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Dea occisio ーFlamma florumー  作者: つつみ
Dedelwn Dark Kawntein(星都白塔)
45/125

『Ea lapsa sequi puellae』

ーー星都白塔内部・中間地









































「ああ…………綺麗……星の乙女(■■■■)様の描く美しい世界そのものみたいだわ…!!!!!」

靴音を響かせ、一切が拭われた美しい青の回廊を歩いてゆく。サフィーは進む度に感嘆の言葉を吐き散らし、見るもの全て星の乙女(■■■■)とを繋ぎ合わせた。

ーー女神ペールア・ラショーが造り上げし白塔。あの憎悪に塗り潰された炎の女神にこんな事が出来るなんて。

「ディデルウン・ダク・カウンティ」サフィーは胸に手を当てながらまるで魔術の詠唱の様に塔の名前を紡ぐ。



女神ペールアは許せない。けれどこんなに素敵な場所を造り上げた彼女の確かな技術やセンスは認める。

それでもロザの事や奪っていったものの事を差し引く事は出来なかった。

だけどーー

































サフィーが感じた、敬愛するべき星の乙女(■■■■)の存在と気配。

帰ってきたのだ、と彼女は心の中で大いに喜び湧いた。然し()()の真相は暗く光も届かない深淵の底無し。

だが少女には絶対的な確信があった。いや、確信と言うよりは自信の方が正しいか。




(そうよ。此の先には星の乙女(■■■■)様が、あの方が創世した本来の■■■■ちゃんランドがある筈なのだからーー!!)




少女(サフィー)は回想する。流れ行く時間、空の色に合わせて変わる星の乙女(■■■■)の瞳、彼女が愛せし■■、二人の愛、永遠の戯れ、睦まじい夫婦の如き星の乙女(■■■■)と■■が描く美しい無限、二人に寄り添う娘の様な、嘗て災女と呼ばれた幼女。

星の乙女教徒(ソピステラ)の永遠。絶望すら潰えた救済。

至高の天壌無窮(てんじょうむきゅう)



正しくは明かされぬ儘に女神デインソピアは露と消えてしまったが、■■■■ちゃんランドというーー彼女がよく口にしていた言葉として伝わっている。

















「……ーー♪」サフィーは口ずさむ。デインソピアとシーフォーンが創り出した煌星の民の歌を。煌星の少女と楽園より来たる■■の愛を紡いだ歌を。

そして彼女は回想する。滅ぶ前の星都での生活を。家族と見たパレードの事もだが父を喪ったが優しい母と気さくなロザとの生活を。

あまりの熱心さを同年の星の乙女教徒(ソピステラ)の子供に揶揄(からか)われた事も、美しい装丁の乙女と少年の愛の神話を欲しがって我儘を言った事も、何故か外見の変わった様子の無い裏路地の整備屋の男の姿に少しだけ怯えていた事も、全部霞の向こう。

(…。星都は、滅んじゃったんだ………)サフィーの瞳は朧気に揺れる。改めて見た光景が最早自分の記憶の中にある星都では無い事を、懐古と悔恨の混じり合った感情で見ている。

煙の立ち上がる空を、花弁の様に散る火花を、薄汚れた暗い世界を。

















楽しかったなあ…楽しかったなあ…楽しかったなあ………

サフィーの心は其の一言だけに満ちた。幸せだった日々、熱心に敬った女神達と主神星の乙女(■■■■)抵抗者(レジスタンス)達の様な正常な者達から長く「異常者と病質者達の箱庭」と揶揄されながらも閉ざされた楽園の様な星都こそが彼女の全てだったのだから。

過去の回想と現実の凄惨さに少女の気が遠くなりかけてゆく最中で、本当に小さな、極僅かな声が頭の中から波紋の様に響いてくる。

ーー……て、…………て、…って、………っちの…に…………

(…?)サフィーは僅かな違和感に対して敏感に感じ取り、其の声に意識の全てを張り巡らせた。

ーー…って、…早く…って、行って、すぐあっちの方に……………

()は次第に鮮明さを伴って少女の脳裏に届いてゆく。




ーー行って、早く行って。行って、すぐあっちの方に。

急いで。引き下がっては駄目。その先へ。

此処まで来たのなら最期まで見届けに行ってあげて。だからーー

























疾く征け。

































一瞬だけ()()の声がサフィーの脳裏を大きく揺すぶった後、彼女の意識は現実に瞬く間に引き戻される。

「っは…!?な、何!!?」意識を現実に取り戻したサフィーはまるで先程まで溺れていたかの様に振る舞い、驚き、辺りを見回した。

ーー何もある筈が無い。サフィーは安堵と落胆を一緒に抱え、俯いた顔を上げて、先へ行く扉の方を見た。



既に施錠を失って機能しない扉の先に、見覚えのあるシルエットが少女の幻視となる。



















































「ーー……星の乙女(■■■■)様!?」少女(サフィー)の瞳に敬愛なる星の乙女(■■■■)の姿が映された。

『……………………。』黙して語らぬ星の乙女(■■■■)の姿に、僅かな猜疑心こそあったものの教徒の者にとって救いの象徴とも呼ぶべき御身に雲の様に澱んでいた疑いは晴れた。

ーー例え逆光で姿が把握出来無くても、彼女(■■■■)彼女(星の乙女)だ。




「■■■■さま!!!■■■■さまぁっ!!!!!」サフィーは突如現れた星の乙女(■■■■)を追い掛けて駆け出す。涙を流して、まるで愛を求める迷い羊の様に走る。

『……………………。』然しサフィーが辿り着く前に星の乙女(■■■■)らしき者は思わぬ軽い足取りで少女よりも先を征く。

「待って!!待って下さい!!!どうして!尊い御身を私めの前に現してはくれないのです!!?貴女の侍女として…私はっ………!!!!」

サフィーが必死に追い掛けても、尚も辿り着けぬ存在。

彼女(■■■■)らしき影が曲がり角を曲がった後、サフィーもやっと其処に辿り着いたが、既に乙女の姿など存在せず。









「あーーあぁ……ーー」サフィーは其の場で愕然とし、膝から崩折れた。ーー幻に過ぎなかった。迷う自分が見せた幻だったーー"彼女が再び此の世に蘇り再臨すれば"という先程過たず見出だせていた希望など矢張りある筈が無かったのだ。

崩折れる少女の前には外へと続く階段が一つ。

まるで彼女に道を示さんと佇むのみ。

「ーー………、」導き、と呼ぶには惨め過ぎるが、此処で消えたとなるならばそう云う意味だろう、と少女は迷い、傷付いた心を抱えて階段を上って行ったーー

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