表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dea occisio ーFlamma florumー  作者: つつみ
HORTUS MUSICUS et deprimentes(過激と憂鬱)
125/125

EXTRA-EPⅦ『Post Samhain』

本編側かなり久し振りの投稿に……

ーーリプレサリアの秘密基地




「今年はあんまり楽しめなかったね」

「ねー」

秘密基地に集った子供達が口々に言う「ハロウィン」の日の事。

拠点であるリプレサリアでペールアが突如現れ、ユイルがレミエを庇って命を落としてしまった、あの惨事。

事が去って久しく、リプレサリアに何らかの襲撃があったという事は無かった。


然し、リプレサリアに現れた世界の脅威へ対する警戒からか細やかな催し事を楽しむ余裕は無くなり、脅威に抗う中ながら子供達の為に催す予定であった万霊節(ハロウィン)は開催を見送る次第となってしまった。






「お菓子もらえなかったのやだーっっ」

「レミエお姉ちゃんとサフィーお姉ちゃんがいないー」

秘密基地の子供達は火が点いた様にワッと不平不満を漏らし始めた。お菓子が貰えなかった、遊んでくれなかった、おっちゃんに怒られた…等と。

「ああー、もう。キャラメルをあげるからお食べ」

騒ぎ立てる子供達の叫び声に辟易したツブ族の一人が、ポケットの中からキャラメルの入った包み紙を幾つか取り出し、子供達に渡した。



「わあ…おいしい!!」

「うめーっ!これもっと無いの!!?」

「ないよー、こんな事になるっておもわなかったもん」

ツブ族の言葉に不満そうに眉間に皺を寄せて文句を言う少年達に対し、甘くて美味しい生キャラメルを嬉しそうに頬張る少女達。幾人かは少年達の様にせびっていたが、其の内の一人が、急に俯いてしまった。





「…うっ……え………っ……」

俯いた少女は嗚咽を漏らしながらくしゃりと包み紙を握り締め、小さな身体を震わせる。

其の足下に散らばる煉瓦(レンガ)に、ぽた、ぽた、と涙の染みが広がった。


「…………たいよぅ」

振り絞って出したであろう言葉が、其の場に居る者達を引き付ける。


「………かえりたいよぅ……おうち…かえりたい……………」

















「…………」

あ…と少女の嗚咽に混じる本当の言葉が、皆の心を揺さぶった。

「……おれも、家にかえりたい」

「ぼくも…」

少年のうち或る者は「父ちゃん達とフィリゼンにある家に帰りたい」と言い、また或る者は「自分と母親を逃してリナテレシアに留まった医者の父親に会いたい」と言った。

「……あたしも…エフィサがめがみのせいで無くなって…受け入れてもらえた場所もいっぱい燃えて…もう、ひなん?生活なんかこりごり」

少女の中で一番ませていた者がこれ迄の艱難辛苦への不満と差し込んだ嫌気を吐き出す。

「……………………」

皆の郷愁、そして寂しさを聞いていた一人の少女は、小さな声を震わせながらゆっくりと押し殺していた本当の気持ちを吐露する。



「わ…わたし………わたしのお姉ちゃん…お姉ちゃんが、わるい女神さまのしんじゃ?っていうのになっちゃったの……」

「!!!!!!!!」

突然の暴露に驚く一同を見て僅かに怯えたものの、続きを話してゆく。




「女神さまともえるお花をしんこー?する……こわい人たちの中に、お姉ちゃんがいるの…………でいんそぴあさまとそふぃあさまがいなくなって、お姉ちゃんはおかしくなっちゃったの…「この方こそすくってくれる!」って言って………お姉ちゃん、わたしを置いていなくなっちゃった。黒いお兄ちゃんたちにお姉ちゃんの事話したら「かならず見つけてあげる」って言ってくれて…………でも、はやくお姉ちゃんに会いたいよぅ…ひっく…」

少女は一通り話すと抑えていた寂しさからか、堰を切った様に泣きじゃくった。

「おとうさーん…」

「おじいちゃんとおばあちゃんに会いたいよぉ」

「うわああああああああん」

釣られて次々と泣き始め、収集付かなくなった様子を心底不服に思いながらも、子供達の不憫さに場に居るツブ族は居た堪れない気持ちになる。



「そっか。そうだよねえ。みんな、おうち、帰りたいよね」

少女の傍に居るツブ族が、泣きじゃくる少女の頭を小さな手で優しく撫でた。

「みんな、我慢してて、とってもえらーい。おうち、帰りたいよね。はなればなれの家族にも、あいたいよね」

そう語るツブ族の後ろで、他のツブ族が何かを合わせているのか数人が拠点の方へ走っていった。









「ね、もういっかい、あそぼう。ハロウィンの次は、サウィンってお祭りがあるの、しってるよね」

「……サウィン」

ーー万聖節(サウィン)。万霊節の後である11月1日に行われる催事。妖精や精霊の末裔と称されるツブ族にとって大切な行事であり、当日は何とか無理を利かせて開催をお願いした。

お陰で催しは無事に完遂したがーー些かハロウィンより質素な所為で子供達にとってはやや味気が無かった様だった。

「でも………」

「仕方ないのよ、ハロウィンみたいにはではでじゃ無いけど、ハロウィン、終わっちゃったからねえ、サウィンももう終わっちゃったけど、いまの世の中がすっごくとくべつだから、もう一度サウィンするの位なら、かみさま、きっと、許してくれるとおもう」

「かぼちゃの、美味しいスープ、いっぱいつくるよー」

「りぷれさりあの皆と、ちょっとだけ賑やかなサウィンにして、もういっかい、やろう」

「!!いいの…!?」

"ちょっとだけ賑やか"という言葉やかぼちゃのスープに惹かれたのか、子供達は少しずつ泣き止んでいき、そして目を輝かせている。

「おやつ、持ってきた」

「おかえりー」

たんじゅんだなあ、と呆れながらも拠点から持ち逃げしてきたであろう沢山のお菓子を子供達に配る。


「そのおやつを食べて、元気が出たら、もっかいやるサウィンの支度、しようね」

「…うん!!」

其の遣り取りを最後に、数体のツブ族と子供達が秘密基地から拠点の方へ駆け出していった。



彼等は願いながら待ち続ける。復讐者達が炎に燃え上がる世界を元の姿に取り戻し、再会の糸を編みながら帰還してくる事を。

【結構どうでもいい余談】

久し振りの投稿がエクストラになるとは…


かなり前にハロウィンの話を一応書いたので今年になってしまいましたがサウィンの方にしようということになりまして、本当はサウィンの日(11月1日)にそれらしい話を出せればと思ったものの忙殺されて間に合わなかったのでサウィンの後日談へ急遽変更、

…のはずがまだまだ多忙な状況なので予約投稿も間に合わず、サウィンが終わった深夜頃に改めて手直し→中々予約投稿する余裕が無かったり予約投稿の設定をうっかり忘れてしまい本日投稿に至る


…という余談でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