6/14
五章「約束」
夏葵は暫く雨に打たれていたせいで風邪を引き、一日中布団の中にいた。
動けるようになったのはその日の翌日のことだった。
その間に爽から何度かメールがきていた。
内容は夏葵のことを気遣うもので夏葵は、
『一応嫌われてはいないんだな』と胸を撫で下ろした。
夏葵はその後、
「今日の午後4時にあの海岸で会えるか」とメッセージを打ち、爽に送信した。
返事はすぐに返ってきた。
送られてきたメッセージは「分かった」だけの相変わらず素っ気ないもので夏葵は思わず苦笑したが、爽からのメールは夏葵の心を少し軽くさせた。
爽からのメールに口元を緩ませていると、夏葵の母である紗花が「何か嬉しい事でもあったの?」と微笑ましげに夏葵を見つめていたため、夏葵は慌てて唇をきつく結び、布団を頭から被った。
『見られてた』
頬が熱くなるのを感じた。
『爽が好きだ』
『性格も声も名前も、あの大きな手も全部』
『自分でも呆れるほど、あいつが大好き』
声に出したい衝動を抑えながら瞼を軽く閉じると、
「病み上がりなんだからちゃんと寝てなさいね」と夏葵を叱る紗花の声がぼんやりと聞こえた。
夏葵は再び瞼を開けようとしたがそのまま眠ってしまった。




