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Dea occisio ーFlamma florumー  作者: つつみ
HORTUS MUSICUS et deprimentes(過激と憂鬱)
116/125

『Aqua hauriuntur per pulvis』

「はあ…はあ……!!」

木々の間を、草原を、()()()()が駆け抜ける。

(急がなくてはいけない……!!)駆け抜ける()()は焦燥に彩られていたーー





「与えられた猶予はーーもう、無い…」

小さな身体で、でも懸命に駆け続ける。肩で息をする程までになっても、進み続けるのを止めなかった。


どうしてもっと早く思い出せなかったのだろう、と其の小人は苦い顔を浮かべる。でも、もう振り返らない。と固く誓った。

小さな手足は、先へ進む事を決して諦めたりしない。



小人は駆け抜けながら、()()()()()を思い出していたーー

















































『……ロル。其方の意思を尊重したい。けれど其方にしか出来ない事なんだ』

尽き果てぬ地獄の様な場所で、"誰か"が語り掛けてくる。


『僕は敵対していた立場としてでは無くーーそう。今回は、()()()()()()()()()()ーー会いに来た』

()()の声は暗さを宿してはいたものの、此の世界に似つかわしくない程穏やかだった。



「………。そうまでして、私に会いに来たのですか」

『そうだよ。彼女達の中では君が一番意思をはっきりとさせていた。承認欲求に塗れ顕示欲に溺れ、そして己の為に他者を厭わず殺してきた彼女達の中では、ね』

青年は半ば吐き捨てた振る舞いで話した。



『……。"()()()"は僕の話を聞いてくれて有り難う。だけど哀しかったよ。結局君は彼女達を尊重し僕の首を斬り落とす選択をしたのだもの』


「…っ……それは…」

『でも、君は死んでいる。其れはきっと僕もだ。でもまだ柵は残されている。如何かな。君なら、少しは火の粉を払えるんじゃないかな』

青年は哀しみを含む声から一転、考えを吐露する。

「火の粉…?」

『そう。そうだよ。()()は君と同じだったじゃないか。君ならばーー』









青年が己の言葉に合わせて、手を翳すと地獄に落ちた者の枷が全て外された。

そして瞬時に地獄は静かになる。耳が痛くなる位に。





「……っ!?」

『君に頼んだよ。何度も頼まれちゃ嫌気位差してるかもしれないけどもね。だが君にしか出来ない。ペールアを止めておくれ』

青年は指先を女へ向け、そして其の輝きから女の姿を()()()()()









『ーーアムルア。君は今から■■■ではないが、思い出せば、■■■だ』

青年の其の言葉を最後に、■■■ーーアムルアの意識は遠退いていったーー


















































ーー其れからアムルアはツブ族の集落の付近で見付かり、拾われ、そして受け入れられた。アムルアは何もかもを忘れていたが、先のペールアの襲来で全てを一気に思い出した。


書き置きも、言葉も、何一つ残さなかったけれど……



アムルアの中で、エムオルや皆の事が僅かな心残りとして燻った。









「だけど、もう戻れないのです」



其の言葉の後、アムルア(■■■)が見詰めた先に、白く巨大な塔が聳え立っていた。

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