3.刹那の企みには協力者がいる。
久しぶりの談笑は疲れるもので口角が上がりっぱなしで筋肉が痛くなっていくのが分かった。風雅との会話は尽きる事なく部室に着いても少しだけ話していた。
「おっと、談笑しすぎちゃったなwいるか分からないけど入ってみようぜ」
部室の明かりは消えていてとても中に人がいるようには見えなかった。声も聞こえなければ音もしない。
けれど、もしいたとしたら突然ノックもせずに入るのは失礼極まりないので一応ノックしてドアを開ける。
「あ、悠馬くんと風雅く〜ん!どうしたの?」
中には2人の女子生徒がいた。どちらも学園で知る人はいないほどの学園のアイドルだ。
陰キャな俺にとって名前を覚えられているのは普通の事ではなく奇跡に近く名前を呼ばれたことに驚いた。
「どんな部活なのかと思って。」
「よし!じゃあ説明してあげよう!その前にまずは
自己紹介を軽くするね。私の名前は刹那朱音。そしてあそこに座っているのが綾瀬雪那。よろしくね!」
自己紹介を終えるや否やすぐさま教室の端に移動して何かを準備しているように見えた。数秒後刹那は転がさないと持ってこれない大きさのホワイトボードを持ってきた。
「まぁまぁ、私の説明を聞いてね!」
俺と風雅は近くにあった椅子に座り謎の講義を聞く用意をする。ふと、雪那の方を見ると溜息をついて読んでいた本を途中でやめてホワイトボードの方を向いて待機していた。
「因みに、悠馬くんは恋したことある?」
唐突な質問に驚いて「え?…」と言ってしまった。
まぁ、刹那は俺の少年期を知らないわけだし嘘ついてもバレないよなと思い俺は虚偽の答えを言う。
「いや、まだないけど…」
この言葉を聞いた風雅が「嘘つけw」という目で笑いながら俺を見て来た。反応すると面倒なことになりかねないので風雅を無視して前を向く。
「簡潔に話すと…みんな恋しよう!っていう部活です分かった?」
ホワイトボードなんで持って来た?いらなくね?と思い俺は周りにバレない程度にクスっと笑う。部活名で大体どういった部活なのか予想はしていたが的中していたのも笑えてきた原因の1つだろう。
「まぁ、説明は簡潔に済ませて早速本題だけどどうかな?恋人部入らない?」
俺は見学に来ただけなので風雅の方を見る。風雅は
「どうしようかな〜」と言って結構本気で迷っていたのが分かった。風雅がどうしようと俺は入らないので丁重に断ろうとすると風雅に話しかけられた。
「どうする?入る?」
風雅は俺に全ての判断を委ねようとしているのか本来自分で決めるべき事を聞いてきた。俺はなんて言えばいいのか分からず少し黙った後答えを出した。
「それは、風雅の勝手だから。」
「じゃあさ、悠馬はどうするの?入部するの?」
この場所で入らないとは流石に言えないので遠回しに入らないよと伝えようとする。
「もし、仮に入るなら1人はあり得ない。としか言いようがないんだけど」
俺は回答を濁らせて曖昧な言葉で風雅に伝える。
すると何故か風雅はニヤッと笑い何かを企んでいるかのような笑みで刹那と俺を見た。その企みを刹那も知っているのか風雅と刹那は何故か2人で笑っていた。
「じゃあ、俺入るから一緒に入ろうぜ!」
濁らせて答えられない誘いに俺は戸惑った。極力入部したくはなかったが結局どっかしらには入部しなくてはならないためそれならこの謎な部活に入った方が良いのかと思い割と本気で考えた。考えて考えた結果
1つの答えを出した。
「分かったよ、入ればいいんだろ?」
その言葉を言った瞬間風雅が喜ぶかと思ったが何故かその数十倍刹那が喜んでいた。無邪気な子供のように喜んでいたため何故か気になり質問した。
「なんでそんなに喜んでんだ?」
「だってやっと悠馬くんに近づけるんだもん!」
「…アァァァァァァァァァァ」
最初の方は俺にも聞こえていたが何故か途中から風雅が「アァァ】と叫んだため肝心の理由は聞けなかったのでもう一度聞こうとしたら刹那は顔を真っ赤にして黙り込んでいたしそこまで興味がなかったので聞くのをやめた。
***
その後俺と風雅は偶然刹那が持っていた入部届けに記入をして正式に入部することが決まった。
風雅は書くや否や新幹線のような速度で
「予定思い出したから帰るわー」と言って素早く帰っていった。この女子しかいない空間にも慣れてきて動揺もしなくなったし居心地が悪いとも思わなくなった。今日はあと少しで終わるらしく
「明日から部活始まるわけだし早く帰っていいよ!」
と言っていたので身支度を済ませて部室を出ようとすると刹那が俺に話しかけてきたので後ろを振り向く。
「じゃあね!これからよろしくね!悠馬くん!」
「え…あ…お…おう………」
そして俺は下駄箱に向かう。
***
はぁ、私はゆっくりと息を吐く。ずっと待ち望んでいたことが現実になったのだ嬉しくないはずがない。
「よし、風雅くん!出てきて良いよ!」
「お、帰ったか?アイツwじゃあ俺の入部届けは破棄しといてくれよ〜」
「うん!協力してくれてありがとう!」
雪那が「何についての話?」と聞いてきたので私は少しだけ隠して答える。
「何でもないよ笑」