『Vae』
アムルアの灰が風に舞った頃、クックッと嗤いながらペールアはゆらりと立ち上がり、フランベルジュの切っ先を一行へ向けた。
「くくっ…んふっ……はっ、あは!!無様ですネえェェ!!!虫ケラの分際でワタしに挑んデ、ミットも無く死んジゃうンでスカら!!!!!」
くすくす…キャハハハ……ゲタゲタ!!ペールアは面白くて堪らないのか、アムルアの最期を思い出しては何度も下品な獣の様に嗤う。
「復讐者ァア~くっフうフフフフフふフ府2婦ふふウフウフウフ、仲良ク虫ケラゴミクズの皆さンを連れテファイヤーダイブでも死に来タんデスかぁぁぁぁぁ~??????????」
唾液を過分に滴らせて、慣れた動作の様に剣に舌なめずりをした。
「仲間だったじゃないか、シーフォーンが居た時は……」
復讐者の咎めの言葉に、ぐあっと大きく目を見開く。
「ナカマ?なかま仲間ナかマ527ナカマァッ!!!!!????ワタしに剣を向ケた餡な奴ガァっ!!?」
狂気の演者の様に彼女は振る舞う。
「ソんナ筈はナイ!!有り得ナい!!!だっテ私の理想ヲはバ無ヨウな事をしたジャナイでス化ァッ!!!!!」
ぐりんぐりんと全身を激しく動かして、炎の様に揺らめく赤い髪を振り乱している。
ーースッ、と突如其の動きを止めて、暗い眼差しをゆっくりと向けながら人形の様に動きを止めた。
「……今の私にとっては愛おしいシフォさん…尊き大いなる女神シーフォーンを此の世に再び蘇らせる事。クロさんであっても邪魔立てをする資格も権利もありません」
其の手はゆっくりと燃え盛るフランベルジュに添う。
「ですが。其の悲願ももうじき叶う。サクモさんが世界中から彼女の灰を集めてくれたから。後はサクモさんが此処に来るのを待つのみとなりました。ですが………」
薄っすら笑うペールアが持つフランベルジュの炎がゴウっと勢いを増した。
ペールアの表情に、強い怒りと憎しみが露わになる。
「ーーだが今お前が私の望みを邪魔するんだァッ!!消えろ復讐者ァァァ!!!!!!!」
死ね、邪魔をするな、ペールアは獣の様に叫び声を上げた後、真っ先に復讐者の喉元を狙った。
「ガアアアアッ!!死ねえええええええ!!!!!!!!!」
ペールアが切っ先を復讐者の喉元へ突き付け、其の儘刺し貫こうとする。
「!!」
復讐者は彼女が飛び込んで来るのに合わせて後ろへ飛んだ。ペールアは力強く蹴り出し更に復讐者を追い込む。
「死ね、死ね、死ねシねシネしね死ねシネシネシネぇっ!!!!!」
ヒュンヒュンと剣が空気を切る。復讐者は既の所で何とか避け切った。
「散開!!敵には近付くな!!!」
エインが復讐者に代わって一行に号令を出す。彼の言葉に合わせて一行は散開し武器を構えながらペールアの動きを注視する。
アムルアの死を悼む暇も無い。
目の前の恐ろしい敵を打ち倒さなければ。
ーー彼女が復讐者に集中している隙を見て、エインとレミエ、サフィーが動く。
「まさか此処で有効手段を使う事になるとは…」
「この力なら…」
エインが頑丈な矢筒に仕舞っていた冷気を出している矢を取り出し、戦巫女となったレミエが無から水球と氷塊を作り出す。
「私も…やってやります…!!」サフィーも星都の硝子の短剣を取り出して小さく呪文を唱える。彼女もレミエ同様に水球を作り出し……
『放て!!!!!!!!』
三人の声に合わせ放たれた水球と氷塊、そして氷の矢。
ペールアが咄嗟に障壁を張ったが、サフィーの水球とレミエの水球がペールアの障壁を弱め、更に氷塊が障壁を崩し、エインの氷矢が其の背中を射抜いた。
「グッ」
ペールアは一瞬身体を揺さぶらせた。其の際にフランベルジュの切っ先は復讐者の髪の一部を焼き切る。
ぱらり、と長い前髪が落ちて、青色に変わった彼の眼が晒された。
「アア……なんてなんテ、許しガたいのデシょウ」
ペールアは復讐者の青い瞳に、ほんの一瞬だけ望んだ存在を見たが、同時に彼女と同じ青色の彼の瞳に強い憎しみを抱いた。
「青い瞳!!シーフォーンさんダケに許された色なノニ!!!!!!!」
ユルセナイユルセナイ!!!と彼の其の目をえぐり取ろうとする。
「グッ!!?」
エインの氷矢がまたペールアの背に刺さった。
「させないですよ、ペールア!」
エインはもう数発分の矢を既に番えている。
「………ああ、貴方も青い瞳なんですね。…~揃いも揃って小賢しいドブネズミ共がァッ!!!!!」
激昂。ペールアの怒りは一瞬にしてエイン達の方へ移り、邪魔な虫を払う様に熱波を放った。
「うわあぁっ!!」
オディムやエムオル達もペールアの放った熱波を受け、容易く吹き飛ばされる。
落ちる事は無かったものの、其々が地に伏せたり塔の壁に激突する。
「~あはっはははははははははっ!!情けなぁい、みぃんな吹き飛ばされちゃいましたねぇえ?」
ケタケタと嘲笑う様に彼女は嗤った。武器を構える復讐者を空かさず蹴り飛ばして彼を地に伏せさせる。
「…んフッ、貴方もあっさり死んじゃうんテスターねぇ。その両目はえぐり取ってあげますよ。愛すべき私達のシーフォーンさんへ飾りとして捧げてあげましょう!!」
栄誉ある事です、と切っ先を復讐者の目に少しずつ近付け、先触れが瞳に当たる寸前、場違いな声が聞こえてきた。
「ペールアさああん!!……っは、遅く、なって、ごめんなさいっ!!!!」
ーー「特使」として女神に選ばれた、サクモが立っていた。




