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Dea occisio ーFlamma florumー  作者: つつみ
Sioya Tagrayuuga Sihorn(聖都白塔)
22/125

『Gimmick florum』

…白塔の中へ侵入する際、辺りを見回すが自分達以外の人物は居ない。敵地だと言うのにどうも不気味な位静かで、敵一人も未だ現れない。敵に態と攻略させるつもりなのだろうか、或いは何か裏があるのではないだろうか、と復讐者は警戒しつつ塔内へ入った。




ーー塔内は思ったよりも簡素そうに見えて複雑そうな仕掛けが幾つか壁の隙間から見えていた。花を模した歯車の様なものが微かに見えている。塔を動かす為の機構なのだろうか。

「……………」

復讐者が塔内の機構に視線を送っていると、静かに背後から少女が忍び寄って来る。サフィーだ。此処で復讐者に傷を負わせられれば彼を弱体化させられる。上手く行けば復讐者を殺せる、と沈黙の内側に息巻いている。

少女の足取りは思うよりも軽く、一歩、一歩、確実に復讐者の背中に近付いた。寸前に至った時、復讐者が声を発す。

「おいサフィー、」

「っ…!!?」

サフィーは少しばかり後ろに身を引いた。気付かれていたのか、と確信する。対して復讐者はサフィーの方を見ずに少女へ語り掛ける。



「…あれは何だ」

彼が指を指した方向にはーー









































ーー見慣れぬ文字。

「"あの人"の知る文字に似ているが、生憎私には分からん。…あの文字、聖都(ここ)でもだが特にソフィアリア・イルでは多く見掛けた文字だ。星の乙女教徒(ソピステラ)なら読めるんだろう?」

復讐者の指差した方向に書かれた文字は、確かに少女には読めるものだった。星の乙女教徒(ソピステラ)は、信奉者である以前に星の乙女■■■■と世界を統治する四女神に仕える身。


何よりも復讐者が知る限りの話だが此方側にある其の言語こそシーフォーンが創作したが、元はデインソピアにより創作された少女騎士である星の乙女■■■■の世界ーーひいては、とある作品内の設定として使われていたものだと聞いている。…彼女達に仕え、特に主神扱いされている星の乙女(■■■■)に関するのだから其の言葉を学ぶのは教徒として当然の筈。

そして由来は兎も角此の少女が知らない筈は無い、と。









「……誰が貴方になんか」星の乙女(■■■■)様の尊さが穢れてしまう、と含んでサフィーは嫌がった。

「…そうか。じゃあお前が星の乙女教徒(ソピステラ)を騙るペールアの手下だと言い広めておこう、そういう疑念はエイン達を中心に広まってるらしいしな」

「なっ…!卑劣な!!嘘を騙って私を陥れようとするなんてっ」

「そもそも今回も私を殺そうとしに付いて来た上に()()()調べて君がリプレサリアに来た本来の目的が"私を殺す事"であると判明した時点で君が嘘を吐いてまでというのも察しているのだが…」

リプレサリアに来れる者の条件ーー"復讐者達や他の難民に危害を加える行為を禁ずる"。サフィーは見事に破っていた。嘘を吐いて目的を達成させようと御者を騙したのだ。

「!!!!!」呆れ気味に復讐者に言われた事が、図星だった。其の為サフィーは酷く驚く。



「ーー先に嘘を吐いたのは?其れに今は私達が一緒に居る。()()()()()()()()()()()()。出来ると謳うならやってくれて良いが、其の前に君が殺されるだろう」

どうやら此の男には看過されてしまっている様だ。

「…歯痒いですが、仕方ありません。私も私で一人の命。憎む相手に殺されたくありません。立場を取りましょう。復讐者さん、」

少女は同じく指を指して、復讐者の蒼い瞳を見ながら語る。

































「…スィオヤ・タグラユーグァ・スィホーン」









































「スィオヤ・タグラユーグァ・スィホーンと読みます。何を意味するのかは分かりませんが………()()は、そう書いております」

「スィオヤ・タグラユーグァ・スィホーン…か。……………………。ふん」サフィーの答えた言葉に復讐者は何か思い当たる様な様子で少し考え込んでから、小さく礼を言った。

然し其の後、




「オディム!!サフィーを見ていてくれ!!こいつ何するか分からん!!!もし我々を不利にする行動をしそうなら止めてくれないか!!!!」

…と、離れに居るオディムを呼び付けてサフィーを見張る様に言った。

「ちょっ…と!!何なんですか貴方!!!先程の態度から打って変わってっ!!!!しかもよりによってあんな奴を………っ!!!!!」

「おっしゃーっ!!へっへー、任せてくれよな復讐者さん!!!ソイツが変な事しそうなら俺絶対止めるからさ!!!!」

オディムは頼られて嬉しいのか、喜んで駆け寄って来る。

「なっ…ちょっとっ!!!!!」サフィーは正直嫌そうに抗議しようとする。…が、復讐者には何の意味も無かった。




「ほらな、やっぱり。アンタが一緒に来てたって事はそういうつもりだったんだろ、俺はお前がそういう事しない様に見張るんだからな…復讐者さん達に何かするなら邪魔してやるぜ」

