『Multantes vindice poena nobis』
ーー『エインとレミエさんを呼んでくれ』
彼の此の発言で呼び寄せられたエインとレミエの二人は、改めて復讐者との再会を喜んだ後、彼の様子が何時に無く真剣で、本気である事を知った。
「女神を殺そう。…女神ペールアは殺さなくてはならない」
全ては此の一言から始まった。
ーー永世不可侵領域・草原地帯
一面が果てしなく広い草原であった場所に、様々な資材が運ばれている。
「はーい、そっち、そっちー」ツブ族が高台の上から指示をする。
其れに合わせて、他のツブ族達が懸命に資材を、荷を、運んで並べ、或る者は組み立てる。
木材を運び立て、
石材を組んで造る。
作業の殆どはツブ族が行った。外から逃れて幸いにも此の地へ辿り着けた者達も呼び掛けで手伝ってくれた者もいた。無論復讐者達も。
ーー……………………
…………
……
幾月程は掛かったが、時は経て殆ど完成してきた其の日の夜の事。
復讐者の所へ訊ねに来た青年がひとり。
ーーエインだ。
戸の向こうの復讐者は、隔てられた先に立つ者が親族である事に気付いて静かに戸を開ける。
「ーーエインか。どうした」
「訊ねたい事が」エインは短的に纏めて聞いた。
「急に…何を考えているのです、貴方」
訝しげな様子で眉間に皺を寄せて、彼は復讐者の思惑の真の意図を理解しようとしていた。ーー呼び寄せられた時、レミエと共に彼から聞かされた言葉をエインは思い出している。『女神を殺そう。…女神ペールアは殺さなくてはならない』という一言を。
だが、彼が準備をしたと思ったら女神の所へ乗り込むつもりなど一切無く。
「…………其れで私の意図が気になったとでも?」
「ええ…」
両者の蒼い瞳が夜の月明かりに照らされて仄かに光っている。静かな草原の上を浮かぶ蒼い月の様に思えた。
淡い光を宿していたエインの瞳が僅かな翳りで暗くなる。まるで疑念を抱く彼の心を反映しているかの様に、差し込んだ影は窓の向こう側の月に照らされる復讐者を見据えた。
「…真面目になっても喧嘩っ早いな」
「私の過去の事はお止め下さい。其れと、今は関係無いでしょう」過去の事に僅かに触れられた彼は、思わず声を低くした。はぐらかされている、と感じてか何としても彼の真意を知りたがっている。
嫌になる程真面目なエインを前にーー復讐者は少しばかり目を伏せて、月を背にした。
そして彼はゆっくりと双眸を開く。そしてーー
「なに、只ーー」
「ーー対女神討伐機関の設立をしようと思い付いただけさ」




