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Dea occisio ーFlamma florumー  作者: つつみ
Dedelwn Dark Kawntein(星都白塔)
48/125

『Sapientia mortuis』

サフィーの裏切り……………………




少女が、彼女が自分達に背を…いや、剣を向ける時が来るだろうとは既に予見していた。

普段の噛み付き具合、反抗的な態度からして察せない筈は無いのだから。()()()()()。侮るべきではないと警戒こそしているが、こうまで来ると最早救い様すら感じない。

呆れ果てる。ーー顔には出さない様にしているが。



其れよりも………ーー

















































灰の舞う赤い空。

熱気が喉を乾かしてゆく、苦しい環境。復讐者達ですら水分を常に欠かせない程の劣悪な環境下で()()は平然としている。




ーー否、そうではない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()
















血色を失った白さ。

燃える業火に包まれた空の下で不気味な程映える黒。

最早冷たく感じる青色。

少女が純潔であると証明誇示をする白翼。

狂える色彩の中で顕示欲すら果てた太陽の灼熱の毛先にかけた虹彩(サーモグラフィー)


左右の眼の色が異なっていた。夜の空よりもほんの僅かに明るい青い瞳と、少女が持つべきと造物主(デインソピア)に定められた最高の黄金の様な金の瞳。

























ーー嘗て、聞き知った限りでは。


儚くも健気で純真で強い。正しく智恵の名が相応しい、宇宙を体現した可憐で美しい少女。

■■の民に並んで存在していた古代の種族「煌星の民」の出身、とデインソピアが"設定"した創作の少女騎士。

嘗てシーフォーン…■■■■が絶賛し、あろう事か星の乙女(■■■■)や■■■■■の過激派として彼女等を認めなかった者を徹底的に排他した程。

































硝子の剣に、流れる煌星の民の血。

事在る全てを「天体」と「宇宙」と「星」と結び付けた者。

彼女が何故に星であるのか、理由は確かに存在する。




ーー「星の乙女(■■■■)」という存在を生み出したデインソピア(東の異邦の血を引く女)がこよなく愛して止まない者の名を、自国の言葉で「星」を意味する言葉と同じだと言い、そしてそう解釈したからだ。

要は星の乙女(■■■■)という少女は彼女の独占の混じる肉欲・愛欲・情欲より発生したものであり、短絡的に云えば「デインソピアとなった者の自慰行為」なのである。


故に星の乙女。

元の世界観に在る筈の無い煌星の民。



「黄昏と並ぶ古代の民、と扱っていたが。まあ随分と大変な捏造だ。挙句()()()()()()()()()()()()()()()()()

復讐者の呆れた言葉が乾いた空気に溶けた。

「…………………………」そんな彼の言葉すら耳には届いていない、らしい。

揺らめく焔の花に背を向けて、彼女も僅かに揺れる。

















……然し、どう見ても明らかに今の彼女は可怪しい。


まるで生気が全く感じられないのだから。

其処に"愛された煌星の少女騎士"の面影は無い。






復讐者は僅かな違和感を怪訝に思いながら、二度目の考察を反芻の如く巡らせた。ーー確かに星都で目の前の存在はニイスによって討たれた。其の証左として()()()()と云う名の星の乙女教徒(ソピステラ)が自分を殺しに来ている。

…ニイスが失敗したとは思わない。口下手で誤解を招き易いが、彼が嘘を吐く事は無かった。


ならば矢張り第五の女神(ペールア)が創り出した贋作物に過ぎないのだろう

詰まるはサフィー、少女は贋者に踊らされる哀れな狂い子。


















































………さて、どうするか…。

少女(サフィー)は先ず自分の言葉を聞き入れないし、星の乙女(■■■■)は贋者といえ敵である。

リプレサリアに来た者だから一応は保護するべきで、こういう形で傷を負わせてはならないがーー




「…うん、已むを得んな此れは」

復讐者の()()()が仲間に向けられる。()()()()()()()()()作戦を活かすべく応える様に三人は動く。

「きゃっ!!!!」

エインが撃った銃撃が少女の足元を掠めた。其れでも少女は晒された己の危難に臆する事無く果敢に立ち向かう。ーーいっそ清々しい、とエインは感じた。



星の乙女(■■■■)様!!御無理なさらないで!!!」まるで主に群がる蜘蛛の子を散らす様にエイン達の方へ駆け寄り必死に短剣を振り回している。

、敏捷は悪くない。だが、彼等の方が少女よりも場数を踏み慣れていて、一太刀も浴びせる事は出来無い。

「やあああっ!!!」

少女の渾身の一つ一つがいとも容易く避けられてしまう。

























「…………………………。」少女が奮戦する様子を、虚ろな瞳の彼女はぼんやりと見ていた。(あの子はどうして私と戦うのだろう)と疑問を巡らせながら、"ただ持っているだけ"の硝子の剣を振り上げる事もせずに、ただ立ち尽くす。




ーー其処に、誰よりも小柄な体躯のエムオルが飛び掛る。エムオルの三節棍が彼女目掛けて振り下ろされようとした時、少女(サフィー)が身を挺して庇い立ち無謀にも短剣で咄嗟に打ち返したのだ。

「!!?」エムオルも咄嗟の行動とは言え、重い三節棍を打ち返した少女の行動に驚きを禁じ得なかった。たかが少女なのに、と侮っていたのもあったからかもしれない。


其れこそ正しく、暗殺者に匹敵する身の熟しを見せ付けたーー

















星の乙女(■■■■)様っ!!!」少女は即座に振り返って、彼女の身の安全を確認する。無事である事を認識し、ほっと胸を撫で下ろして柔らかな目付きになった。

(この御方をお護りするのが侍女の務めだって、デインソピア様は仰った。だから私は…私は血の滲む特訓を自分でやって、リプレサリアへ向かうまで何度も想定(シミュレート)したーー復讐者(この男)を完全に殺す為に。)


(あっちに居た時は色々あった…けれど此処なら躊躇いも無く私は全力を出せるわ!!オディムとかいういけ好かない奴も居ないし、私を阻む者は居ない。私はーーとうとう星の乙女(■■■■)様の為に戦えるの!!!)

少女は心の中で噛み締める。

(復讐者を殺してやる、って。敵を討つんだって私は誓って、頑張ったの。其れがこういう形で報われた!!星の乙女(■■■■)様が、生き返った!!!生きていた!!!!私は…私は復讐の為に短剣を振るいはしない!!この方の役に立つ為に、私は戦うんだから!!!!!)



サフィーは復讐を一度捨て、そして今度こそ敬愛する者の為に戦うのだと誓う。

何度も、ゆっくりと噛み砕く様に。


然し…………其れでも、少女に僅かな不安はあった。

























ーー敵が流した血を恐れ、身近な人の死を嘆いた自分が、果たして本当に人を殺せるのかという事を。

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