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Dea occisio ーFlamma florumー  作者: つつみ
Marme Miwa Ogula(烈都白塔)
73/125

『Moles calor Collapsed ーⅠー』

贋者のアンクォアが大剣を一行へ向けて振り回す。

「避けろ!!」復讐者の掛け声で全員が飛び退き、最初の難を逃れる。

ーーが、アンクォアは一度回転を緩めたかと思うと、今度は大剣を地に刺して再びぐるりと振り回した。



斬り崩れて出来た瓦礫が跳ね上がり、飛び退いた一行目掛けて無数の大礫(おおつぶて)となり襲い掛かる。

「きゃあぁっ!!」サフィーの顔に一直線に飛んでくる一つを、エインの狙撃が弾き飛ばす。

「助かり…ました………」其の場でへたれたサフィーの隣にエインが立ち、アンクォアの動きを分析した。


「やってる事は回避出来る程の容易なものですけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()程の力を振るえるとは…」

何か特殊な力でも施されているのだろうか?と彼は考察する。









そして其れは復讐者も同感だった。

…アンクォアの贋者でありながら、彼女に匹敵する程の力を出し、単調ではあるもののアンクォアより行動にある種の思考や判断力を窺えるからだった。


本物のアンクォアならば力に全てを委ね、より単調に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と聞いている。

実際復讐者達も要因重なり早い決着が付けられたと言え聞いた通りの強さを目の当たりにしていた。



耐え抜けるものも繰り返す事によって一撃必殺の強さになるのがアンクォアの戦い方だが、目の前に居る、此の、贋者のアンクォアはオリジナルより思考パターンが進化している。

