『Reorganisation』
復讐者が逃れ落ちて10年程が経過し、難を逃れた者達が集まりだして機関は組織としての形を作り上げていったーー
世界の殆どが新たに降臨した第五番目の女神、ペールア・ラショーの手に落ち、燃え上がる灼熱の地獄へと化した後、逃れ生き延びた者達は其々の手を取り合い復讐者達と共に女神から世界を取り戻す為の叛逆、抵抗に出る。
武力を持たぬ者達が各々に出来る事を見出すべく、故国エフィサの元軍人であったユイル・ユーディルナを招聘し、勇敢な者達は彼女の指導を受け、
医術知識に長けた者はリナテレシアに居た医療機関の者達と共に、
流通や運搬に長けた者はフィリゼンに居た商人ギルドの一員として。
そして術式や機構等の知識を有する者、及び造詣のある者はエインの指導が入る事となった。
エムオル率いるツブ族達は諜報と索敵に、そしてレミエ率いる元星の乙女教徒の者は機関員や難民達のメンタルケアを務める。
然しーー
機関に逃れ、所属、或いは保護という選択を選びながらも機関の意に同意するという訳では無かった。
元星の乙女教徒の少女サフィーを筆頭に、女神達の死を受け入れられない一部の研究者や医療機関の者の様に世界が燃やされて尚も四女神や星の乙女を絶対と信じ機関の主である復讐者を恨みながら彼の意思を徹底的に否定する者が居る様に、逃れてきた者の殆どが嘗て四女神からの洗脳を受けていた者ばかりである。
数百年以上、遺伝子の基準で彼女達の洗脳を受けどんな事であっても全面的に受け入れる様に洗脳され続けてきた為に女神達が死して尚、其の洗脳が失われていない者も極少数ながら存在していた。
大体そういう者は其の思想故に順応している者達との間に度重なるトラブルを招き続けていた。
一方、世界は未だに女神ペールアの手に落ちた儘であり、彼女は今も血眼になって復讐者を探し続けている。
…復讐者を殺す為に。
また、生き延びた星の乙女教徒の内で女神や星の乙女へ対する信仰が特に強く思想の範囲が過激だった者、信仰するべき対象の消滅に精神を破壊し倫理的観念を失った者は新たに縋るべき救いの対象として新たに降臨した女神ペールア・ラショーを絶対的信仰対象とした「焔の花教」と呼ばれる新興宗教を創り、女神ペールアに追従した。
彼等は主であるペールアの意思を汲む様に、血肉と狂気、そしてペールアの情欲と同様に一種の猟奇的肉欲に溺れた。
ーー復讐者達の叛逆と抵抗の物語はやっと始まりに立ったばかりであり、
彼の反撃の為の準備は不安定な状態ながら何とか及第点迄には到達した。
だが、彼自身、"ニイス"が存在しない状態の儘でもある。
「再編成」を経てもニイスの足取りを掴む事は叶わず、復讐者は内心では僅かに焦りを滲ませていた。
ーー…然し復讐者の報復の物語も、記憶も、完全には終わっていない。
彼は立ち止まる事を自ら拒絶した。復讐者は、彼は進み続ける。
大切な"あの人"の無念の為に、
奪われた者の悲哀の故に。




