夢の中の女性は誰?
「何描いてるの? 女の人?」
私が絵を描いてると、えっちゃんが寄って来て覗き込んだ。
恵 悦子ちゃんは私と同級生の美術部員(入部3ヶ月目)。
「駄目、見ちゃ。」と私。
「良いじゃん。て言うか、何で美術部でもないのに、ここで絵描いてるの?
入部する?」とえっちゃん。
「祥子ちゃん巧いんだから、美術部入んなよ。」と部長。
前野部長は三年生で、一学期で引退。
引退すると前野前部長とか超ややこしい話になる。
「色鉛筆だから描けるの。油絵とか水彩とか無理だし。」と私。
私はおねちゃんが買っただけで放ってた100色色鉛筆セット使ってる。
「何で美術部に来てるの?」とえっちゃん。
「描き方分からないから教えてもらおうと思って。」
「いやいや、ちゃんと描けてるでしょ。で、この人何?」とえっちゃん。
「それがね、最近毎晩夢に出てくるの。で、毎回怒られてるの。」
「怒られるって何?」
「何か、もっと成長しろとか、このままだと駄目だとか?」
「この人が?何か心当たりある?」。
「全然。」
「あれだ。この前の中間試験だって試験勉強全然してなくても山勘だけで高順位でしょ。
あれ、やっぱり駄目なんじゃないかなって思うよ。」
「それは……そうかも。もっと勉強しなきゃ、って違う。
なんか幸運独り占めしてたら駄目なんだって。」
「なんか良いこと言うじゃん、この人。あんたやっぱり運良すぎだわ。」
「そう?」
「そうに決まってるでしょ。」
「そんな事言われても、別に運を左右できるわけじゃないし。」
「いやいや。だから私たちにもおすそ分けすれば良いんだよ。
早速今日は祥子ちゃんのおごりでケーキバイキングに行きましょう。」
「なんで?」
「この前も宝くじ当たったって言ってなかったっけ?」
「えーだってたったの3000円だよ。」
「毎回一枚だけ買って3000円当たるってどんだけよ。
どう考えてもおかしいでしょ。」
「マジか。それは幾らなんでもおかしいと思うよ。」と部長。
「そんな事は良いからそれより、この絵どう思う?」と私。
「いや良くないだろう。」と部長。
「そうそう。」とえっちゃん。
「良いの。それでこの絵はどう思う?」と私。
「普通に巧いんじゃない。やっぱり美術部に入りなさい。」と部長。
「そうじゃなくて、これ誰だと思う?何で私の夢に出てくるの?」と私。
「他人の夢の事なんかわかるわけないでしょ。と言うか、この人手が四本あるよ。」とえっちゃん。
「あー、漫画とかで手足が速く動いたのを手を沢山描いて表現するのってあるじゃん。それ?」と部長。
「違うよ。手が4本あるの。」と私。
「それって人間じゃないじゃん。妖怪とか?」 とえっちゃん。
「でも美人なのよね。」と私。
「それ妖怪かどうかと関係あるの?」とえっちゃん。
「美人の妖怪って聞いたことある?」と私。
「リアルで妖怪の話なんて聞いたこと無い。」とえっちゃん。
「だよね。」と私。
「と言うか妖怪というより観音様とかじゃない。ほら三十三間堂の。」と部長。
「千手観音ってもっと手が一杯あるし。」と私。
「でもなんか服装がインドっぽいんだよね。」と部長。
「そうそう。やっぱりベリーダンサーとかじゃない?」とえっちゃん。
「なんか違う。」と私。
ガラガラと扉を開ける音がして、同級生の最上 霧子ちゃんが入ってきた。
「祥子ちゃん、今日一緒に買い物に行くって約束してたのに、全然帰ってこないから私困っちゃう。」と霧子ちゃん。霧子ちゃんはおっとりしてるのよね。
「ごめん、ごめん。絵も描けたし、行こっか。」
「その絵何?インドの神様?」
「え、霧子ちゃん知ってるの?」
「知らないけど、なんかそんな感じした。服装とか色使いとか。なんか手に蓮の花持ってるし。」
「え、これ蓮なの?」
「何であんたが聞いてるの?自分で描いたんでしょ。」とえっちゃん。
「夢で見たまま描いただけだし。」
「大体夢で見たのってそんなに鮮明に覚えてる?」
「明晰夢ってやつ。」と私。
「明晰夢って何?」と霧子ちゃん。
「明晰夢って、夢って分かってる夢の事だよ。」と部長。
「そうなんだ。」と霧子ちゃん。
「結局手がかりなしか。仕方がない。じゃあ、行こっか。」
「うん。」
