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Dea occisio ーFlamma florumー  作者: つつみ
Ara Rinnirea Kin(癒都白塔)
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EXTRA-EPⅣ『Coram spiritibus clausula milibus』

ーー当日は世界の全てが奇妙で幽玄な雰囲気を漂わせていた。

此処、永世不可侵領域でも同じである。

シーツお化けやら南瓜提燈(ジャックランタン)の仮装をしている子供達がにこやかに走り、広場はハロウィン一色に染められていた。

また誰がやったのか、内装までハロウィンらしい仕様になっている所もある。


ツブ族が子供達に混ざって仮装をして愉快な盛り上げ役に徹しているし、見た目に反して長生きの種族が大人達から食べ物を徴収しては時に強奪までしているし、悪戯の天才とも謳われている種族らしく上手く大人達を嵌めていた。

幸い怪我人が今の所出ていないのは未だ良いとして……

































ーーそう言えば、と復讐者も思い出す。

女神は古い因習だと捨て去らなかったのか、万霊節及び万聖節前に行われるハロウィンについては何も取り留めなかったらしい。

女神を殺すまで力を付けている長い時間の中、身を隠しながら世界中を歩き回った事があるが、聖都辺りは賑やかなハロウィンの仮装者が笑顔でトリック・オア・トリート等と声を掛けていたりしていたものだ。



星都辺りでは「■■■■ちゃんの為に!!」とデインソピアが浮かれ放題していて仮想した■■■■と■の絵をババーンと星都中の彼方此方に貼り出したり他の都へ流していたらしいし、挙げ句の果てには痛々しい事此の上無い程度にど派手なハロウィン仮装を女神達もしていたらしい。

しかもシーフォーンとデインソピアに至っては描かれた■■■■と同じ仮装を星の乙女(■■■■)にもさせて南瓜型のパレードカーに乗せて見せびらかしてはあらゆる人間から奪えるものを兎に角簒奪していたらしい、とまで聞いた。









……微笑ましいものを見るのは嫌いじゃ無いのだが、如何せん自分にはあまりにも()()()()()()()()()()()()

(私には縁が無いな…)口の端を緩やかに吊り上げたものの、復讐者は外気を吸いに此の場を出てゆく。

















































ーー外気を吸いに外へ出た復讐者は、空を見上げてみた。

(…………空までハロウィン仕様になるのか此処は)

確かに辺りを見回すと何故か草原はオレンジ色に、南瓜や十字の墓標みたいな植物が彼方此方に「生えていて」、小高な丘の上の一本の樹は黒く、そしてぼんやり光る奇妙なものを実らせていた。

(なんだこれはほんとなんだこれは)現実では確実に有り得ない光景が復讐者を酷く困惑させていた。

…が、そんな彼を更に困らせる様に紫色の妙な霧が立ち込めて、辺りが見えなくなってしまった。

























立ち込めた霧に戸惑いを隠せない復讐者は、方向音痴になりそうになりつつも機関のある方向へ戻ろうとしていた。

『……………ですか……』突然、復讐者の耳元から薄っすらとした感じで女の声が聞こえる。

「?」復讐者は只でさえ戸惑いを隠せていないのに、突然の女の声に更に戸惑った。

ーー聞き覚えのある声だーー

彼は、薄っすらとした声の正体に何者なのか気が付いてしまった。ーーシーフォーンだ。奴は確かに殺した筈であるのに。









































『…あっはっは!!幽霊嫌いなんですかぁ?くっく、ふふふっ、知ってますぅ?ハロウィンって死者の日の前夜に行われるんですよぉ…』

「趣味が悪いな、で、何だ。復讐されたから復讐し返しにでも来たのかお前」

『私が怖くないんですか?………あなたにとって許せないこの私(シーフォーン)が!?』

シーフォーン?は仰々しい振る舞いを見せながら復讐者に問う。ーー端々に相手を馬鹿にした態度を織り交ぜながら。



「ほざけ、何を言っているんだ亡霊よ。お前は最早此の世には居ない。元よりお前達に対して恐れより怒りが勝っただけの事、恐れを持って復讐なんかしてないから全然怖くもないね」

あっけらかんとした態度で返されたからなのか、シーフォーン?は不機嫌そうな顔を浮かべる。


『でも私は何度だってあなたを苦しめてあげますよ。そういうの大好きですから。デインちゃんやリンさん、アンクォさんも引き連れてあなたを苦しめてあげます!!きゃはっ、きゃはははっ!!!』

