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Dea occisio ーFlamma florumー  作者: つつみ
Sioya Tagrayuuga Sihorn(聖都白塔)
16/125

『Insanus esse accelerationis』

特使■■■は、酷く戸惑っていた。


炎雨の中で家も何もかも失い、逃げる筈が逃げ遅れて、挙句。

人生最大の失態とでも言うべき程度には彼女は後悔していた。何故なら変な新興宗教の人間にとっ捕まり軟禁され、そして赤い髪を棚引かせる暗い瞳の「女神」に何の理由かは兎も角選ばれてしまったのだ。


"特使"ーー追従する身に選ばれていながら、敢えて決められた役割と言葉。「追従者」という言葉を何故か女神は嫌っていた。

あれ可怪しいな?「女神」と言ったら「追従者」になる筈なのでは?なんて彼女は呑気に考える。然し臆病なもので女神を前にそんな事を聞く事も出来無い。









兎に角、現状に流される儘だった。

































どうすれば良いのかも分からず、

済し崩しで連れられ女神に気に入られたか何かで済し崩しで特使に選ばれる。

何と無くという程度には分かっていなかった訳でも無いのだが頭は碌に働きやしないらしく為される儘、流される儘、彼女はゆらゆらと揺れてとうとう逃げ場を失ってしまった。




「ーー()()()さぁん、似合いますよ〜♡ウフフ…ウフフフ……ふふ…ふははっ」

…一室の中で、「サクモ」と呼ばれた彼女は、女神ペールアと一緒に居た。

「はあ」サクモはペールアの粘り気のある嬉しそうな態度に反してやや引き気味の対応をしていた。






多分、彼女的には「何かおかしなものに目を付けられてしまった」というものなのだろう。

住処を無くし、逃げ遅れて、其れでも取り敢えず死ななくて済むのならば…というつもりで抵抗一つもしなかったが、改めて自分の迂闊さを嘆きそうになった。

家が焼けた時に早く逃げていれば、強引にでも変な教団の人達を突き飛ばして逃げていれば、と。

痛いのも死ぬのも何か嫌だしなぁなんて思っている余裕無かった。


案外、例えて言うのなら流されて生きてきた者がしっかり決めずに成り行きで就職した先がかなり変な所だった様なものなのかもしれない。

































其の結果が此の(ザマ)だ。

何とも情けないが"取り敢えず"死なないで済む為には此の女神に従うしか無い。

まあ従っておけば、一応安全なのだから。









一室で只ペールアの「メガミトートイバナシ」とかいうものを聞かされ続けているサクモは、彼女のあまりにもあんまりな、ねっちょりとした四女神への讃美やら何やらを内心ではうんざりとした様子で聞きながら、悟られると只では済まないと思ってぼんやり聞き流し訳が分からない儘適当な相槌を打っていた。

「……〜、…〜〜!!、〜、………〜、〜。…〜〜〜!!!」

一方的に話し一方的に騒ぎ立て、そして一人喜んでは身体をぶるぶると震わせて明らかに絶頂している様にしか見えない狂った新しい女神を相手に、彼女の「特使」として気に入られてしまったサクモは何処までも分かっている様子では無かった。

…本当に、何も分かっている様では無かった。

兎に角女神至上主義の上一方的過ぎるペールアと肝心な所まともに聞きやしないので訳が分からない儘のサクモという或る意味最悪な二人が一つの部屋の中。




ーー己の行動故に招いた事でありながら、後悔と共にうんざりしていたサクモに都合の良い程の助け舟が渡される。

一室に焔の花教団の人間が入って来たのだ。「掬いの女神ペールア様、拝謁致します」なんて何度か聞いた言葉を跪きながらペールアに向けて紡ぎ、まるで奏上でもするかの様に教団の人間は続く言葉を紡ぎ上げた。



「ペールア様がお望みでいらっしゃった()()()()の用意が出来ました」

















































ーー教団の人間から伝えられた、()()()()

















…そして其れを聞いた時のペールアの、吐き気を催してしまう程の悍ましい笑顔。

口を裂けそうな程吊り上げ、まるで爬虫類の様に長い舌を出してジュルリと口の周りを舐めずった。

気味の悪い程に吊り上がった彼女の両眼が邪悪な獣、或いは毒のある虫の様でーー

「そうですかぁ、早く済んで良かったですぅぅぅ」

声は毒蛾の鱗粉にも勝る。




サクモは、そんな彼女の姿を見てゾッと己の全身の血液が凍り、青褪めてゆくのを如実に感じていた。









































「ーーサクモさんっ」ペールアが先程の態度から一転し、妙に明るく健気な友人や幼馴染の様に向き直った後、振り返って背後のサクモに声を掛ける。

「…………っヒッ」サクモはペールアの変わり様に思わず小さな悲鳴を上げたが、ペールアはお構いなしだった。



「私と来て下さいなっ♪サクモさんに見せたいものがあるんです〜」

にこやかな笑顔。其れから。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を見せてあげましょおおううううううふふふふふふふふふ」

ねっとりとした、暗い穴の中から響く様な声。粘着く吐息。其れ等がサクモの片側に迫った。

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