『Diabolicus fugit in albis flores』
ーー場面は変わり、名も知れぬ辺境の雪原。
永世中立領域とは異なるものの、暗く静かな其処はまるで中立領域の様に穏やかだった。
雪が静々と降りゆく。
「ふーっ………ま、こんなもんか」
スノウルが何かしら用意し、今やっと終えたかの様な様子で振る舞っている。
「スノウルさぁん………ほんとにこれで良いんですか〜…」
ニルスィが心配そうに訊ねるが、スノウルは深く気にする事もせず何時もの様に答えた。
「良いんですよこれで」
そして彼女は呟く。
「奴等の共倒れを見物する事が出来ないのが惜しい所だけど、計画の為ならしゃーないもんね」
薄っすらと邪悪な微笑みを湛えて。
振り返ったスノウルが視線を送るさきは、大きな白い花。
「うえぇ…スノウルさぁぁん〜」ニルスィが寂しそうに振る舞うのに対し、スノウルは唯変わらずにはいはい見張りよろしく( ◜◡◝ )とだけ告げ、そして花の中へ足を踏み入れてゆく。
フワリと開いた花はスノウルを捕捉し、そして其の花弁を閉ざしてゆく。
内部にスノウルを閉じ込めて。
大きな白花がスノウルを内部に閉じ込めた後、蕾の様な形に変わり動きをピタリと止めて其の場に留まった。
「あぁ〜…………………………」
ニルスィは相変わらず寂しそうな様子だったが、彼女から頼まれた見張りの役目故に離れる事は決してしない。
(うう………ちゃんと完了したら、起きて下さいね…)
物言わぬ白花の表面を軽く撫でながら、ニルスィは祈った。
スノウルの目的が達成出来ます様に。其れだけでは無く…
退屈だなぁきっと、というニルスィの小さな呟きは曇天と白雪の中に消えていった。