「ぐっ…邪魔されたって絶対めげませんからね!!!」

後ろの少年少女の遣り取りを復讐者は呆れて見詰め。









































壁沿いに配置されている螺旋状の階段をゆっくり上がってゆくと、見慣れない機構と仕掛けが一面に存在していた。

「花………みたいですが…」酔いもやっと覚めたレミエが辺りを見回して、花の形をした歯車等を見ている。

そんな機構に囲まれた部屋の壁の所々に、()()()()()()()()()()()がある事に一同は気付いた。




「なあ…これ……なんだろう…すげえ不気味」オディムが()の様なものを指差す。

ーー根の様なものは僅かに赤い光を漏らしながら、どくりどくりと心臓の鼓動の如き音を鳴らす。まるで()()()()()()()()()()()()()動いていた。



「……………………」蠢く()()()()()()を暫し見詰めた後、エインが持っている銃器を其れに向けて、数発撃った。

「わっ!!」

ーー…びくともしない。「其れ」は其れ其の物が高い防御力を有しているらしい。

「無理か」

「無理ですね」復讐者とエインの遣り取りが交わされる。









「…っあんちゃん危ないだろ!!当たったらどうするんだよ!!」

「失礼、オディム。"此れ"の正体を知る為に已むを得なかったもので」

相変わらず蠢き続ける謎の根ーー

「…やっぱり……此れはーー「焔の花」の根だな」復讐者の考察の中に焔の花という言葉が現れる。

































…曰く、先程塔に侵入する以前見上げて最上部に在った"あの"真っ赤に燃える花の様なものの事である。

「情勢の視察の為に向かったツブ族達によると「真っ赤に燃える花の様なもの」は世界の中心部にある塔と、四女神の統治下にあった首都だった場所に一つずつ存在している事、そして()()は不定期に炎の雨を降らせているーーという事位だ。…で、ツブ族から聞いた情報を元にして「花」に見えるから「焔の花」と呼ぶ事にしたんだ」

続けて語られた彼の話では、「まだ情報が少なくて分からない事が沢山ある」と言った。だから今回の()()()()()()が高い防御力を有している事を知れたのはある意味有益な事だったのかもしれない。



「でも、ほのおの花。おにーさんはつぶしちゃうつもりなんだよ、ね?」

エムオルがまるで確認を取る様な声音でたすねれば、ああそうだ、と復讐者は頷く。

「っでもよ…()()()()()どうやって……」

オディムの言葉に答えるよりも早くーー

































「エイン、()()()だ。そっちを撃て」

彼の一言に応える様にエインの銃器の引鉄が引き撃たれる。そして復讐者が己の腕を()()()()()()()()()()()()()()()()に変えて、辺りを撫でる様に打ちのめした。

「うわあぁ!!!」オディムやサフィー、エムオル達体躯の小さな者は驚きながらも風圧に吹き飛ばされぬ様必死に踏み留まる。レミエも杖を強く打ち付けて身体がぐらつかぬ様に留まっている。

彼女のベールが煽られた。そして砂煙が鎮まった時、彼等が攻撃した所の壁は(ひび)割れていた。

















「…っ……壁が……」レミエがあっとしている隙に、復讐者は次の力を解き放ち、罅割れた壁から覗く花歯車へ宛てがった。

…一つをクロルの力、焔で溶かし、

…一つをディーシャーの冷たく頑丈な氷で凍てつかせ、

更に一つはアンクォアの如き剛力で破壊し、そして一つを先程使用したレイヨナの力を行使して破壊した。

…最後の一つは、エインが的確に狙撃した事によって其の動きを止める事に成功している。相変わらずエインの狙撃の腕は凄まじかった。

「狙撃なら私が勝ちますね」

「言ってくれるじゃあないか、女神誕生のの副産物である()()の概念と無縁過ぎた故の皮肉だな」

二人の間でしか通用しない遣り取りを交わして。



二人が幾つかの花歯車の動きを止め、或いは破壊すると部屋全体で動いていた機構は完全に止まった。









ーー…すると……

先程蠢いていた焔の花の根は徐々に鈍くなり、(やが)て其の動きを止める。例えるなら心臓がゆっくりと動きを止めてゆく様に。根は全く動かなくなりそして枯れ果ててゆく。

「…"焔の花"は機械の様なものなのだろうか」ものは試しと思って実行した当事者である復讐者が結果を見て考察する。

「…さあ、分からないです。……塔内の温度が高い事は変わりありませんが」

「ふむ、」復讐者が顎に手を当て思案した。

































「うん、じゃああれか、()はあくまでも()()に過ぎないという事か」

"根"の正体について考察を巡らせた結果が、一部。

「どうも一筋縄ではいかんらしい」復讐者は少し俯いて、どうしたものかと少しばかり悩んでいる。


「えーっ!!?じゃあ対処しようねえじゃん!!根っこをぶっ潰したら花だって枯れるんだと思ってたのに!!!」

「其れだ其れ…花にとっては根が命みたいなものだし、根が傷付けば枯れる可能性が生まれる。だが此の焔の花は違う」

オディムと復讐者の遣り取りの中で、レミエがちょこちょこと近付いて少しおず…とした様子で答える。




「あ、あの…………"根"を潰して駄目だったのですから、いっその事"花"を叩けば良いのでは……ほ、ほら、もしかしたら花の方に「核」があって、えっと、根の事、其れ其の物が生き物みたいだと仰ってましたから……………………」

































ーーそうだ。









































レミエが言った通りなのかもしれない。



ーー彼女の言った通り、「花」の方に「核」の様なものがあるのだとしたら、最上部にある「本体」である花を叩けば良い。

















「ーー成程な、レミエさんの言ってる事の方がしっくり来る」

花が本体ならば花を潰せーー

道が見えてきた彼等は、部屋の全ての機構が止まった事で開ける様になった扉を開けて、次の階層へ進む事にした。

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