「そんな事するなら7倍の復讐でもしてやるさ。魂の髄まで焼き切れて形すら残さない程やってやろうじゃあないか」

ーー負け惜しみも遠吠えもいい加減にしろ、と彼は圧を掛けた。

『ふん!!出来るものならやってーーギャッ!?』

シーフォーン?が全ての言葉を言い切ってしまう前に、復讐者が彼女の幻を両断してしまった。

『あ………あ…………………………』

断面が真っ黒なシーフォーン?の亡霊は、確かに幻であったらしい。ボワっと消えて、二度と現れなかった。









「………あーあ、なんて酷い。あんなにもお美しいシーフォーンさんを斬り伏せてしまうなんて」

シーフォーンの幻を断ち切った次に現れたのはあろう事かペールアだった。本物かどうかは兎も角、何故か彼女も魔女の仮装をしていた。流石紅蓮の魔女。


「ありゃ偽物だろう」

「そうですよ。偽物です。ハロウィンの時の境目の魔力で一時的にやったんです。()()()()()()()()()()()()()()()()()()ですからね」

詰まる所あのシーフォーン?はペールアの魔力で再現した存在らしい。酷い悪趣味なものだ。

「碌でも無いな」

復讐者はペールアを詰る。

「でも私は絶対に諦めません。今のは試みの段階に過ぎない」ペールアは思い詰めた表情で呟いた。

何かを企てているらしく、どうもあのシーフォーン?では彼女的には納得がいかなかったらしい。




ーー…霧が晴れて気が付けば、先程とはまるで異なるイカれた空間。


「然し何なんだ、どうして敵対している我々がこんな所に」

復讐者は帰りたがって、出口を探す。

「……多分ハロウィンですから…何かしらあってそちらとこちらが一時的に繋がってしまったのでしょうね……………座標の分からない空間に貴方と私だけみたいですし」

ペールアの考察が巡る。

「は?巫山戯ているのか流石狂った女神」

「私これっぽっちも巫山戯ていないんですが!?貴方の方こそ巫山戯ているのでは!!?」ペールアは珍しく普通の状態で復讐者に対して反論した。

















ーーゆらり、とペールアが不気味な笑みを口元に浮かべながら立ち上がる。

「〜、復讐者………こんな所で巡り会う事になるとは思いませんでしたよ………………っふふ……復讐者ぁぁ…、許さない、貴様の事をブチ殺して………」

「……やっぱりか」予想していた通りだと復讐者が武器を構えた。…ところが。




「………………………やりたい所ではあるのですが、折角の行事を(一部からの要望あって)教団の方達と楽しんでいた訳ですし、生憎私も貴方をズタズタに殺せる武器を持っていません。焼き殺せなくは無いですが其れだと詰まらないですからね…」

ペールアは残念そうに振る舞った。

「おん?つまり私の事は殺さんと?」

「そうですそうです。…って、貴方の方は武器所持しておられるのですね。私もむざむざ殺されにやって来たつもりではありませんから今日位は停戦にしてあげます。だからお互いにハロウィンを楽しんでいきましょうね。はぁ………」

大きな溜息を吐いたもののペールアは楽しい日に殺し合って駄目にする気は無い、と意思表示をした。


「幸いな事だな、どういう風の吹き回しなのかさっぱりだ。だが今回はそちらの措置に感謝しよう。次はお互いに無いのだから」

「ええ、そうですよ。私は貴方を許さない。…次は癒都へ向かうのでしょう?私が作った可愛い仔達があなた方を迎えて下さる事でしょうね。早く其の首を、命を、私の所へ持って来て頂けませんかね」

















「残念だったな、私は死なん。仲間もだ。首と命を落とすのはお前さ」

ペールアの無容赦な言葉に同じく無容赦に返す復讐者。

そうしている内に先程と同じ紫色の霧がまた立ち込めてきて、両者をすっぽりと包み隠してゆく。

「私はお前に復讐する」

「私は貴方を殺します」

両者の声が重なった時が、霧の最も深い時ーー









































































「ーー………。」

見上げてみれば、一度見た空。

復讐者は無事に永世不可侵領域に戻っていた。

(あの女(ペールア)とまともな会話をしたのは何時振りだっただろうか)復讐者は殆ど覚えていない時の流れを少しだけ手繰り寄せた。


死者達の降りる日はどうも不可思議な事が起こるらしい。


「そういうのはどうでもいいんだ、奴が我々を殺すと決意しているし、我々だって奴を殺して復讐を果たすのだから」

とは言えあの女神がハロウィンを楽しんでるらしいのは意外だった。

(……色々思う所はあるが、私もあの喧騒の中に紛れてみるのも悪くないかもしれないな)

女神が意外な事に楽しんでいるのなら、自分も少しだけ紛れてみようかと思って、彼は賑やかなハロウィン広場となっている機関へと戻って行った。

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