『Exitium palma quae nomine illius』
「…………………。はあ?」
塔内部に侵入して早々、復讐者達一行は言葉を詰まらせた。
「何処にも道がありませんね」
エインが辺りを見回しても階上へ繋がる道という道が無い。
「仕掛けらしきものも無いですね…」
レミエの言葉の通り、道を開く為の仕掛けらしき物も無い。
「つまり行き止まりと言う事なのか」
一面を見回しても白い壁だけが在るだけであり、先行きは見えない。突如として行く手どころか先行きの全てすら閉ざされてしまった気分で、攻略開始からそう間も無くして希望が断たれた気がした。
(何かヒントみたいなものは………無いな)どんなに、徹底的に、見える所の全てを見ても違う所は全く見付けられない。
最早此処迄か、と諦めそうになる。
「くっそー!!何でこうなるんだよ!!!」
「むむむ、カベなんて、カベなんてー」オディムとエムオルの二人が辺りを囲む塔の白壁に苛立ちを覚えて、とうとうオディムは壁を蹴り飛ばした。
ーーピシリッ。
「おっ?」蹴り飛ばした所から何か罅の入った音が一瞬だけだが聞こえた。
「なに?」オディムの反応と、一瞬聞こえた音を復讐者とエインは逃さなかった。二人共何かに気付いたらしく、エインがエムオルに一つ頼む。
「エムオル、白壁に向けて武器を振るって下さい、力一杯にお願いします」
「おっ、けー」
エインに言われた通り、エムオルは手当り次第の白壁に向けて多節棍を振るうと、二人が想定した通り多節棍が直撃した部分の白壁が崩れ落ちた。
「あっ!道が見える!!!」サフィーが壁の向こう側に隠されていた道に気付いて、先行きが明瞭になった。
「壁の向こうに………嫌がらせも甚だしいですねぇ…」
レミエが嫌味を含めて此処には居ないペールアを遠回しに詰った。
「…いや、案外アンクォアの性格を模したつもりかもしれんよ」
「………、あ、確かに」
レミエは当時のアンクォアの性格を思い返す。
「激烈と暴走」は伊達では無く、流石といった所か。彼女は常に破壊的で暴力沙汰を好んだ。
流血や暴力、際限無しの加虐性故に其れ等を愛した。
デインソピアの攻撃性に近く、シーフォーンとはまたベクトルの違う直情的な攻撃性だった。
「呆れる」そんな彼女の性格をまるで反映したかの様な造りが目立つ烈都の白塔に、復讐者は呆れを見せる。
だが其れ程ペールアは四女神の性格を大切にしたいらしい。
(そっくりな贋者を作っておきながらぞんざいな扱いをしている癖にな)
彼の侮蔑からはペールアの価値観は理解出来ない、と物語っている様であった。
然し女神も彼の無念さを理解出来ないのと同じでもあるのだと、彼は心の何処かに思い捨てながら先へ一歩を踏み出してゆく。




