『Dea ignis candidi Diabolum』
「〜何で!!!!!!!!!!何で何で何で何で何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ドンッ!!と卓を強く叩く音がした。
「どうしてどうしてどうしてどうしてェェっ!!!?塔が二つも壊された!!!花は二つも枯らされた!!!!!!!!!!」
目を大きく見開いて唸りの様な息を吐く、紅蓮の様に赤い髪の女。
…女神ペールア・ラショー。
視界をチラつく赤は揺れて揺れて、宛ら別の生き物の様に部屋中に伸びてうねる。ーーそんな姿に錯覚しそうだった。
「ふぅぅぅーー……ふぅぅぅぅぅーー………!!…るさない……許さない…許さなイ………復讐者…………復讐者ぁぁぁ!!!!!」
怒りに全てを任せ、ペールアは辺りの物を破壊し尽くす。
「アアァァァァァァァ!!!!!!!!!!ムカつく!!!許せないムカつくムカツク!!!!!ふーっ………ふぅぅぅぅっ……!!」
そしてペールアは再び辺りの物へ手当り次第当たる。
「死ね!!!!!しね!!シネ!!シね!!しネ!!死ネ!!氏ね!!死ねェェェーッ!!!!!!!!!」
持っていた件で目の前の物を何度も刺して、刺して、刺して、刺して、刺し尽くして、壊す。
ーー文字通りの滅多刺しである。
「ふぅぅぅっ……ふぅぅぅぅぅぅぅっ……!!」ペールアはだらりと冷えた汗を一筋流して、少しばかり青褪めた顔で何処とも付かぬ場所を睨み付けた。
ーーちくり、と胸の奥に小さな痛みを感じて、彼女は其の場に座り込む。一筋の冷汗は軈て滝の様に彼女から溢れ、僅かばかりに青褪めた其の顔は更に青さを深める。
「…………………っくう…………!」
何を思ってなのか、口を閉じて息を止めた。胸の痛みはズグン、ズグンと重く苦しい痛みへ変わる。
「……!!!」ペールアは両手で胸を抑えた。…もしかしたら、あの時のものが未だ残っているのかもしれない。
「ーー〜っアハハハハハハハハハ!!!凄いの撮れちゃったwwwwww」
苦しむペールアの背後から浮ついて楽しげな声が聞こえた。
「〜これ、T■■t■e■とかに上げたらどうなると思う?炎上すっかな??www」
「…っ…性格の、悪い方ですね…、貴女は、リンさんの、追従…者………」
「リンさんの追従者?wwwいやいや馬鹿な事は言わないで下さいよ、"あんな死んだ奴"なんかの追従者って、草生えちゃうでしょw」
ペールアの背後で嘲笑っていた声の主は、あのスノウルだった。
彼女はペールアの錯乱の様子から今に至る迄の姿をスマートフォンに似た端末で撮影していたのだ。
女神の錯乱の姿を、彼女は酷く楽しそうに眺めて嗤ってはニヤニヤと浮ついた表情でペールアを見ている。
「な……ぜ…………、リンさんを、奴等に殺されたはずの、貴女が…こんな、事を………」
ペールアは苦しみながらもスノウルに問う。
「本来、なら……貴女も、私達と共……に………、復讐者達に………血の…粛清を……………………」
「血の粛清?」
対してスノウルはぽかんと呆気に取られた様子で、或いはきょとんとした様子でペールアを見て、
そしてスノウルは答える。
「ーー変な事言ってこれ以上笑わそうとしないでくれます?復讐者がリンニレースを殺した?勘違いも甚だしいね。……違うよ。"リンさんは私が殺したの"。スノーリーの最高の計画に邪魔になるのは目に見えて分かってたから」
今更、とでも言いたそうに然し淡々と彼女は話してゆく。
「私の目的に女神は要らない。ハッキリ言って不必要。女神達はスノ氏とは違ってたから先ずはあの四人をどうにかしなきゃいけなかった」
彼女の妙な淡白さは損なわれずに続く。
「ーーだからお前も邪魔。ペールア、お前も死んじまえ、死ね。でも復讐者達も要らない。だから共倒れしてくれる?」
「……な…にを……………………………」
「だからぁ、スノーリーの理想の為に〜ぃ、お前等と…復讐者共ぉ、両方共倒れして死ねって言ってるんですけどぉ」
倒れ込むペールアの傍に寄って、スノウルはしゃがみながら話している。
「もしかしてスノ氏の言葉が分からなかったですか〜?、と・も・だ・お・れ!!別の言い方だと相討ち!!!ペールアさん達と、復讐者達!!両方共がおじゃんになってくれたら其れでいいんです〜ってね、分かりまちゅか〜癇癪赤ちゃんのペ ー ル ア た ん ( ◜◡◝ )」
スノウルは苦しみの渦中にあるペールアを嘲笑って、戯けた態度で馬鹿にした。
「…ああ、でもこんな所で死なないで欲しいんだよね〜、だから、はいどーぞ」
…スノウルは立ち上がり、手に持っていた小瓶の蓋を開けてペールアに何か青色の液体を掛けた。
「……!?」ブシュウウ、とペールアの身体から湯気の様なものが出て、途端ペールアの苦しみは緩和してゆく。
「な……何を……………」
スノウルの妙に厭らしい笑みに一瞬だけ怖気を走らせたが、次のスノウルの言葉にペールアは己が感じた感覚を誤ってはいないと確信する事になる。
「だぁッてェ〜、こんな所でアンタに死なれちゃぁ、アンタと復讐者達との潰し合い殺し合いを楽しく見る事が出来なくなるじゃぁぁぁぁぁあん?????」
くひ♡と不気味な小笑いと共に、ペールアの狂気すら上回る気味の悪い笑顔で先の時間で起こり得るであろう、ペールアと復讐者の殺し合いについて歓喜と狂気と侮蔑と、あらゆる悍ましさを一つにした顔をスノウルは見せた。
ーー酸の海で死ね。
ーー殺し合って、潰し合って、皆死ね。
ペールアはスノウルが己を助けた理由に個人の恐ろしい思惑がある事を、悟られぬ様に戦慄した。