「部長、色鉛筆置いておいても良いですよね。」
「いいけど、どうせなら入部しない?」
「さよなら。」
その後、霧子ちゃんと二人で、駅前まで自転車で行った。
まずイ○ンに自転車止めて、別館の書店で参考書を買ったよ。
その後駅にあるマクドナルドでコーヒーを飲んだ。
イ○ンの別館
「さっきの絵見せてくれる?」
「これ?」
「この手に持ってるの蓮の花でしょ。うちで売ってる仏具にもよくあるし。」
「霧子ちゃんち、仏具屋さんだっけ。」
「この皺の入った服ってお釈迦様が着てるのと似てるでしょ。」
「そうかな?」
「そうだよ。
それに服の色も手に持ってる花の色と一緒でしょ。
なんか意味あるよね。」
「全然気がつかなかったよ。」
「自分で描いてたのに?」
「自分で描いたかどうか自信が無くなって来たよ。」
「毎晩夢に出るのよね。」
「うん。」
「私思うんだけど、夢の中でその人に聞いてみたらどうかな?」
「え、夢の中で?」
「夢だって分かってるってことはまた来たとか思ってるんじゃないの?」
「まあ、そうかも。」
「じゃあ、起きてるうちに、質問事項を考えておいたら、思い出せるんじゃない?」
「うーん、どうだろ。」
「一方的に叱られるのっていやでしょ。」
「もちろん。」
「じゃあやってみようよ。」
「そうか、そうだね。やってみる。」
その後、霧子ちゃんと別れて、地下鉄前の宝くじ売り場でジャンボ宝くじを一枚買って帰ったよ。
食事が終わって、風呂に入って、パジャマに着替えて、寝る前に質問事項を考えた。
「まず誰か?
幸運を配れってどう言う事?
何故そんな事しなきゃいけないの?
位しか思いつかないよ。」
で、その夜、やっぱり夢の中に出た。
「クラスメイトの言う通りです。ちゃんと勉強しなさい。
それに前から言ってるようにきゃんと幸運を配りなさい。」
本当に絵にそっくりじゃん。私絵うまいかも。
二本の手に持ってるのが蓮の花か。と言うかなんか蓮の花の上に乗ってない?この人。
「ちょっと質問しても良いですか?」
「何です?」
「あんた誰?」
「私はあなたです。」
何言ってるの、この人。
「私は手が四本も無いし、あなたのわけないでしょ。」
「正確に言うと、私の化身の一つがあなたです。」
「意味判らない。」
「私の一部があなたです。」
「じゃあ私の悪いって事はあなたが悪いって事?」
「そうですね。だから私はあなたを良くしないといけません。」
あ、失敗した。逆効果だ。
「あなたが何を考えてるかは全部知ってますよ。私の方が上位意識ですから。」
ばれてるのか。
「そうです。」
「でも、これは私の夢だよね。しかも明晰夢。」
「私の夢でもあるわけです。私の方が上だから逃げられませんよ。」
駄目か。
「どうしてそうあなたは、逃げる事ばかり考えるのです?」
「頑張りたくないし。」
「何故です。」
「幸運を配るって何のことか分からなし。」
「幸運を配るというのは不幸な人を幸福にすると言うと事です。」
「私不幸だし。」
「幸福でしょ。」
「あんたみたいなのにまとわりつかれて不幸だし。」
「私はあなたですよ。自分からは逃げられません。」
「いや、だから違うし。」
「例えば宝くじに必ず当たるのは私の力です。」
「え、それ本当?」
「本当です。でもあなたは私の意識のほんの小さな一部でしかないですから、ほんの小さな力しか使えません。」
「そうなの?」
「ええ。あなたが不幸な人に幸福を配る役割を果たせば、段々あなたの力は大きくなります。」
「つまり?」
「今日買ったジャンボ宝くじは六等しか当たらないでしょう。
でももっと頑張れば五等が当たるようになります。
もっと頑張れば四等が当たるようになります。」
「本当ですか?」
「本当です。」
「そうなんですか。なんか頑張りたくなったよ。」
「私もあなたに合った説明が必要だと分かりましたよ。
頑張ればあなたにも良いことがあります。
だから頑張りましょうね。」
そういう声が響いていつの間にか目が覚めていました。
彼女が私?いや、私が彼女の一部?
正直全然信じられない。
でも、もしジャンボの四等が当たるのなら、頑張っても良いかなと思ったよ。
みんなもそう思うでしょう。
もっともっと頑張っていつか一等が当たると良いな。




