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Dea occisio ーFlamma florumー  作者: つつみ
Sioya Tagrayuuga Sihorn(聖都白塔)
19/125

『Ardua turre alba』

先遣隊のツブ族からの話を聞き、急遽復讐者の所へ駆け付けたエインとアムルアが同時に彼の所へ辿り着いた頃、事態を聞いていた復讐者もまた立ち上がり、其の双眸を大きく開いた。

相変わらず長めの前髪から覗かせる蒼い瞳は、まるで燃え上がる焔の様に爛々と輝いていた。ーー報復。其の好機は未だ訪れていなくとも、彼にとって此の事態は進展であり急展開でもある。

無論、彼にとって女神抹殺の為の道筋(シナリオ)の最初、重要な点の一つであるという事において。

















「ーー動きがあったか」

復讐者はスッと立ち上がった後、其の瞳でやって来たエインとアムルアを見据えた。



「既に聞いていたのですね」エインが自分達が聞いた事が既知の事実である事を知ると、今度は彼の傍らに立っていた()()()()()()のツブ族を見遣った。

「……其処のツブ族は?」エインも見覚えが無いツブ族の存在を怪訝に思ったが、恐らく先遣隊の一人でありあまり此方には来なかったツブ族なのだろうと判断した。



…だが、エインが聞いた言葉は思いがけないものだった。

「伝えに来たのはこいつだが、実は先遣隊の中にこんな奴は()()()()()。酷く怪しい事に変わりは無いがーーお前達が来た事で情報は信用出来るものだと分かったからな」

復讐者が傍らの其のツブ族を一瞥した時、此の場から女の笑い声が響いた。

ーー…声の発生源は其のツブ族からだ。

























「ーー〜っははははは!!!やっぱバレてたか!!!!!ははは!!残念!!」

其の一声を皮切りに、其のツブ族の輪郭が歪み始めると、ぐにゃり、と身体が歪み、(やが)て一人の人物が現れた。




一部だけ白いメッシュを掛けた、艶のある黒髪をたなびかせ青い眼を持つ白肌の少女が其処に立っていた。

































「追従者スノウル!!!!」

「!!」

復讐者の叫びと同時にエインは武器を手に身構えた。ーー彼は本能的に感じ取ったのだ、()()()()()()()()()()()()()()()が、()()()()()()()()



「!!!流石!!()()()に居合わせただけあるってやつ?よーく分かったんだ、身構えなくてもいいよ」

エインの振る舞いに目をぱあっと輝かせて嬉しそうにしたスノウルはエインの警戒を余所に彼に接近し、武器の切っ先を己の指が傷付かない程度に突いた。

「信頼なるものですか。貴女、何を考えているのです」

エインは()()()()を目の当たりにしていた為に、警戒を解かなかった。目の前に居る此の人物が、何を考え、何の為にツブ族なんかに化けて接近してきたのかーー其の意図を掴むのは難しく、また復讐者や自分、アムルアの寝首を掻くつもりならば容赦は出来ない。




「(◞_◟)」

彼女はエインの険のある態度に敢えて巫山戯た態度で返した。

「目的は何だ、スノウル」序で復讐者の方からスノウルに言葉を掛けた。スノウルは飄々と、或いは巫山戯きった態度を取り、其の場に居る者へ己の目的をただ投げる様に吐き出した。

「別にお前等をブチ殺しに来た訳じゃ無いから安心しな。私はただ有益になる情報を持ってきた。其れだけ」

「先遣隊のツブ族に態と混ざってか。ふん、滑稽だな」復讐者がスノウルに皮肉を投げた。









然しスノウルは其れをものともせずに復讐者の机の上にある資料の一枚を手に取ってひらひらと振った後、復讐者の蒼い瞳を其の青い瞳で見詰めながら彼女は語り始めた。

「別に良いじゃん?其れより先遣隊のチビ共よりも優れた情報を折角取ってきたんだ、今直ぐ感謝しろ」

「感謝?情報も言わずに貴様に感謝しろと?詐欺紛いの真似をするのなら追い出すぞ」



「あっ、殺さないんだwそりゃ良かった( ◜◡◝ )いやあんた助けといて良かったわ〜だって此処で殺されずに済むんだもん」

「抜かせ。お前の本質が脳味噌イカれた気違いなのは知っているんだ。お前の掌の上で転がされ続けるつもりは無いぞ。悔しいが此処で貴様を殺そうとした所で殺すのは無理だろうからな」

「あっは!!!w聞いた!?聞いたよね!!!復讐者の奴が「悔しい」って言ってやんのwww」

スノウルは何処までも巫山戯た態度を崩さず…居合わせた者達の怒りを刺激する。






…彼女の態度にそろそろエインが耐え切れなくなりそうになった所で、不味いと思ったのかスノウルは態度を改めて話を始める。内容は白い塔の事だが、先遣隊の情報とは少し違うものだった。


「……先ず調べた限りではあのやべー塔は此の世にある物質で出来てる物とは違う。ブッ叩いても蹴っても武器で破壊しようとしたけど駄目だった。頑丈だった。あと、塔の一番上にある赤い花は焔の花だ。十中八九紅蓮のペールア関係だね。内部は思ったよりも広いっぽい。けど何があるのか迄は詳しく見てないからワカンネ」

知る限りの情報を吐き出すや、スノウルは巫山戯た態度に戻った。

「詳しい所はお前等が入ってくつもりだろうし何れ分かるっしょ。死ぬなよ、まあ彼処ら辺で死んでくれたらスノ氏としては大喜びなんですけど」

スノウルの嫌味な言葉に流石の復讐者とエインも黙っちゃいなかったのか、其々武器を取って身構えかける。



二人の態度に本気で殺されると察したスノウルは冷や汗を僅かにたらりと流して急いで其の場から逃げた。

「あっああ!!悪いねwスノ氏約束があるから!!!ひぇ〜早く帰んなきゃニルスィさん待たせたら駄目だろ〜ってwww」

窓からふわりと飛び降り、彼等が顔を出した時には既に消えてしまっていた。









「………チッ!!」復讐者の大きな舌打ちが木霊する。

どうも彼はスノウルに対して複雑な感情を抱いている様だった。助けられた事による一応の恩は無い訳では無いが、あの態度は流石に腹が立つ。

しかも彼女自身の意図が読めず、敵対していたかと思えば彼を助けたり今回の様に情報を寄越してきたりと何を考えているのかは察せない。

ーーただ、少なくとも味方では無い。

主である筈のリンニレースを其の手に掛けた事や、戦意喪失している追従者アラロを斬り殺したという、彼女が内に秘めている残虐性を二人は知っている。

先程の発言といい何れは復讐者達の寝首を掻くつもりかもしれない。




然し今は何を考えているのか分からぬ彼女が寄越してきた情報を疑いを持ちつつも信じて攻略するしか無い。

復讐者は急ぎ、準備に取り掛かり始めた。

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