『Crustae incipit ad conflandum』
一行がフィリゼンに辿り着いた時、矢張り其の惨状を見て顔を顰め、眉を顰めた。
「相変わらず酷い有様だ」復讐者が淡々とした一言を放つも、現状は変わらない。崩れた瓦礫が折り重なって、商人ギルドで賑わっていた広場も凄惨な光景が広がるばかりであった。
「フィリゼンもこんなに………リナテレシアは、どうなってるのでしょう……………」
レミエが心配そうに訊ねた。
「聖都も星都も、揃ってあの有様だったんだ、此処もそうならリナテレシアも同じさ」
復讐者は錆びた空を見上げていた。
「…?何だ?」オディムが背後の方から感じる妙な熱気に思わず振り返ると、燃え上がる例の騎兵達が立っていた。
「うわぁ!!!あんちゃんが言ってた奴だろ!!あれ!!!!!!!!」
少年が指差す方のみならず、一行をぐるりと囲む様に複数体の騎兵が立っていた。
「不味い!!囲まれてしまいましたか…!!!復讐者、交戦しますか」
「向こうが動く迄何もするな!!構えろ!!警戒を怠るんじゃない!!!」
突如として訪れた危難に、一行は身を寄せ合いながら警戒をする。
其の内の一体が手に持った馬上槍を大きく振り被った。
「来るぞ!!」
復讐者の声に合わせて其の場に居る者全員が戦闘態勢を取った。
ーー直後、目の前に素早く黒い影が現れて、襲い掛かって来た一体の騎兵を薙ぎ払い飛ばした。
『!?』
一行は其の光景を確かに見て、そして驚いた。何処からともなく現れた騎兵が、何と襲い掛かって来た騎兵を撃退したのである。
思わぬ反撃を受けた騎兵は、其の場に転がり落ちて炎と共に消滅した。
「………?」復讐者は何と無く其の騎兵の姿に妙な既視感を覚えたが、騎兵は物言う事は無く、素早く崖上まで飛び上がってゆく。
其の後、崖の上に立つ一体の騎兵が何かしらの支持を出したのかーー警戒する一行を取り囲んていた残りの騎兵達は大人しく引き下がっていった。
(もしかして騎兵達の長………なのか?)
よく見ると其の騎兵の身体はゆっくりと溶け出していた。
引き下がった騎兵達と見比べてみても、身体が溶けているのはどうもその一体だけらしい。
其の溶け出している奇妙な騎兵は、立ち去る迄のほんの一瞬、僅かな刹那の間だけ復讐者の姿をはっきりと認識した様に見えた。
騎兵の謎の動きに更成る戸惑いを覚えた復讐者は、騎兵の正体について気掛かりに思ったものの、障害を取り払えた事を重視して廷の上に立つ烈都の白塔の攻略に進み征くのであった。




