EXTRA-EPⅥ『A meridie caelesti pila resurget』
世界から足跡が静かに消え去り、ただ白雪だけが夜闇に混ざり、空は落ちて、夜は生まれる。
闇夜に溶けた、ニイスは溜息を吐いた。
復讐者達は如何しているのかな、と彼は空の小さな星を見る。
正直、星はーー
嫌いでは無かったけれど、少女の存在を思い出させてしまうもので、あまりいい気分になれなくなった。
例え"星"という言葉にすら、彼女を想起してしまう。
天使、オッドアイ、宇宙、ピスティスソフィア。
特に名前については余計悪感情ばかりが付き纏う事になってしまった。少女さえ知らなければ、或いは存在などしなければ其の名前に対する悪感情めいた複雑さは抱かずに済んだ筈だったものを。
少女に苦しめられ、其の生みの親にも苦しめられ、其の取り巻いている女達にも傷付けられ、そしてーー彼は思い出したくもない己の結末についても想起する。嗚呼嫌だ、何て悍ましい。そんな事すら考えて、溜息を深く深く吐き出した。
ーー夜の空に溶け込む様に浮遊していた彼の姿を暴かんと、夜明けの静かな目映さが顔を出す。
……ニイス、彼にとって黎明は死の色だった。
此の脳裏に過る映像が己のものであると知っているから。目映い明け方の空を見詰めながら、青白い大地、凍り付いた黒い川、赤い橋。
夜明けの淡い青紫と同じ瞳が死に染まった日の事を。
黒い川は割れ、そして白くなる雪に広がる赤い血の海を。
昇りゆく太陽の輝き、やがて白日の下に晒される己の無惨な姿を。
世界がまた一つ進んだ事を悟りながら、ニイスは落下してゆく。既に実体を持たない為、落ちた所で痛みは無い。
どうしようもなかったのだ。
明るくなってゆくにつれ明らかにされてゆく絶望に対する答えが。
只、無限の哀しみと果てし無い怨恨と、輝きに染まる白い絶望を受け止める器が無かった、無かったのだから。
あけましておめでとうございます!!
前年度?とは違い暗い内容ですが一応新年あけおめ話です。




