『Quod Memoria ーⅡー』
二イスは映写機が見せる「彼女」の映像を見続ける。
英気を養ったか何か、まるで一騎当千の兵の如く彼女の手練手管を尽くされ、恐ろしい早さで『少女』は世界に流布されてゆく。
VR技術やAR技術を利用したアイドル活動、グッズ、同人ーー其れ等は極在り来りで親しまれた手法ながら、故にあっさりと浸透し生みの親であるデインソピアは瞬く間にアイドルを生み出した神として崇められてゆく。
生みの親である本人自身も、まるで『少女』の顕現かの様に扱われ、愛された。
此れが「彼女」や仲間達、そして此のデインソピア本人自身の望み、求めていたものだったのかもしれない。『少女』と云う存在を全ての人間が、彼女の紡いだ神話の様な物語が、全ての人間の心をうち響かせ、涙する。やがて美しい神話として崇められ、何時しか救済の為の福音として聖なる宗教になるべきだったのだ、とーー
「彼女」達は、『少女』という『偶像』を、正しく此の世界の救済者として置きたかったのだ。
一通りの映像の中に、其れ等が全て見えてくる。
ーー何と言う傲慢、我儘、幼稚な願いの事よ。其の為だけに自由を望んだ者は死に、抵抗した者は殉教した。
たった一人の少女の為だけに、四人の女神は多くの犠牲を作り出した。更に残ったものを少女に溺れる様洗脳までして。
上手く、上手く。
彼女達は『少女』を『救世主』へすり替える事に成功してしまった。茨の冠を被せられ磔にされた者や然るべき道を歩み続け目覚めた者では無く、煌星より降り注いだ天使の姿をした少女に。
故に旧い神々は彼女達によって排斥され、教えは破られ、敬うべき座は破壊の限りを尽くされた。女神達は少女以外の存在を敬うモノは全て要らない、と気狂いめいて叫ぶ。
深遠なる宇宙と太陽の熱を秘めた髪、
時によって変わる青色、金色の瞳、
彩雲のブラウス、星空のスカート、赤い宝石をあしらえた赤いリボン、
メルヒェンでファンタジックな服装に身を包み硝子の剣という理論を斬り伏せた御伽の武器を携えて。
繊細な手指に華奢な身体の天使の少女が降臨する。
其の少女、知恵を意味し愛されるべき名である。
ーーシーフォーンが彼女を『ピスティス・ソフィア』と呼んで狂った様に愛した。




