『Nulla est alba pura』
馬を駆り、道を駆け、彼等が向かうのは聖都ミストアルテル。
復讐者、エイン、レミエ、エムオルの四人が対処に取り組む筈だった。
…のだが、彼等を追う様にオディムも強引に同行し、そしてサフィーもまたアムルアの目を抜けて追ってきた。復讐者を殺す為に。
追って早々、サフィーは後悔し、小さくウッと呻いた。
(この生意気な奴も一緒だったなんて…!!)
オディムの存在を前に見る。
サフィーはオディムは部屋に居るだろうと見越して、強引にアムルアの監視の目からすり抜けて復讐者達の後を追ったのだ。戦っているイザコザの間ならば彼を殺しても構わないだろう。
イザコザ中の弾みで、うっかりなり何なり誤魔化せるのだから。
果たして少女にそんな事が実行出来るのかは怪しいが行動力には呆れを通り越して感服する。
結局はオディムの強引な同行で阻害される可能性が上がってしまっただけだったが。
(でも構いませんよ、アイツもイザコザの中ならば対処出来ない筈。諦めるものですか)
サフィーは硝子の短剣を強く握り締め、自身の目的に臨むのだった。
「うっぷ…うう……飲み過ぎ…ました…っ」
レミエがやや苦しげに振る舞い、青褪めた顔で気持ち悪いのを必死に堪えている。
「だ、だいじょうぶ???」エムオルが宥める様に背中を優しく擦り、気掛かりそうにエインが見ていた。
「レミエ姉ちゃん、あんたそんなんで大丈夫かよ…」
オディムも流石にレミエの様子に心配そうにする。
「わ、私は大丈夫…です、皆さんの足だけは引っ張らせませんから……アムルアちゃんから貰った薬も効いてくる筈ですし、その内何とかなります………うっぷ」
涙目で悪酔いと戦い頑張る彼女の姿に一同はやや居た堪れない心境ながら、なるべくフォローしながら頑張ろう、と誓うのだった。
「ーーでっけえ塔だなぁ……」
オディム達は突如として現れた目の前の白い塔を見上げながら、此れから起こる出来事に対して心構える。
赤く燃える焔の花を抱く、白い塔。
「……………………。」
復讐者は目の前の白塔を強い眼差しで静かに見ていた。
ーー塔の建つ此処は元々、傲慢と熱愛を司る女神シーフォーンの「廷」が存在していた場所だ。
復讐者達との戦いによって大半が崩壊し、そして魔性の女神である彼女との決戦で廷はほぼ壊滅した。
思ったよりもあっさりしていた気もしなく無い幕引きに思えたが、其の後の事を考えると少しばかり先が思いやられそうになる。
「……。だが、行かねば。ペールア・ラショーを殺すのだから…」
彼の小さな呟きは誰にも聞こえはしなかった。然し其の決意は彼自身を強くする。
ーー復讐者が歩を進め始めると、一人、また一人と彼に付いて行く様に歩を進め始めた。
少年も急ぎ足で彼等を追い、そして少女も己の目的の遂行の為に付いて行く。
…女神の塔を壊せ。
……焔の花を消せ。
………目的を遂行しろ。
…女神ペールア・ラショーを殺す。
…そして私は、復讐者を、殺してやる。
崇高なるデインソピア様と、麗しい星の乙女■■■■様の為に。




