、あれは何でしょうね?」
…球は少しでも伸ばせば手に触れられる程の高さのもあれば、明らかに高過ぎて届かないものもある。
何より大小様々な大きさが彼方此方に浮いており、更に興味を引いていた。
「まるで…シャボン玉みたい…………」
サフィーがぼんやりと言い放った此の台詞が、宙に浮かぶ球の正体を言い当てているかの様で、成程な、と納得する。
「シャボン玉か…其れにしては随分怪しいが」
ふと復讐者が余所見をした瞬間、彼の指先が例のシャボン玉の1つに触れた。
ーー途端、其のシャボン玉は割れ、そして復讐者に何らかの記憶を見せた。
ーー……………………201■/11/18
…………Rヨ ○ ・駆無理ゅ雨
…………エo ヤ………グ■ …11月投稿数⑥
11月13日 21:07
最新 201■/11/18 11:13
「…………此れは……………………」
復讐者には何と無く見覚えのある様なものに思えたが、他の仲間は皆目見当もつかない。
1つ目が割れたのを切っ掛けに、連鎖的に数個のシャボン玉が割れる。
…………ドーナツが食べ……………………ドーナツ大好きな……ちゃんを描き…………………………………………
ついっ………声をかけてくれる方……………………描きまんた!
……………………のキャ………………………………………………………………ルです
ハロウィンに遅れてるなんて言わせない←
(別人のものか……………………?)ゆっくりと、別の誰かの情報に切り替わったのを復讐者とエインの二人は確かに見逃さなかった。そして最後の部分だけやけにはっきりと見えた事に何か意味があるのかと少し頭を悩ませる。
そして連鎖し割れていたシャボン玉の最後の1つが破裂した。
ザア……ッと霞が掛かる様に復讐者達の前にシャボン玉が見せた記憶が映る。
■……201■/11 ■楡
雑■。 よろ■■お■いします
小生別 女ョオ性
コ…p■■■… ふzヰ■■
■フ■ ■栗鼠■タ
■のヲWwE……… ■■hォ…e・■茶……aミ■
全てと言うには朧げ過ぎて、完全な把握と認識は叶わない。
…が、其れが誰かの情報であるというのはハッキリと分かった。
そして復讐者は記憶の底に留め、絶対に忘れないある存在を思い出す。
「あの人物情報…………リンニレースのだな」
「!!!!!!!!」
復讐者の言葉に一行がぎょっとする。
「全容こそ見えんかったが名前と思われる所にあったあの字、リンニレースの名の由来になっている植物と同じじゃないか。女神達は自分が使っている名義を女神の名にしたんだ、エインも知ってるだろ」
「ええ、私も一応当時を知っていますからね…でも由来については知っていたのはシーフォーンとアンクォア位でした。まあ何と無く見てもはっきり分かってしまう位でしたから」
「あれ程安直で単細胞めいてるのは兎も角デインソピアのデインが奴の名義、ソピアは星の乙女の本当の名前に由来している。リンニレースは…複数の名義を掛け合せたって感じだ」
階段を上がりながら復讐者は話してゆく。
「じゃあ何でリンニレースって奴の情報だけ?」
「此の塔の一番上に居る贋物がリンニレースで確定したって事で良いんじゃないか」
オディムの疑問に答えた復讐者だが、何故か妙な感情を沸き立たせる。
(何故…レイヨナ、奴の人間だった頃の、■■■■の情報が真っ先に出て来たんだ…………?)
復讐者は「レイヨナ」について回想する。彼女、或いは彼。獅子を中心に狼や竜の特徴を併せ持った亜獣であり、女神達の共犯者で、追従者だった者ーー
復讐者が女神殺しを敢行するその数年程前に、自ら死を志願してきた。そして望みの通りに復讐者は殺した。
其の証拠としてレイヨナの亜獣の力を復讐者は報復の力の一つとして扱う事が出来て、何度も彼の窮地を救った。
半永久的な生と心を病んでも可怪しく無い程の凄惨な光景をまざまざと見詰め続けて、奴は確かに死を強く意識し強く望む様になったと、嘗て直接聞いていた。
でも、其れでも矢張り奴もクロルやアラロ、アユトヴィートやファロナーと同じ共犯者の一人で、そして追従者と云う「敵」である事は永遠に変わらなかった。
既に死んでも、である。
ーーだがリンニレースの贋者が此の塔のボスだったとして、レイヨナは何の関係がある?
やっていたものは他の奴等もやっていたし、二人のみを繋ぐ大きな要因は存在しているのか?
答えは否定だけ、レイヨナは今回の塔に何の関係も無い。
ペールアか、リンニレースの贋者による撹乱が目的なのだろう。
(此の程度じゃ一行規模で撹乱を招く事は無理だろう普通…)何がしたかったのだろうか?と思いながらも彼が最も気になったのは、辺りを浮かぶシャボン玉の様なもの。割れた所で過去の記憶が目の前に靄を伴って浮かび上がる。もしかしたら他のシャボン玉も同じものだったりするのだろうか。
「………だとしたら……………が…にしても……………………
」
復讐者がブツブツと考えながら呟いていると、ふわりと一つのシャボン玉が復讐者の所へ近付いてきた。
(…?)考え込んでいて気付いていない復讐者に代わって、其のシャボン玉に気付いたのはエインだった。
ーー少しだけ可怪しい。
「!!!…復讐者!!避けなさい!!!!!」
「!!?」
エインの叫んだ言葉に意識を引き戻され我に帰った復讐者の眼前に一つのシャボン玉が迫った瞬間、物凄い爆音を上げて其のシャボン玉は爆発した。
「あんちゃんっ!!!!!!!!」
彼等が螺旋階段を上がって進んでいた、僅か一瞬の間の事だった。




