EXTRA-EPⅡ『Selenium』
ーー変わり目、というのは色々ある。
例えば、月日、年、号、世界、歴史、色々とだ。
人の一生ですら変わり目というものは存在する。
例えば彼等の様に。
「エイン、」復讐者が永世不可侵領域の光景を見詰めながらエインに語り掛ける。
「何です?」エインは静かに朝日を眺めながら、相方の言葉に耳を傾けた。
「思えばたったの千年でも色々あったな」
朝日を見詰め、柔らかな風に曝されながら彼は言う。
「■が亡くなって、年号が変わって、そしてあの馬鹿な女神が千年掛けて自分達の理想と支配を叶えて」
「■の死を哀しむ余裕すら無くて、新しくなった年号の事も周りみたいに浮かれながら喜んでいる暇も無くて、毎日苦しい気持ちの儘必死になって、女神の奴等が滅茶苦茶にし始めた後生き抜く事に必死になって、」
「大変でしたね、あの頃は……」復讐者の言葉を一通り聞いたエインは、共に回想しそして返した。
「私達の国では平成から令和に変わって、色々ありました。増税が、虐待が、就職が、災害がーー多くの事がそう間も無くしてやって来ました」
エインは静かに目を伏せて、淡々と語る。
「でも令和の後から、大きな災害が発生して、そして重なる様に女神が世界に宣戦布告」
「んでもって奴等は国連に喧嘩売って圧倒的な力の差を見せ付けて服従させた。"私達の言う通りにして下さい"って言いながら…」
そして二人は同じタイミングで大きな溜息を吐いた。
「…思えば、千年、沢山ありましたね」
溜息の後一番に開口したのはエインだった。
「そうだな〜本当に、沢山あった」昇る朝日を眺めながら復讐者も開口する。
彼の外套が風に巻かれ、翻る。
「私達の戦いは完全には終わっていない。ニイスも探さないといけない」
「しかも丁度変わり目ですね、私達も」
二人は朝日に背を向けた。
「私達が安寧を得るのはまだ早い」
そして二人は、其の儘居るべき場所へと戻って行った。




