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Dea occisio ーFlamma florumー  作者: つつみ
Sioya Tagrayuuga Sihorn(聖都白塔)
20/125

『Smiling deam florum』

世界各地の女神の都に微笑みが咲く。白い塔の上燃える赤い花が四女神の烈火の心と綻ぶ嘲笑いの如く。

隆起した大地を突き抜けて蒼空を貫かんとする塔は穿たれた紅蓮の女神の槍。

ーー其の白さは忌々しい程に白く、女神(かのじょ)達の純潔は至高と謳う様。


四の偉大な魂は復讐の黒い淵に沈み白詰草と鳥兜の花冠がもたらした女神達の失墜と死によって成されて其れは徒花の様。

緩やかな水に咲く睡蓮の花言葉の様に女神達は滅亡した。









…………紅蓮の大輪が残され、奇妙な縁を辿って女神の徒花との間に深い因果が作られた。正に、正に今、紅蓮の女神の咲かせた花が徒花を焼き切ろうと槍を穿つ。









































『ーー見よ。此れが()()()()()()()()が成した事だ。もし僕が此処から飛び降りれば燃やされて死ぬだろう。()()()()()()()()()()の話だ。だが、僕はそんなに容易くは死なぬ。復讐者。君の行方を今は見守ろう。僕には僕の、すべき事があるのだから』

















とある白塔の最も高い所で、黒く棚引く外套の()()が独り。

随分と聞き慣れた声に、僅かに覗かせた黒色。

外套の深くに冷たく煌めく瞳。

彼は、復讐者が最も知る者に酷く似ていた。然し彼とは異なって、惨たらしく残酷だった。



彼の目的は知れない。




そんな中、彼の背後より離れた場所から、真っ赤な髪を風に流す者が立っていた。()()、と揶揄された、女神ペールアだった。

































「……居たんですか。てっきり死んだものかと」

()()()?…ふはっ、風当たりが厳しいんだな』

ペールアは外套の青年を忌々しそうに睨む。

「世界を焼く中で貴方も焼いてやろうかと思っていたのに。しぶといゴミだ。さっさと死んじまえば良かったのに」

魔女は汚らしく憎悪を吐いた。

「死ね、死ね。死ね、死ね、死ね。私の身体を弄った男、あの復讐者(憎い男)を影から導いて、偉大なる愛おしきシーフォーンさんやデインさん達を殺した奴が」




外套の青年は少しばかり溜息を吐き、そして戯ける。

『"僕が復讐者を導いた"?君は勘違いしていないか?僕は君が慕う「偉大なシーフォーンさん」の方に属していたし、復讐者(アイツ)の所に居る"()"じゃ無いよ』

「私にとっては何方も同じだ!!!」

ペールアの顔に深く険と皺が寄る。









































『…………なら殺してみるといいさ、其の剣で。燃え上がる炎剣(フランベルジュ)で在りもしない肉を切れよ、骨を断ち、禍々しく黒炎で僕を灼け!!』

瞬時、青年から恐ろしい迫が放たれた。

「………っ」ペールアの足が竦む。今にも飛び降りそうな場所にい居る青年を、斬るだけでは無く押し飛ばして落として殺す事も出来る。然し彼女の其の身はただ立ち尽くすばかりで、駆け出す為の足が動かない。

『ほうら、やっぱりね、ーー君は僕を殺しなんかしないさ。出来無いんだもの。今にも死にたがる者を殺しはしない其の残忍さに僕は手を貸したのさ』

ペールアの身が足から崩れ落ちたーー

彼女は其の場でへたり込み、力無く留まる。手にしていた剣も落ちて、燃え上がっていた炎は消えている。


気付くと、ペールアの眼前に青年の顔が迫っていた。

(!?何時の間にーー!!?)

深々と被られた外套越しに、覗かせる黒を靡かせて赤紫色の双眸がペールアの恐れを孕む黒眼を嬉しそうに見ていた。

僅かばかりに見えた口が酷く釣り上がっており、異形の如く真っ黒に見えた。



『…良い事を教えよう、■■■■■■。君が創り上げた白塔の内、君の愛して止まない女神シーフォーン…■■■■が治めていた聖都にもう直ぐ復讐者か来るよ。……大好きなシーフォーンが()()()()()()()()()()、飛んででも彼等を殺しに行くと良いさ』

青年の笑顔はペールアに惨たらしい言葉を掛けた。

『…でも、君の望んでる彼女(■■■■)じゃ無いか。本当にシーフォーンを蘇らせたいと言うのなら其の為に今は動きなよ』

然し青年はーー思い立った様にペールアに別の話題を提してそちらを優先すべきと告げた。

















…そしてペールアもまた思い立った様に駆け出し、其の場から急いで離れ、何処かへと行った。

『今際は君の思う通りに動くと良い。君がそうやって動いてくれれば動く程、過たず可逆は成し得よう。』

彼女の背姿を見送って、外套の青年は独り小さく呟いた。薄氷の様な微笑みを以て。

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