21.恋は時間を埋められる。【前編】
「さて、明日は遠足なわけだけど正直、自由時間が明日の予定の大半を占めているので今から班ごとに別れて予定を決めてください。」
そう言って風雅は自分の班に戻る。班で話すことなんて何もないので黙ることにした。
「悠馬、話に参加しようぜ!」
俺は目立たないように黙って寝たふりを決め込んでいると、起きている事に気づいている風雅は俺に話しかけてきた。
「いや、いいよ、寝たいんだよ俺は」
寝たくもないけど俺がここで会話に参加して空気が可笑しくなるのは確信しているので絶対に参加しないことにする。
「おい、悠馬耳を貸せ」
人前では言えないことを伝えたいらしく風雅は俺の耳元に近づいてコショコショと話し始めた。
「この班って周りには羨ましがられてるけど、意外と地獄な班って事知ってる?」
「いや、俺はどこにいても地獄だからなぁ知らないけど」
「まぁ、説明するとこの班が羨ましがられてる理由は刹那の存在なわけだ。」
刹那の他にも綾瀬と風雅がいるからこんな注目を浴びる班になっているわけだけど。
「まぁ、一概にそうとは言えないけど」
「まぁまぁ、そんでだ、刹那の事が好きな川崎。だけど刹那は他に好きな奴がいる。」
「そして、刹那の好きな人を俺は知っている。なぁ、俺目線この班が地獄って分からないか?」
「へぇ、刹那に好きな人っているんだな、聞いたことはあるけど誰かまでは知らないなぁ、」
風雅は俺から顔を離して「え?何言ってんのお前」みたいな顔をして驚く。何か変なこと言ったか?
「もしかして、気づいてないのか?刹那の好きな奴って………」
「気づいてるよ、君の後ろから見える邪悪なオーラがハッキリと視覚化されているよ。」
俺の言葉を不思議に思った風雅は後ろを向く。後ろを向くとそこには怒りが沸騰しそうな刹那がいた。
「ねぇ、ちょっと放課後話があるんだけどぉ。」
風雅は明後日辺りを見てsosを発信する。けれど、この時に限って誰も風雅と刹那の事を見ていなかった。
「あ、はい」
***
「刹那ごめんな、危うくというか口にしてたわ」
放課後になって誰も教室に居なくなったタイミングで私は風雅くんに近付いて説教する。
「全くだよ!何してんのって思って焦ったんだから!
しかも悠馬くんが鈍感なだけで私が悠馬くんの事が好きってバレてもおかしくなかったからね!」
「まぁ、あいつは一回の失恋で心に壁を作ってるからな、そう簡単には気付かないだろあの鈍感主人公の場合は。」
「でも、俺は刹那の恋応援してるから。」
廊下では部活のある生徒がわちゃわちゃ騒ぎあってる中私は風雅君に前から疑問に思っていたことを質問する事にした。
「なんで、風雅君は応援してくれるの?メリットなくない?」
「応援は俺の使命みたいなもんだからな」
「そんな事より、刹那の恋には敵がいるからな。注意しろよ!」
「え、あぁ話戻すの?笑。敵って唯ちゃんのこと?」
風雅君は察する能力に長けているから唯ちゃんの悠馬くんに対する対応で唯ちゃんが悠馬くんについてどう思っているのか分かっていると思う。だから、私の恋もバレたし唯ちゃんの恋もバレた。
「流石に分かるよな、唯ちゃんは強敵だぞ?学年一のモテ男や学校内でNo. 1のイケメンにも告白されてそれを全て即答で断ったからな。」
「唯ちゃんってやっぱりモテるんだね。」
「刹那も大概じゃねぇけどな」
唯ちゃんについて少しずつ知っていく。私も悠馬くんが好きになってから告白は即お断りしてるけど唯ちゃんは風雅君によると悠馬くんの事が中一の時から好きだったらしい。それって2年もの間ずっと内緒にして告白も2年間ずっと即答で断ってきたという事になる。私は唯ちゃんがこんなに凄い事を知らなかった。
「でも、何で唯ちゃんには応援しないの?」
「応援はしている、実際に中2の時に悠馬の事好きだろ?って質問したからな。でもその時唯ちゃんは明らかバレバレな嘘だったけど否定してたからな。」
「話変わるけど悠馬くんとデートする事になりました。どんな服装が悠馬くん好き?」
「多分、刹那の事だから強引に誘ったんだろ?まぁ、それでも進歩してるからいいけど笑あいつなら露出度が高くなければなんでもいいと思うぞ?」
「分かったぁ〜!色々と考えてみるよ」
「最後に、あいつは口下手だから服装とか褒められないからな。分かってるだろうけど。」
「うん、分かってるよ笑」
話すこともなくなったので私は帰り支度を済ませて学校を出た。
***
私は家に帰って自室に入って考え事をする為にベッドに寝っ転がる。
「私は君の事が好きだよ、この気持ちは誰にも負けない!そう思ってた。だけど唯ちゃんには敵わないよ笑
悠馬くんは【恋は時間を埋めてくれる】と思う?」
悠馬くんと一度もやり取りをしていないトーク画面を開いて私の伝えたい事を書く。でも、送信する勇気がなくて数秒考えてから削除した。




