表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dea occisio ーFlamma florumー  作者: つつみ
Re agnoscis(認識する現実)
53/125

『Quod fuerit restituere dignatus est puella』

………私がまだずっと小さかった頃、親に愛され、ロザを慕い、星都が輝く程に美しかった頃。

幼い或る日のパレードで、其れは其れは大層豪華で美しいパレード車の最も高い所に立った星の乙女(■■■■)様を私は一目で美しくて素敵な御方なのだと思った。

万人から愛されるべき至高の乙女が確かに居たのだと、

振る舞いや仕草の一つ一つから溢れ出る健気さに、慈しみ。

そして何より、可憐な乙女其のものだった。









幼い私は父に肩車をされ、そして偶然にも彼女と目があった。

…其の時、彼女はにこりと微笑んだ。幼い私に向けて、ただ唯一の微笑みを。


だから嬉しかった。烏滸がましいと今なら言えるが、私は彼女の様になりたいと思った。

彼女を近くで見ていたかった。

願わくば、傍で、お護りしたくてーー

































ーーそうして、父亡き後も、ロザが侍女として奉公に出てしまった後も、私は常に教えを守り、母親と共に救いの女神の如き彼女を厚く信仰し続けた。

敬虔な信徒として、私はずっと祈り続けた。

















…其れは女神達や天に届いて、私の信仰心が認められて、遂に星の乙女(■■■■)様にお仕えする機会が訪れた。

其れは喩えるならば限り無い永遠の幸福を窓辺から運んで来た白鳩の様なもので、私の心は舞い上がり、此れからの希望について胸一杯に巡らせて私は喜んだ。

私の元に贈られた夜空の様な美しい深い青と星の刺繍を施されたドレスの様な侍女の制服と華やかにあしらわれた…星の乙女(■■■■)様の純潔さの様な純白のフリルのエプロンを眺めては袖を通すのに躊躇ってを繰り返してしまう程に。




ーーそして私が星の乙女(■■■■)様の侍女として奉公に出る日の夜、()()は私の前に颯爽と現れて、そして立ち所に私の希望を奪い去っていった。

























































黒い男が、夜の輝く星座の回転木馬(メリーゴーランド)の前で彼女を抱き上げ、迫り、そして彼女を殺した。

其の様子は接吻(くちづけ)を交わす恋人の様で、そして彼女と男の距離や影絵の様な形で見れた仕草から、其の男こそが"運命の愛おしき殿方"なのだろうと思っていた。

星の乙女(■■■■)と■■の神話にして愛の物語』に描かれている、「■■」という彼女と変わらない程度の容姿の人物なのだろうと………

























其れ故に、私が受けたショックは半端なものでは無くて、私は大切な御方を目の前で喪ってしまった事と睦まじき愛の神話における彼女の永遠の伴侶である筈の男の手で彼女が殺されてしまった事の強い恐怖と哀しみを得た。


そして同時に、私は激しい憎しみに駆り立てられた。

身を焦がす憎悪は其の伴侶たる少年…或いは青年に向けられた。




そして同時期、不幸は立て続けに重なって、とうとう星都の女神デインソピア様が討たれた。

















……私の心は喪失感で満ち溢れた。信じていた存在を続け様に喪い、多くの信徒と同じく取り残されてしまったのだから。

二人を殺した者への憎悪に身を支配されそうになったり、喪失感で身動き一つも取れなくなったり、そういう日々を過ごしていた。

母親もそんな私を痛ましく思って、私の身体を強く抱き締めて、一緒に哀しんでくれた。

だけど……もう、あの御二方は戻らない。









































ーーそして、()()()がやって来た。

















焔の花事件。

















其れは突然だったし、至る所が焼かれ、私の母親よ私の目の前で焼かれて死んだ。


尊い御二方を喪い、母親までも喪われるとはーー




私の心は強くて、深い哀しみがまるで濁流の様に押し寄せて、焼け焦げた亡骸になった母親を胸に抱いて私は其の場で延々と泣き叫んだ。

私の不幸は、星の乙女(■■■■)様の死から始まった。

そして其の根源的な原因を知りたくて、私は死んでなるものかと必死に掻い潜りながら、やっと辿り着いた。









「復讐者……………………」

女神殺しと、焔の花の件で執念深く探し続けて、やっと私は見つけ出した。



そうだ。きっと、この男だ。

()()()ーーあの時、星の乙女(■■■■)様を殺した男は、きっとこの男なんだ。

何処に居るのかも、何とか突き止められた。

焼かれて永遠に着れなくなった侍女の制服の切れ端、硝子の短剣。

私は其の一つの感情に駆られ、支配された。


復讐者を殺す、殺してやるんだって。

































































そして私は避難目的の星の乙女教徒(ソピステラ)という立場を利用して、彼の居る機関(リプレサリア)までやって来たーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