オリジナルに匹敵する力を持っているのなら、非常に質が悪い。

























ーー飛び退けば地を削り(れき)を飛ばし、近接に挑めば恐らくは剣圧を利用するだろう。

………一行の勝率が下がるのを静かに感じていた。何か、()()()()()()があれば。

















「対策がありませんねえ」

「そうだな、本物に匹敵していて本物より考えて行動するんだ、力量勝負では純粋に勝ち目が無いぞあれは」

復讐者とエインが肩を合わせて話し合う。

「エムオルをけし掛けては」

「行動の速さならエムオルは確かに上だな。エイン、狙撃で補佐しろ」

「了解」

話し終えた両者が左右に飛び移り展開する。




「エムオル」

エインの意を組んだのか、エムオルは小さく頷くと贋者のアンクォアに向かって飛び掛る。

「援護します」エインはエムオルを補佐する様に援護射撃を行った。









































「!!!!!」贋者のアンクォアはエムオルの攻撃を往なしながらエインの狙撃をも往なす。

…然し盾を持たないアンクォアが全弾を回避出来る筈も無く、彼女は咄嗟に剣を持たない腕で庇った。



「っ…」咄嗟の行動によって、数弾を受けてしまいアンクォアの腕が負傷してしまった。

そして其の腕に(ひび)が入り、僅かに欠片を落とした。

「入った!!」アンクォアの腕の変化を仲間達が見逃す筈も無く、変化に少しの希望を抱いた。

………が、其れでも贋者のアンクォアの振るう力は衰える事は無く、エムオルの攻撃を弾き飛ばし、エインの援護射撃も熱炎によって無効化してゆく。

「無効化かっ…!!」

エインが舌打つと当時に、背後から大きな水の奔流がアンクォア目掛けて飛んでゆく。

「はああっ…!!!!!」レミエの力がアンクォアの炎を打ち消そうと其の力を振るう。

そして其れを援護する様に、今度は復讐者がディーシャーの氷を生成してアンクォアの頭上から彼女目掛けて落とそうとする。






「!!!!!!」アンクォアの足元に鋭利な氷が刺さる。

然し其の氷は彼女の炎に溶かされ、水となって消えた。

「私の力でも消せない…!!やっぱりあの壁みたいに……!!?…っあ!?」

レミエが一瞬、見上げたアンクォアの頭上。

























復讐者が生成したディーシャーの氷塊がアンクォアの炎に当てられ、溶けてゆく。

そして溶けた氷塊が多くの水を生み出し、彼女の頭上にだけ降る雨となる。




「くうううっ………!!!!!!!」

水の奔流と、頭上の雨を受けてアンクォアの炎の力が弱まってゆく。

「苦しんでる…!」サフィーがアンクォアの様子を見計らって用意した投擲用のダガーナイフを投げ飛ばす。

オディムも負けじとアンクォアへ何かを投げ付けようとするが、ダガーナイフをうっかり持ち忘れてしまったのか仕方無く爆炎瓶を取り出してアンクォアへ勢い良く投げ付けた。

「うおおおおおおお喰らええええええ!!!!!!!!」

彼が投げ付けた爆炎瓶がアンクォアの前で爆発、想定の出力を超えてアンクォアの身体に大きな損傷を与えた。

「がっ…は!!」

其の身を捩らせたと同時に、エムオルが再び飛び掛かって剣を持つアンクォアの利き腕を打ち砕いた。


バキィィィィイン!!と折れるアンクォアの腕。

バラバラに砕けてぼとりと剣ごと落ちても、彼女は剣を拾い上げ、尚も立ち続ける。

暗い淀みを見せる瞳は、戦意を失ってはいなかった。




「せきわん、だ」

「利き腕を失っても残る方の腕で剣を持ち上げて戦おうとするとは…激烈と暴走、伊達では無いみたいですね」

エインは贋者でありながら本物並みの胆力を持った彼女にある意味感心した。

「でもさっきおにーさんがバンバンした腕、ひび入ったままだよー」

エムオルの指摘の通り、先程エインが狙撃し被弾させた腕には罅が入った儘であり、エムオルの攻撃を一度でも与えれば粉々に打ち砕けるだろう。


然し…………

























































「………グ、」




ーー贋者のアンクォアの様子が可怪しい。


まるで人形の様にぎこちない動きを振る舞い、がくりと項垂れ、かくんと可怪しな方向へ首が曲がる。

「…何のつもりだ」

アンクォアの妙な動きに、苛立ちと警戒とを織り交ぜた感情を向けるがーー









































ーー瞬間、彼女の全身に大きな罅が入り、其の罅から高熱度の炎が噴き出る。

ぴし、ぴし、と塗装が削げ落ちる様に身体が砕け、心臓部に見慣れない()の様なものを携えて崩れ掛けるアンクォアは叫ぶ。









『UGRRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』









アンクォアの獣めいた叫び声は彼女を中心に雲を晴れさせ、天を震わせた。

「いってえええええ!!!!!」

「何だ…………!!!?」

天響、彼女の叫びは一行の鼓膜を破る様に猛威を奮った。



「くう…っ」

ドロ…と耳から血が溢れかけた瞬間に、レミエが咄嗟に全員の耳を叫び声から守り抜いた。

「ああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーー……………」

アンクォアの叫び声が大人しくなると同時に、サフィーとエムオルが其の場で倒れ、他の者達が膝を付いた。


…辛うじて、鼓膜が破けるという事は無く済んだ。

















「エムオルとサフィーが…くっ……」

近くに居たオディムが咄嗟に確認するが、倒れた両者はどうやら失神している様だった。

復讐者達は一度、安堵する。









「AGAGAbbbBRaOgraVVVVMiBbVwAGGGGgbア゛ア゛、ア゛ァ゛ーーーーーーーー、ア゛!!」

…………恐らく、ペールアに与えられた何らかの力が放つ出力に、身体の方が耐え切れなくなり自壊現象を起こしたのだろう。

(贋者の星の乙女(■■■■)の時みたいだな)自壊と言えば、星都白塔での星の乙女(■■■■)戦の事を思い出す。









































そしてーー贋者のアンクォアは、自壊してゆく最中で無差別な破壊活動を始め出した。


最早其処には傀儡としても、擬似的な女神の形としても在らず、破壊衝動に突き動かされた化物だけが其処に在った。

「ア゛ーーーーーーーーーーーーーーー、ア゛ァ゛ーーーーーー、ア゛ア゛ア゛、ォ゛ア゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

白痴の呻き声を上げて、彼女は只管破壊活動を続ける。

其の壊れた瞳には復讐者達の姿など映りもしていなかった。


…其れでも、野放しにしてはならない。

此の壊れた贋者を破壊するのも、ペールアへ対する敵対と復讐だ。

逃れている者達に危害が及んではならない。


「失神者は置いておくんだ、動ける者は総員討伐を」

エインが復讐者の代わりに指揮をする。




「済まない、時間を稼いでくれ、皆」

復讐者は少し離れた位置から、黒剣に秘められた力を引き出す行動に出た。

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