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六章「泣き顔」
爽はバスに揺られながら夏葵の顔を思い浮かべていた。
『怒ったような、泣きそうな顔をしてたな』
今まで見たことの無い夏葵の表情に思わず髪に触れ、そのまま夏葵を置いて一人駆け出してしまった。
『確実に変なヤツだと思われただろうな』
爽は「はぁ」と大きく息を吐く。
『情けない。あの時沈黙に耐え切れなったのは俺の方だ』
『いっそいつもみたいに笑ってくれたら良かったのに』
夏葵は黙ったままで何も言わなかった。
それどころか射抜くような視線をこちらに向けてきたので爽は思わずドキリとしてしまった。
『俺あいつに何かした?』
『やっぱり怒ってた…よな』
爽は考えを巡らせてみたが思い当たる節が全く見当たらなかった。
それにしても…『夏葵の髪…柔らかかったな…』
細くさらさらとした夏葵の髪。
『下手するとクラスの女子よりも綺麗な髪してた…って何考えてんだ俺は』
ハッと我に返ると隣に座る年配の女性が怪訝そうな顔で爽を見つめていた。
爽は「すみませんっ」と謝り、慌ててバスの停車ボタンを押して急いでバスを降りた。
『まさか口に出てた?』爽は思わず口に手を当てた。
その時、遠くで雷の音がした。
『夕立か…』
爽はカバンから折りたたみ傘を取り出す。
『あいつ傘持ってんのかな』
『あいつズボラだからなぁ』
爽は夏葵が心配になり後で夏葵にメールをすることにした。




