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Dea occisio ーFlamma florumー  作者: つつみ
Sioya Tagrayuuga Sihorn(聖都白塔)
24/125

『Temperantia non est Rosa』

「あはははっ!!殺してあげるわ!!!」

ロザの刃が復讐者目掛けて投げつけられる。彼は軽く身を動かして避ける。

「うふふっ、馬鹿ね、其れは()()()よ」瞳を見開かせるロザが嗤いと共に告げると、彼女は素早く武器を切り替えて矢を番える。



「あたしの武器はこっち!!」折畳式のコンパウンドボウを取り出して素早く撃ち出す。先に鋭利な刃を付けた無数の矢は、復讐者の身体を狙って飛んでゆく。

















「エイン、撃て!!」復讐者は大きく叫ぶと、ロザの無数の矢を己の身を翻しながら避けてゆく。刺客達に負けぬ縦横無尽さで対抗する。

「援護します!」エインの小型の機関銃が唸りを上げた。激しい銃撃音が炸裂する。



「ふんっ!!」ロザはエインの銃撃を見切りながら、身軽に躱してゆく。そして彼女はエインに牽制の2発を、復讐者に更に追撃を行った。

「見切りはお前だけのものじゃない!!」復讐者も彼女が撃った矢の機動を読みながら無駄な動き一つせずに躱す。

「むっ、牽制か…………!!!」エインは臆する事無く牽制用に放たれた矢を掴み取って破壊する。

















「はあああぁぁぁっ!!!!!!!!」飛び退いたロザに向かってレミエが武器を構えて突進する。

「っ!危なっ!!!」ロザは脇目に振りレミエの攻撃を間一髪で避けた後、携えていた硝子の短剣で迎撃した。

「くっ」武器のリーチで優位に立っている筈のレミエが、ロザの猛攻によって僅かに圧される。






「レミエさん!離れろっ!!」復讐者の号令(コール)がレミエに向けられる。其れに合わせてレミエがロザと距離を取ると、今度は復讐者が黒剣を機械弓(アーチェリー)に変えてロザに向けて魔力の矢を数発撃った。

「あたしのよりもへっぽこじゃないっ!!!!!」ロザは予想の通り軽く往なしてしまった。

「狙撃ならエインには負ける」復讐者は改めて己の狙撃の腕の弱さを噛み締めながらも、透かさず魔力の矢を再び撃ち、そして隠していた大型銃を取り出して同じく数発狙撃する。


そして其れは、ロザの脚に見事に当たった。









「くう…っ」

「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるというものだ、若造」復讐者はロザに向けてそう言葉を投げた。

「あたし…はっ、あたしはっ!!」ロザは片脚を傷付けられながらも奮い立って立ち回った。

そして彼女は、オディムとサフィーに向かって矢を数発撃ち、更に復讐者に向けて無数の矢を番える。

























「!!!!!!!!」オディムが自分達に向かって飛んで来る矢を見てサフィーの前に立つ。

少年がギュッと強く目を瞑った時、エムオルが咄嗟に現れて二人に向かってくる矢を弾き飛ばした。

「チビ!!おまえ…っ!!!」

「ちょっとっ、チビなんてよばないでくれる!!?エムには、エムオルって、名前があるんだからねっっ!!!!」二人を助けて早々、エムオルはオディムの言葉に反抗した。

























「エイン!!レミエさん!!!挟撃!!!!!」

復讐者の号令(コール)が二人を動かした。

「了解です!」「はいっ!!」其々が応えてロザを両方から挟み撃ちする。

更に復讐者も容赦無くロザに向かって狙撃を行った。


各々の攻撃がロザに降り掛かる。

そして復讐者の巨大な魔力の塊が彼女の身体を包んだ。











































































「……ふ、ははっ……ザマぁ無いわね、あたし……」

勝敗が決した頃、ロザの身体は壁に打ち付けられていた。

壁に大きな(ひび)を作り、彼女の身体は手足がおかしな方向へ曲がっている。

「辞世の句は其れで終わりか」復讐者は彼女の前に立って銃口を向ける。

「撃ちなさいよ…其れでアンタの勝ちだわ……ペールア様には申し訳無いけれど、死ねるなら其れでいいもの………っフ…!」

ロザは口からゴボリと血を吐き、力無く俯いた。


















「そうか。其れでは」復讐者が冷たく見下ろしながらロザを撃とうとした瞬間、目覚めたサフィーがロザを庇おうと寄り添う。












































「許せないんじゃ無いのか」彼の目が驚きで僅かに見開かれた後、サフィーに語り掛ける。

サフィーはロザを庇いながら、復讐者を強く睨み付けた。

「確かに星の乙女(■■■■)様やデインソピア様を裏切って愚弄した事は許せませんが、此処までしなくたって良いじゃないですか」

「然し…君を踏み躙っただろう、彼女」

復讐者の言葉にサフィーは理解しつつも、彼女に未だ残るロザへの情が彼の言葉を許さなかった。




「ええ、ロザは私を踏み躙る言葉を吐いた。そうかもしれない。だけど、其れでも私にとってお姉ちゃんみたいな人である事は変わらないんです。だからきっと彼女は考え直してくれる。ロザはあんな事を言う様な人では無かった。きっとペールアなんかに」

「まだ信じるのか…」

「信じますよ!!優しくて面白くて、強いロザお姉ちゃんがあんな人だって絶対嘘!!ペールアに強いられたのよ!!!…ロザ、お願い、考え直して下さい。確かに私は貴女に対して怒りました。だけど貴女は」

ーーサフィーが全てを言い切ろうとする其の時。


























「…っくふ、ふふふふっ、ははっ、あははははっ、ははっ。…ホント何処までも馬鹿なのね、アンタって。馬鹿過ぎて扱いやすいわ……っ」

ロザの胸に、硝子の短剣が突き刺さった。

「!!!ロザ!!ロザお姉ちゃん…!!!!!」

サフィーがロザの胸の短剣を引き抜こうと手を伸ばした時、ロザの傍に同じ硝子の短剣が落ちている事に気付いた。

そして、自分の手元に硝子の短剣が無い事に気付く。




「…………え、」サフィーが傍に落ちていた短剣と、ロザの胸に突き刺さった短剣を交互に見遣った時、ロザの口からサフィーに向けて言葉が溢れ出る。

「ふふっ…あたしの短剣だと思った………?確かにあたしは便()()()()()として自分のを持ってたわよ………でも、今あたしの胸に突き刺さってるのは、」

「やめて!!!!!」サフィーが必死に胸の短剣を引き抜きながら強く叫ぶ。


「アンタの、短剣よ………………………」

口からゴボリと血反吐を吐きながら、真実を軽薄に語る。そして次の瞬間、短剣が胸から引き抜かれた事によって、彼女の命の灯火は消えてしまった。

寄り添ってきたサフィーから密かに奪い取った彼女の硝子の短剣で敢えて自らの命を消費し、サフィーに負い目を抱かせるつもりだったのだ。

















「あ…………、あ…………ああ……………………」サフィーはロザの血に塗れた自分の硝子の短剣を落として、其の場にへたり込んで只管震える。

息絶えた彼女には最早届かなくなっただろうが、彼女の思い通りになってしまった。

薔薇の拘束が、少女を苦しめ続けるのだろう。

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